2007年4月11日
#85 平 浩二 初代表 『自分らしく前へ行くプレーを見せる』
◆危機感を持って
—— 代表スコッド(候補)53名から日本代表に選ばれた40名の中に入りました
入ったと言っても僕の13番のポジションの人は、誰も落ちていません。スコッドから大畑さん(大介/神戸製鋼)と守屋さん(篤/ヤマハ発動機)が怪我で抜けただけで、あとはスコッドの6人がそのまま残っています。でも日本代表に入ったということで、嬉しかったですよ。最後に残るのは誰か?これからまた絞られていきますので、危機感を持ってやっていきたいと思っています。
[日本代表=CTB](3/29発表)
大西将太郎(28歳)ヤマハ発動機/キャップ19
B・ロビンス(26歳)リコー/初代表
今村雄太(22歳)早大/キャップ4
霜村誠一(25歳)三洋電機/キャップ2
C・ロアマヌ(20歳)埼玉工大/キャップ2
平浩二(24歳)サントリー/初代表
- ※【キャップ】cap
- 国を代表するチームの一員として、テスト マッチに出場してプレーした場合に与えられる帽子又は顕彰。その回数に応じ、何キャップなどと呼ぶ。(以上、JRFUホームページ用語集より)
—— 選考直前のフィットネステストはどうだったんでしょう?
良くなかったと思います。最後のマルチステージという、しんどい持久力系の種目があって、僕、持久力がないから.....20mシャトルランがレベル1から始まって5往復、そしてレベル2に上がって同じことをやって、レベル3、4、5と上がっていきます。"トゥーン"っていう音が鳴って20m、また"トゥーン"と鳴って20m走るんですが、だんだん"トゥーン"の鳴る間隔が、レベルが上がるごとに短くなっていくんです。それで何レベルまでいくかを数える種目ですが、どんなペースかというと、だいたいレベル5でもジョグのペース、全力の5割ぐらいのペースでした。
—— どこまでいけましたか?
レベル10ちょいぐらいでした。フォワードよりは良かったけれど、バックスの中ではぜんぜん悪かったですね。ドベツー(ビリから2番目)ぐらい。このマルチステージが最終種目だったんですが、そこに辿り着くまでがかなりきつかったんです。
60m走、その次は40mをトップスピードで走って30秒後にまたスタート、それをタイムを落とさずに8本、それから立ち幅跳び、垂直跳び、握力、懸垂、ベンチプレス、片足スクワットをやって、柔軟性、背筋力、バイオテックス=これは足の筋力を計る機械ですが、それから体脂肪も計りました。朝9時から午後4時半ぐらいまでかかりました。結果が良かったのは、60m走が速い方でした。
—— このテストをやってみて改めてここを強化しようと思ったところはありますか?
持久力を鍛えたいですね。走れば足は速くなりますが、持久力はある程度生まれ持ったものだと思うので、難しいかも知れませんがチャレンジしたいと思います。心さん(菅藤)、トモキさん(澤木智之/昨シーズンで引退)のレベルには、どんなに走ってもなれないと思いますが。
◆的を絞らせない
—— 昨年、シーズン前にインタビューした時「レギュラーと日本代表」を目標にしていましたが、両方とも実現しましたね
シーズンが終わった後、いろいろ考えたんです。それで思ったのは、ライアン(ニコラス)の存在が大きかったということです。あれだけの突破力があってパスもできる選手が横にいたら、相手のマークが集まって、僕が抜け出すことができたということが、それがすべてではないですが、あったと思います。
ライアンのような強い選手が横にいなければ、あいつは何もできないと思われたくないので、今年はライアンと僕のどっちがきてもこわいぞ、と思わせたいですね。大悟さん(山下)も(怪我から)帰ってくるので、まず試合に出るためのチャレンジがありますが、もし試合に出られたら、的を絞らせないようにしたいと思います。
—— 去年1年で体がずいぶん大きくなった気がしますが
当たり負けない体を造りたかったので、それは実現できたかなと思っています。"クリーン"ですね、そういう体ができたのは。速さを落とさずに体を大きくする"クリーン"ですが、1年目(一昨年)はクリーンをやっていても「何だ?これ?」という感じで、初めてやったのでぜんぜん効果を実感できませんでした。
1年目は重いのを挙げようとやってましたが、2年目にフォームを意識することに重点をおいて、軽いバーベルでいいからフォームを意識しながらやりました。そうすると1年目に挙がらなかったものも、そのうち軽々挙がるようになってきました。グラウンドでもその成果が出て、クリーンのお陰かなと思うことが多くなりました。
—— 例えばどういう成果ですか?
瞬発的な速さとか、相手がきた時に瞬間に体をずらしたりするプレーです。
◆まさかのバツベイ
—— さて、昨シーズンの最も印象的なシーンは、マイクロソフトカップ決勝でのバツベイ(侍/東芝)から受けたハイタックルでした
あの時は、ボールを持った瞬間にゴールラインが見えました。そしてあと3mというというところで横に誰かが見えたんです。それがバツベイだというところまでは見えなくて、タックルされても押し切ってトライにいけると思ったんです。それがまさかのバツベイ。バツベイはパワーが違いますから、しかも首にタックルされて、その瞬間、軽く意識が飛びました。
でも後からビデオを見ると、そこで僕は足を踏ん張ってこらえているんですね。その踏ん張りでたぶん内側靭帯をやられたんです。気がついたらタッチラインから出ていて、タックルを受けた首は大丈夫だったんですが、膝が痛くて。
—— ある意味、あの試合の勝負を分けたプレーでした
トライできなかったのは、悔しいです。この悔しさを晴らすには、東芝に勝つしかない。バツベイには1回タックルで吹っ飛ばされた訳ですから、決勝戦であたって、体をずらしてバツベイを抜いて、なおかつバツベイを1発で止めて、それで試合に勝って、やっとスッキリします(笑)。
—— 今年はこれからワールドカップへ向けて、日本代表はまた30名に絞り込まれます
厳しい、ホント厳しいと思います。名前を見るだけで、凄いメンバーばっかりですから。すべてが初めての経験なので、最初は戸惑ったりすると思います。でもそこで僕がしばしばなる"控え目"が出ないようにして、自分らしい前へ行くプレーが見せられれば、いいなと思っています。僕のアピールポイントはそれしかないと思うので。
◆鍵の年
—— サンゴリアスでの今年の目標は?
もちろんレギュラーを取ることです。同じポジションにキャプテン(山下)が帰ってきますから。
—— 前のポジションのウイングには戻りませんか?
センターを昨シーズンやって「僕にはセンターしかない」と思ったので、戻らない、戻りたくありません。
※ここで横を通りかかった小野澤宏時が口をはさむ
小野澤「『戻らない』と『戻りたくない』ではぜんぜん違う」
(それを受けた平選手)
戻らない(笑)。
※再び小野澤選手
小野澤「そう、それでいい、力強い(笑)」
—— 「僕にはセンターしかない」と思ったのは、どういうところからですか?
人と人の間を抜くのが面白いんです。ウイングだと抜くのは1人じゃないですか。センターだと相手がドリフトしてきた時とか、13番がフルバックにボールを流して、12番がそれによってズレてきた瞬間を抜く、なんていう時が最高です。ウイングではこうはなりません。そこが面白い。駆け引きですね。今度はズレてこなかったなぁと思ったら、アウトに切って最後にパスとか...。
- ※【ドリフト→ドリフティング】drifting
- ディフェンス フォーメーションの一つ。自分のマークのプレヤーを防御するのではなく、ディフェンス ライン全体を横にずらすことにより、自分より外のプレヤーを防御する方法。相手バックスのエキストラ マン参加の攻撃に対して有効。(以上、JRFUホームページ用語集より)
—— 順調に迎える社会人3年目ですか?
1年目は、ぜんぜんでした。2年目は、やっていて楽しかった。3年目の今年は、キー、鍵の年ですね。
(インタビュー&構成 針谷和昌)