2007年6月21日
#93 田原 耕太郎 リーダーシップメンバー 『ハドルアップを意識してやっている』
◆言葉で伝える
—— リーダーシップメンバーになってオープン戦でもゲームキャプテンを務めたりしていて、去年との違いを自分でも感じますか?
責任ある役職を与えられたことで、若い選手も多いですし、練習中からも声を出すようにしています。今年の自分のテーマと言うとちょっと違うんですけど、"ハドルアップ"を意識してやっているので、練習中や試合中も時間があればみんなで集まってコミュニケーションを取るようにしています。
—— ハドルアップとは?
試合中や練習中に選手間で意思統一をするために、フォワードやバックスなどがユニットごとに集まって、話し合うんです。チームとして共通意識を持つためのコミュニケーションですね。
—— ハドルアップによってチームは去年とは変わってきていますか?
変わってきましたね。選手が集まる機会が増えたと思います。
—— その際に声をかける選手は決まっているんですか?
やはりリーダーシップのメンバーが多いですね。
—— リーダーシップメンバーになって欲しいと言われた時はどんな感じだったんですか?
大悟(山下)から電話があって、「リーダーやってください」って言われて、嬉しい気持ちもありましたし、やりがいのあることですが、正直びっくりしました(笑)。
—— 学生時代にもキャプテンとかバイスキャプテンとかをやっていたんですか?
僕はないですね。早稲田で大悟がキャプテンの時も何もしていなかったです。もっと昔の話で中学校の時までいけばありますけど...。
—— リーダーシップメンバーになったことで、明らかに自分のここが変わったというところはありますか?
やはり「言葉で伝える」ということですね。できる限り感じたことや思ったことを、言葉で出すようにしています。
◆去年と比べて自信がある
—— 去年は試合前のミーティングでも、どんどん発言するような場面は少なかったですね
ハドルアップという言葉がチームに浸透しているおかげで、僕もここまで変われたんだと思います。
—— みんなの前で話すときに気をつけていることはありますか?
試合ごとにチームとしてのテーマがあるので、それについていま何ができているのか、あるいはできていないのかということを、試合中に確認しています。そのときそのときのテーマをしっかり頭に入れてやっています。
—— 今年になってチームが変わったなと思うことは?
去年の春から比べるとすごく違いますね。自信もありますし、慣れたというか...。去年はやっていることに対して自信があまり感じられませんでした。これでいいのかな、これでいいのかなという感じでやっていました。そこがいちばん大きいと思います。
—— 今年は山下選手をはじめとしたリーダーのメンバーを中心に、選手から発する提案もありますね
清宮監督がグイグイ引っ張る感じなので、僕はそんなに意識はしていないですね。一長一短あるんですが、選手が甘えてしまうのは怖いですね。試合になったら監督はいませんし、去年は大悟もいませんでした。(日本選手権の)トヨタ戦はみんなはっきり覚えていると思います。最初に一発ドカーンといかれて、なんかいつもと違うぞ、となったときに、そこでしっかりチェンジできるリーダーシップがとれていませんでした。そういう点でも、選手からもっともっと監督に要求することも大事だと思います。
—— 昨シーズン、東芝に2回負けましたが、足りなかったものは何だと思いますか?
結局、力がなかったんだと思います。普通に見ていて運だよという人もいるかもしれませんが、運だとしても、それでも負けない東芝って何なんだと思うと、やはり力ですね。どちらの試合も1点差、2点差の試合でしたが、僕たちが目指すのはそんなところではなくて、突き抜けるというか、もっと圧倒的な力の差を見せて勝つくらいじゃないと、チャンピオンチームは倒せないんだなと思いました。
◆かっこ良く勝つ
—— 今年は去年をベースにスタートしていますが、どの部分を加えていけばいいと思いますか?
...いろいろありますね(笑)。去年は勢いはあったと思うんですが、それでも負けてしまったので、今年は2年目ですし、向こうもいろいろと対策を練ってきますし、漠然としてしまいますけど、本当の力、圧勝できる力がないとダメだなと思います。
—— 東芝は監督とキャプテンが変わって、バツベイ(ルアタンギ・サムライ/東芝→近鉄)もいなくなり体制が変わりました
そういう部分はこちらにはあまり関係ないですね。東芝は東芝。また違う力が発生するかもしれないですし、いまの時点でプラスかマイナスかはわかりません。やはり問題は相手ではなく自分たちで、いまはジャパン(日本代表)の選手がいなくてバックスはとくにギリギリの中でやっていますが、ジャパンの選手はジャパンで経験を積んでますし、残った僕らはいま何ができるか、そういうことを考えてやっていかないといけないですね。
—— 個人的な今年の目標は?
とにかく「スタートで出る」ということと「ゲームメイク」ですね。
—— 去年は途中から出ることが多く、「流れを変えたい」というコメントをよく聞きました
その試合、自分のプレーだけを見るとまぁまぁできたなという部分もあるんですが、試合がある程度決まった中で出ていることが多かったんで、まだ試合がどうなるかわからないときに出ても、できるかどうかですね。
—— スキルの部分ではどうですか?
コミュニケーションのところですね。ディフェンスの指示だったり、ポジショニングだったり。
—— それは去年足りなかった部分ですか?
そうですね。大きな意味でまとめちゃえばハドルアップも含めてコミュニケーションですね。
—— チームとしての目標は?
圧倒的に、かっこ良く勝つ、というところですね。
—— 長期的な目標は?
代表にはなりたいですね。
—— 結婚は?
まだまだです。
—— 仕事とラグビーの両立が大変だと思いますが
時間的に限られているんで、仕事は最低限のことをしっかり確実にやろうと思ってます。
◆パスとコミュニケーション
—— 早稲田で大学1年目の清宮監督とサントリーで社会人1年目の清宮監督は変わりましたか?
変わりましたね。僕の感覚では監督が大学1年目の時はオーストラリアのラグビーでしたが、社会人ではニュージーランドのラグビーという感じがしました。僕の感覚ですけどね。
—— 具体的にオーストラリアとニュージーランドの違いを教えてください
一言で言うと、オーストラリアのラグビーはシステマチックなラグビー、ニュージーランドのラグビーはレスポンスのラグビーだと思います。
—— コミュニケーションの取り方やミーティングは?
これも違いますね。中の人が違うというのもあると思いますが、いまはよく笑いますね。ミーティングのやり方自体はあまり変わっていません。
—— 学生時代の方が怒ってたとか?
いやぁ、いまも怒られますからね(笑)、根本は変わってないんじゃないですかね。清宮監督が大学に来てすぐの春、チームはガラッと変わりました。オープン戦でもそれまで全く勝てなかったところに勝って、最後に関東学院には負けましたが、それまでぜんぶ勝っちゃいました。最初からチームがガラッと変わりました。選手もみんな自信を持てるようになりました。
—— 清宮監督の大学監督1年目と社会人監督1年目の両方を見てみてどうですか?
見てるところ、考えているところが違うんでしょうね。長いスパンで考えて、いまこれをした方がいいと言っているんだと思います。いまだけを見て何をするかを考えるのではなく、あれもこれもやることがある中で、大事なことをやらせるんだと思います。早稲田でもそれまで6時間やっていた練習を2時間にして、大事なところだけをやらせたんだと思います。そこの見抜き方、いま必要なことの見分け方が優れているんではないのかと思います。
大学の最初の頃はほとんどフィットネスとウエイトしかやってなかったんですが、それでもさっき言ったようにチームは上向きになりました。社会人ではフィットネスとウエイトだけなんてことはなかったですが、サントリーの選手を見てから考えたんでしょう。
同じ早稲田でも監督が1年目の時の早稲田と、5年目の早稲田とではぜんぜん違うラグビーをしています。マイナーチェンジをしながら、トップを維持するために変えていくというところが清宮監督のすごいところだと思います。
—— 最後に個人的な今年の課題は?
「パス」「コミュニケーション」、この2点です。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:植田悠太)