2006年12月29日
#69 佐々木 隆道 いざ府中ダービー! 『先頭に立って体を張る』
◆社会人では絶対に勝ちたいと思った
—— 東芝と試合をしたことはありますか?
早大4年の時、日本選手権の準決勝で1回、その前の11月の練習マッチで1回、試合をしています。試合をしてみて、やっぱり壁を感じましたね。トップリーグのトップチームの壁を。
—— 具体的にはどんな壁でしたか?
攻めていて抜ける気がしないし、外でモールを組まれるとか、今までそういう流れになったことがない、体験したことがないプレーをされて、対応しきれなくて、ズルズルいってしまいました。
—— 早大時代もミーティングでポイントは指摘されていたんですよね?
こういうところに穴があるから、こうついていこうという話はしていましたが、いいボールが出なかったですし、前半は14-0でしたが、後半差が開いてしまって、結局最後まで0点で終わってしまいました。
—— 悔しかったですか?
そのゲームで大学ラグビーが終わってしまったので、負けた瞬間は「あぁ、終わったなぁ」みたいな、肩の荷が降りたというか、そういう感覚でしたけど、ロッカールームに帰って凄く悔しくなって、社会人では絶対に勝ちたいと思ったし、それと同時に自分の力のなさを感じました。
◆やるべき事を100%出し切れれば勝てる
—— 社会人になって、プレシーズンマッチでは勝ちました
自分たちのアタックが上手くいけば、トライを取れるというイメージがありました。それがサントリーと早稲田との差だと思います。東芝は相変わらずブレイクダウンは激しかったし、相手のペースになる時間帯もあったので、強いチームだなという印象は変わりません。
—— 今度の試合のポイントはどこでしょうか?
フォワード戦だと思うので、ブレイクダウン、セットプレー、全てのプレーでどれだけ相手を上回れるか、そして自分たちのパフォーマンスをどれだけ出せるかがキーになると思います。サントリーがやるべき事を100%出し切れれば、絶対に勝てると思います。
東芝のフォワードは大きいですけれど、強さという点では負ける気がしません。相手より先に仕掛けるとか、どんな状況でも負ける選択肢はないですね。どうやって勝つか、というイメージではなく、勝つことが前提ですから。
—— そうすると今から思い描けるシーンはたくさんあるんですね?
そうですね。先頭に立って、この試合は体を張りたいですね。
◆ボールは全部自分のところに来い
—— NEC戦で見事なトライで弾けるかなと思いましたが、ワールド戦ではその勢いが少々ストップした気がするんですが
正直言ってモチベーションを保つのが難しかったと思います。NEC戦は凄く楽しみで、試合前もちょっと分からない感覚というか楽しみな感覚というか、今までで初めての感覚で、試合をやっていても凄く楽しかったんです。ボールは全部自分のところに来い、と思っていたし、自分でボールを持っても絶対に前に出るという気持ちが凄く出ていて、毎試合そうならないといけないんですけど、どこかでワールド戦は下位のチームという気持ちがあって、それは凄く後悔しています。そんな中でも自分の中ではディフェンスは激しくいけたと思っています。
—— 試合前のジャージ授与の時、必ず「楽しみましょう」と言いますね
せっかくやるんだから、どんな結果がついてきても、楽しまなきゃいけないと思っています。それが楽しめなくなったら、試合に対してどうモチベーションを持っていくのか分からなくなります。
—— 楽しもう、というのは何かきっかけがあったんですか?
その思いが出てきたのは、プロになって変わってきたところだと思います。早稲田の時は皆のために勝たなきゃいけなかったし、そういうプレッシャーの中でずっとやってきて、今もその部分は変わらないですけれども、より1人のプレーヤーとしてチャレンジしていけるというか、自分の前に立ちはだかるプレーヤーを乗り越える楽しみが出てきたからだと思います。
サントリーに入って一時期自分が上手いこといってると感じられなくなった時に、ラグビーがつまんなくなったことがあって、その期間が長かったんです。それが変わったのが11月のブレイクの期間で、それまでも試合前に楽しもうと言っていましたが、ある意味、自分に言い聞かせている部分もありました。
◆ボールごと相手をなぎ倒す
—— 変わることができたきっかけは?
今まではトップリーグになったので、例えば相手にタックルに入るにしても、下に入らなきゃいけないという意識が強くて、それがどうも上手くいきませんでした。それでなんで上手くいかないかよく考えてみて、そんなタックル教えてもらったことないし、やったこともないプレーをしていたということに気づいたんです。
自分のタックルの原点は、高校の時にやっていた啓光学園のタックルだということを再認識しました。タックルの高さは関係なく、自分から相手に向かって入っていく、イメージはボールごと相手をなぎ倒すタックルです。それに気づくまでは、自分のいちばん強いポジションでタックルに入れていなくて、全部受け身になっていました。 それを変えたら、いいディフェンスが出来るようになりました。
その流れができてくると、いいアタックも生み出せるようになりました。そういうことから考えると、僕は気分屋で、自分がノっている時は凄くいいプレーをするし、そういうムラをなくさなきゃいけないと思うんです。駆け回っている時はノリノリなんですけれど。
—— 東芝戦、ここを見てくれというところは?
今度の試合は、ディフェンスでは一発で相手を仕留めたいと思います。オフェンスではしっかりフットワークを使って、チームを勢いづかせるようなアタックができればいいと思っています。
僕の場合、チーム内でガチガチの練習をやり始めると、気持ちがノってきて、どんどんいっています。そして、試合が近づけば、気持ちは勝手に湧き上がってくるんです。
(インタビュー&構成 針谷和昌)