2007年5月24日
#89 大久保 直弥 初副将! 『バイスキャプテンはワサビ』
◆最後のご奉公
—— 元キャプテンですが、バイスキャプテンの経験は?
バイスキャプテンは初めてです。
—— 山下大悟キャプテンからのご指名ですが、要請があった時はどんな話をしましたか?
若い選手が去年育ってきました。それまでは経験のあるメンバーが出ていたのが、去年一気に新人が入ってきて世代交替があって、僕としてはそのまま一気に若い選手が中心になっていくのが、いいのではないかと自分では考えていたんです。
そうしたら大悟から優勝を目指すにあたって、優勝した経験をもう一度若手に叩き込んで、どこに対しても強いフォワードを、もう1回作ってほしいということでしたので、快く「やらせていただきます」と言いました。最後のご奉公ですよ。
—— ということは、フォワード中心に見ていく役目ということですか?
そうでしょうね。ただ手術(左腕骨折)もあって、なかなか春から一緒にやるっていうのは難しい状態です。
—— 復帰のめどは?
骨の付き次第です。それ以外は健康ですし、コンタクトプレーができないのでストレスが溜まりますね。
—— 一時期かなり筋肉が落ちた時がありましたね
怪我をするとそうなるでしょう。体重は落ちますね。ウェイトトレーニングが限られてきますし、食欲もそんなに出てきませんから。食べ過ぎて脂肪を付け過ぎてもしょうがないですし。でもこの点に関しては心配していません。
◆根拠のない思い込み
—— チームの現在の状況は?
大悟がもう全体練習に参加していますし、大悟はキャプテンですからチームの象徴であり、どんどん自分の色をチームに付けていってほしいと思います。チームの軸というか、そこがしっかりしさえすれば、長いシーズンで多少の山あり谷ありの中でも、チームは決して崩れないと思うんです。
—— 去年のシーズンはどんなシーズンでしたか?
いい経験といいますか、今まで怪我で出れないシーズンなんてなかったので、外からチームを見させてもらいましたが、中と外ではやっぱり違いますね。より客観的になれるっていう感じでしょうか。
去年に関していえば、僕らは東芝と3回戦う予定でしたが、東芝とのトップリーグでの最初の試合の後で「1回は東芝に勝てるんじゃないか」という根拠のない安易な思い込みがチームの中にも自分も含めてあったことが、いま思えばチームの甘さと言うか、最後に勝てなかった原因ではないかなと思います。
—— 東芝自体が今年、監督を含めメンバーが変わってしまいましたね
"甘さ"もそうなんですが、相手を見ちゃうと結局自分たちを見失うんです。だから、"いつでも敵は自分たち自身にある"ということなんです。薫田さん(真広/前・東芝監督)に勝ち逃げされましたが(笑)それはしょうがない。それは薫田さんの上手い生き方で、最高でしょうね、勝って辞めちゃうんだから、最高の終わり方でしょ。
◆常にコンスタントに戦える選手
—— 日本選手権のトヨタ戦はどうだったんでしょう?
トヨタ戦は息切れでしょうね。チームのピークをマイクロソフトカップの決勝に持っていったのだから、あそこで勝つしかない。あそこで勝っていたら、次も決勝まで行っていたでしょうし、優勝していたかもしれません。
それだけマイクロソフトカップ決勝の東芝戦には、あらゆる準備をしてチームを整えて、観客も満員でこれ以上ない最高潮の舞台でしたから、もう勝つしかなかった。裏を返せばメンタル的に、そこまで上げる必要があったのかな?とも思います。
120%出るけれど、70%の時もあるチームでは、勝ち抜けません。常に90%以上の力を出せるチームでないと、勝てないと思います。大学生みたいに一発勝負のトーナメントなら、もちろんそういうメンタルも必要な時もあります。
その振り幅をいかに小さくして、とくにフォワードは次から次へとゲームが動いて止まらないですから、スクラムの後ラインアウトでモール、またスクラムというゲームの中で、やっぱり一喜一憂しないで、常にコンスタントに戦える選手が、最終的には信頼できるんじゃないでしょうか。1つのミスで下を向いていると、チームの信頼は得られません。
—— 波があるのは新人が多くいるチームの若さでもあるんでしょうか?
爆発力という面で、ガムシャラなファイトはチームに必要だと思います。それを上手く使いながら、清宮さんはチームを作ってきました。それに加えて、自分の中でリフレッシュして、切り替えられればいいんですよ、ONとOFFで。
—— そこにベテランが上手く噛み合えばいいということですね?
その辺でしょうね。大事なのはバランスでしょうね。
◆目標はデカく
—— バイスキャプテンとしての意気込みは?
バイスキャプテンは特に仕事はないんです。やっぱり中心はキャプテンですから。東芝のバイスキャプテンの顔は、思い浮かばないでしょう?チームの象徴はキャプテンにあるんですよ。とくに強いチームでは。
バイスキャプテンは、寿司でいったら"ワサビ"です。決して目立っちゃいけない。量が多過ぎてもダメですしね。キャプテン以外のリーダーシップメンバーは、みんなワサビですよ。トロはキャプテン。監督は寿司を握る人。その他のシャリやネタがチームですね(笑)。
—— ご自身がキャプテンの時のバイスキャプテンは?
いません、キャプテンだけです。
—— じゃあ1人でリーダーシップをとって優勝、大変でしたね
たまたまで、巡り合わせが良かったんですよ。強いなんていう意識はなかったですから。かえって勝っちゃった後の方が辛かったんです。いかにしっかりとチームの目標を持って、緊張感を持続していくかというところが。むしろ優勝に向かってチャレンジしていく方が、楽と言えば楽ですね。
—— シーズンに向けての心配事はありますか?
個人的には怪我です。チームとしては始まったばかりなので、とくに何もないですよ、まだ(笑)。まぁ何もないというよりも、1人1人、それぞれが課題を持って、ジャパンに招集されてレギュラーメンバーが抜けている状態なので、それをチャンスとして活かせる人が、やっぱり本番でも活躍すると思います。
—— 個人的な目標は?
個人的な目標を持って、シーズンを戦ったことはないですね。野球みたいに数字的なものもないですし。今までは出るのが当たり前でしたから、今年はそうではなくて、みんなと僕自身も競争しますし、その中で信頼されるメンバーが、グラウンドに立っていてほしいなと思っています。過去の実績に関係なく、ね。
—— チームとしての目標は、訊くまでもない、ですか?
"優勝" それ以外にない。"全勝" ですね、目標はデカく、ということで。
(インタビュー&構成 針谷和昌)