2007年1月23日
#72 藤原 丈嗣 『この結果に負けないような素晴らしい選手になりたい』
◆初めての優勝
—— アジア大会、決勝最後のワンプレーで山田選手(章仁/慶應大学)が逆転トライを決めましたが、これは絶対勝てるっていう雰囲気になっていたんですか?
山田君がトライを取ることをチームからも期待されていて、「ヤマダ持ってけ!ヤマダ行け!」っていう感じでした。僕はこの試合、先発して膝を怪我して、それは味方に接触しての怪我だったんですが、ベンチに下がって見ていました。「金メダルは難しいかな?」と思ったこともありましたが、でもみんな最後まで気持ちを切らしていなかったので、「いい結果が出ればいいな」とも思っていました。
—— 最後逆転するまで先制した韓国がリードしていたんですよね
ずーっとリードされていたので、逆転トライを決めて優勝した瞬間はもう「やったーっ!」と嬉しく思いました。メンバーの中にはコカ・コーラの築城みたいに泣いて喜んでる人もいましたから。
—— 試合は何分ハーフなんですか?
決勝だけ10分、あとは7分ハーフです。1次リーグ戦2試合、決勝トーナメント戦2試合、合計4試合やって、僕は(プール戦の)カタール戦と中華台北戦で1トライずつ、トライしました。コンバージョンはドロップゴールで狙うんですが、難しいですね。日本チームは大会を通じてたぶん1回ぐらいしか入っていないと思います。
—— 優勝は藤原選手のラグビー歴で何度目ですか?
初めての優勝です。でもあまり実感がなくて、帰ってきても、今も実感がないんですが(笑)、みんなが喜んでくれるので、「金メダルってすごいんだ」と思っています。僕自身日本代表チームとサントリーと比べちゃうところもあったし、あまり準備していない中でやった大会だったので、「やっぱりサントリーがいいな」と思っていました(笑)。
◆1対1にかかる比重が大きい
—— 期間的にはどのくらいチームとして活動したんですか?
国内合宿を辰巳のグラウンドで1週間、それから大会で9日間ドーハでした。
—— 確か以前7人制に出て、そのプレーを見て清宮監督がいいなと思ったというような話をどこかで読んだ記憶があります
いいなと思った話、ぜんぜん聞いてません(笑)。ドイツでのワールドゲームスという大会に、大学4年生の時に7人制日本代表で出ました。当時行ったメンバーで今回も一緒なのは、山本英児さん、奥薗さん、小吹さん、鈴木さんです。ドイツの時よりすんなりとチームに入れましたが、僕はもともと人見知りしてしまうんです。プレー自体はドイツの時も今回も、どっちも変わりなく、あまり良くなかったです。
—— ドーハと言えばサッカーW杯アメリカ大会予選の「ドーハの悲劇」がありました。同じ競技場ですか?
芝生のグラウンドでしたが、みんなともその話題になって、「そーなのかなぁー??」って会話してました(笑)。結局よくわかりませんでしたけど。練習は競技場近くのグラウンドでやりました。
—— 他国でいいチームやプレーヤーはいましたか?
韓国は強かったです。ハーフと10番が良かったって、みんなが言っていました。あとタイと中国がいい動きをしていました。
—— 今回の出場で得たものは何ですか?
15人制と同じ大きさのフィールドでやりますから、スペースが大きいので1対1のシチュエーションが多く個々にかかる比重が大きいんです。そこが勉強になりましたし、1人でディフェンスしても難しいところがあるので、ディフェンスの時の周りとの兼ね合いも勉強になりました。
チームとしてフォローしつつ、1人1人がしっかりプレーすると相手を止めやすかったりします。スタッフはみんなすべてのことに一生懸命サポートしてくれましたし、システムとしてはシンプルなものは、チーム内でできていました。
そういう組織的なところもありつつ、実際には1対1で勝つことが重要になってきますので、そこのところは15人制と共通していて、繋がっていると思いました。山田君が自分の仕事はトライすることだとしっかり意識していて、強い気持ちでプレーしているところも、いい勉強になりました。いい選手です。
—— 自分の課題なんかも見つかりましたか?
今もなんですけど、あまりアグレッシブにいけていません。絶対トライを取る、とか、ボールをもらいにいく、とか、まだまだ勝負しきれていないなぁというところが課題です。今回のセブンスでそこを良くしようと思っていきましたが、そこはまだダメだなぁというのが、心残りです。
◆試合に出たい
—— 怪我はもう大丈夫なんですか?
怪我をして帰ってきて、治療して、今年の元旦から練習に参加しはじめ、第2週からコンタクトを含めて全てのトレーニングに入ることができました。ずっと小野澤さん(宏時)や平さん(浩二)に、1対1の練習につき合ってもらったりして、課題の面も良くなってきてますよ(笑)。
※横で小野澤選手がラグビー・マガジンの取材を受けていて、おもむろに着ているTシャツを脱いでたたんで見せている(それを見て笑いが止まらない藤原選手)
Tシャツのたたみ方を、僕も小野澤さんに教えて貰ったんですよ。左右対称にして、ぜんぶ同じようにたたむんですが、すごくA型なんですよね、キチッキチッとしてて。出かけている時に奥さんに電話して、あそこのタンスのあそこの箱の何番目に入っているTシャツ、というと絶対にそこにあるという話を聞いて、その話が一番楽しかったですね(笑)。
※この横で行なわれていた小野澤選手のインタビューは1/24(水)発売「ラグビー・マガジン3月号」に掲載されますので、お楽しみに
—— 練習にも完全復帰して、試合に出たいですよね
出たいっすよ!確認するまでもないですよ!(笑)ここにいる選手、みんなそうですよ!
—— 開幕戦での怪我、アジア大会での怪我、ポイントポイントで怪我がありますが
集中力をもっと高くしていたら、怪我なんかしないと思います。大学(日大)3年の春に体重を増やしてヘルニアになったことと、同じく3年の時に捻挫して以来の怪我ですね。骨折なんか初めてですから。
◆グラウンドに出るまでの準備をしっかりする
—— 東芝戦はスタンドで見ていてどうでしたか?
見ていて素晴らしい試合でした。アタックもディフェンスも自分たちがやってきたチームのラグビーを、実践しようというところがすごく見えて、感動しました。
—— みんなでここはこうすればいいと意見を出し合おうと、試合後に監督が言ってましたがその点は?
自分の強みが把握できていないので、何とも言えません。アタックの時に僕がすぐに寝ちゃったら、東芝の選手はブレイクダウンのところでいいプレーをするので、すぐに倒れないようにしないといけません。ディフェンスでは有賀剛が危険を察知するのが早いので、バッキング、フォローを早くしないと、後方が危うくなります。自分は反応が遅い時があるので、そこにも気をつけないといけないと思います。
自分としては1対1の勝負で強みを出せるようにするのと、グラウンドに出るまでの準備をしっかりすること、清宮さんたちが考えているラグビーを上回るための準備をすることが大事だと思っています。
—— 上回るとは?
考えている以上のいいプレーをする、ということです。
※インタビューの横を通りかかった有賀剛選手「藤原は僕の言葉でアジア大会に行くことにしたんですよ。絶対に行った方がいい、って言ったんです」
違います。エル(アラマ・イエレミア/バックスコーチ)が言ってくれたんです。「お前は本当に成長するから行ってこい」って。
—— あらためて今大会に出場して良かったことは?
金メダルってすごい結果だと思います。アジアで一番いいという賞ですから、この素晴らしい結果に負けないように、もっと練習して、素晴らしい選手になりたいですね。
[プール戦第1試合] | ○58-0(27-0,31-0) | カタール |
[プール戦第2試合] | ○24-7(5-7,19-0) | 中華台北 |
[準決勝] | ○22-7(10-0, 12-7) | 中華台北 |
[決勝] | ○27-26(10-14,17-12) | 韓国 |
FW PR | 藤原 丈嗣(サントリー) | 22歳 |
桑水流 裕策(福岡大学) | 21歳 | |
HO | 奥薗 裕基(大阪府警察) | 25歳 |
山本 英児(九州電力) | 27歳 | |
BK SH | 佐藤 貴志(ヤマハ発動機) | 25歳 |
SO | 小吹 佑介(リコー) | 25歳 |
山田 章仁(慶應義塾大学) | 21歳 | |
WTB | 四宮 洋平(Rugby Roma) | 27歳 |
鈴木 貴士(セコム) | 25歳 | |
吉田 大樹(東芝) | 25歳 | |
築城 昌拓(コカ・コーラ) | 23歳 | |
山崎 弘樹(トヨタ自動車) | 28歳 | |
監督 | 佐野 順(ヤマハ発動機) | |
コーチ | 太田 正則(埼玉工業大学) | |
トレーナー | 渡邊 誠(日本ラグビー協会) |
(インタビュー&構成 針谷和昌)