SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2006年11月21日

#58 篠塚 公史 『満足する試合はありません』

◆体を大きくしたい

—— トップリーグ第7戦・リコー戦での初トライ、おめでとう!

ありがとうございます(笑)。ただ、前が空いていて、そこに倒れただけです。

—— 新人で開幕戦から6番でずっとフル出場を続けていますね

出させてもらっているのは、ほんとにありがたいです。まだ体が細かったので、1年目からずっと出られるとは思っていませんでした。今もまだ細くて、大学の終わり頃は体重が105kgあったので、それに比べてまだ今の方が細いですね。今は100kg前後です。

—— 体を大きくすることが課題ですか?

とにかく体が軽いと、社会人はパワーが凄いんで、やっていけないと思います。今パワー不足なので、自分自身に体重があれば少しはパワーもつくかな、と思ってやっています。とにかく体を大きくしたいですね。

—— そのためにはどんなことを?

とにかくウエイトして、ただ体重を増やすだけじゃだめだとも思っています。体重を増やして走れなくなるのは嫌ですし、自分でも走れることが自分自身のいいところだと思ってます。

筋肉を増やさなきゃいけないので、そういう知識があまりないんですが、新田コーチ(博昭/フィットネス&ストレングスコーチ)に言われたことを、今はとにかくやるだけです。

※横を通りかかった新田コーチ
「とにかくクリーン(ウエイトの一種)をやって下さい。クリーンとスクワット。この両方の重量が上がっている限り大丈夫です」

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—— 足は速い方ですか?

自分ではそんなに速くはないと思います。

※再び新田コーチ
「シノは遅そうに見えるけど、ストライドが長いから、意外に速いんだよね。ドンク(サイモン・メイリング)とそこは共通している。ドンクの方が走り方はいいけど」

なんで、へこますんですか(笑)。

◆もったいない

—— 前半戦ずっと出ていて、どの試合が最も印象的でしたか?

やっぱり初戦ですね。緊張していてよく覚えていません。トップリーグに出れて、凄く嬉しかったですね。

—— ではその喜びをご両親には報告しましたか?

両親は全試合、見に来ています。開幕戦(大阪・長居)ではどの席にいるかは分かりませんでしたが、秩父宮ではだいたいいつも同じ席なので、あぁまた見に来てるんだな、と分かります。母親の話だと、親父がハマっちゃったみたいです。それでいつも来るとわかってるので、チケットも取ってあげてます。

—— ラグビーを始めたのはいつですか?

高校に入ってラグビーを始めました。それまでは、小学校(玉井小)ではソフトボール、中学(玉井中)では野球をやってました。ポジションはファースト(1塁手)、デカイからどんなボールでも取れるらしくて(笑)、ピッチャー(投手)も1週間ぐらいやったんですが、やっててストライクが入りませんでした。

バッターがいないとストライクが入って、バッターがいると入らない、それがなぜだかわからない(笑)そんな感じでした。それと背が高いのにサイドスロー(横手投げ)にさせられて、もったいないっす(笑)。

—— バッティング(打撃)は?

当たれば飛びました。でも当たらない方が多かったですね、三振ばっか(笑)。野球は好きだったと思います。小学校1年から、地元の少年団があって、友達もみんなやっていたので、一緒にやろうと思って始めました。

昔は野球だったら、2人ぐらいでもキャッチボールして、普通に遊べるのが良かったんです。家でも1人で壁当てしながらやってました。ひとの家の壁ですけど(笑)。

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◆部活だけのクラス

—— 高校でラグビーを始めたのは?

中学から高校の進路は、行けるところがなくて迷ってました。そうしたら高校のラグビー部のコーチから誘いがあったんです。同じ高校のバレー部のコーチが、背が高いからバレー部に入らないかと話に来たことがあって、僕の話をラグビー部のコーチにしたらしいんです。

バレーをやる気は全くなくて、ラグビー部のコーチの話を聞いたんですが、最初は迷いました。ほとんど何も知らなかったんですが、だいぶ歳は離れてるんですけど、同じ中学の先輩がいて、その先輩から高校のラグビーは楽しい、という話を聞いたんです。騙されたんですかね?よくわかりません。

それで埼玉工業大学深谷高校に入って、ラグビー部に入りました。今は違うと思うんですが、当時は部活だけのクラスがあって、ラグビー部とバスケットボール部はクラスが一緒でした。だから野村(直矢/同高校→法政大学→サントリーと共に歩む)ともずっと一緒でした。

—— 野村選手とは仲いいんですね?

ずっと一緒なので、皆に聞かれるんですが、普通に仲いいっすよ。仲悪い?って聞かれることもよくありますが。大学の時は遊んでいるグループが違ったんですが、でも実家に帰れば2人で飲みに行ったり、飯食いに行ったり、今でもしています。だから仲いいっす。

練習が早く終わった時なんか、大学時代によく行っていた、八王子のトンカツ屋に、今でも2人で行ってます。2人とも中野島の寮に住んでるんですけど。

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◆誰も辞めないでやり通した

—— 2人はラグビーをやってなかったら悪い方向へ行っていたのでは?という話もありますが

そういうのはないです。ワルってほどのことでもなかったです。ちょっとグレてたぐらい(笑)。でもラグビーをやってなかったら、たぶん不良グループに入ってました(笑)。中学校自体、ちょっと治安というかそういうのが良くなくて、先輩とかすごく悪かったんです。

僕は上に姉貴がいたんで、救われました。姉貴はバレーをやってました。あと弟が1つ下にいますが、弟は一時期、自分に影響されたのか中学の時はラグビー部でやってました。父さんは何もやってなかったと思います。母さんは、前はバレーをやっていました。

高校も入る前は治安が悪いという噂を聞いてたんですが、入ったら普通の高校でした。ラグビー部はガラが悪かったですけど(笑)。でも僕はガラ悪いの好きじゃないんです。

—— 高校時代のラグビーは強かったんですか?

1年の時には全国大会で準優勝、2年の時にベスト4、3年の時がベスト16でした。練習は1年のうち300日以上あって、年に休みが20日間ぐらいでしたので、きついから辞める人がいるんですが、僕らの同期は16人でしたけど、誰も辞めないでやり通したんです。お互いに支え合って頑張れたことは、凄くいい思い出です。今はみんな働いているんで、あまり会う機会はないですけど。

自分自身は1年の時から試合に出してもらっていました。1年の時は先輩が怪我をしてスタメンで出れて、それからそのままずっと出ていました。

—— そして法政大学へ

高校の担任の先生が、ラグビー部のコーチだったんですが、どこの大学へ行きたいかという大学進学についての面接をしました。最初は明治とか早稲田とか、名門しか頭になかったというか、法政は知らなかったんです。その時にその先生であるコーチに、法政がいいんじゃないか?と薦められたんです。

それで少し考え始めたところ、法政はスポーツ推薦があって入れる、と聞いて法政に決めました。自分は2年の終わりか3年すぐに決めてましたが、その後に野村が決めて、2人とも法政へ行くことになりました。

◆寮生活はムッチャ楽しかった

—— 大学時代のラグビーの成績は? 篠塚 公史 画像4

4年間ずっとベスト4でした。僕は2年の時から試合に出ていました。八王子で寮生活でした。それまでは寮とか考えられなくて、ずっと実家だったのでとても不安でした。

それが入ってみると、寮生活はムッチャ楽しかったんです。4人部屋だったのでプライバシーはないんですが、そういうのは自分は気にしないんで、それよりいつも誰かがいるのが楽しかったですね。

ラグビー部の寮でしたが、3年までは同じ学年同士が同じ部屋でした。4年の時は各学年が1人ずついる形で、もともとそういう形だったけども、僕らの時は人数の関係で、同じ学年が何人もかぶっていました。

親元を離れるのは初めてでしたから、門限がない時は実家に帰ってました。軽くホームシックになっていました。初めの頃は、仲がいい人はあまりいませんでしたから。

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—— 性格が大人しいんですね

だいぶ大人しいです。自分から積極的に話しかける方ではなかったんです。私生活は大人しくても、ラグビーになると人が変わるというほど極端ではないけど、結構どんどん言っていました。

—— ポジションはずっと同じですか?

はい、ずっとロックでした。大学の時はラインアウトの空中戦には自信があったんですけど、今は結構マークされていると感じてます。大学の時もそうでしたが、自信があれば普通に取れると思います。よく練習中にも中村直人コーチから「お前は取れるから自信をもって飛べ」と言われます。ですから積極的にやろうといつもしています。

—— 試合で気をつけていることは?

ふだん頭使わないんですけど、いろいろ考えちゃうと上手くいかないんです。頭を使うのは得意でないんです。こんなこと言うと、頭を使うラグビーをやろうという清宮さんに怒られちゃいますが(笑)、閃きや瞬時に思ったことをやるタイプだと思います。

だから気をつけたり意識するというよりも、練習でやって体で覚えるということを、昔からやっています。今の練習は終わるのが早くて、高校も大学もダラダラと長く練習していたんですが、自分ではこういう練習の方が逆にいいのかも知れないと思っています。

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◆優勝したい

—— 目標は?

優勝したらどうなるかが想像つかないんです。青木(祐輔)や隆道(佐々木)みたいに、常に勝ってるチームでやってないんで、優勝ってどんななのかがわかんないんです。高校でも大学でも優勝することを目指して皆で頑張って来たんですけど、それができなかったんで、社会人はもうその先がないですし、優勝したいですね。

—— 同じ新人の有賀(剛)選手が初の日本代表になりました

代表というのは、やっぱりラグビーをやっている上では、夢ですね。

—— ラグビーを始めて8年目、ラグビーのどこが面白いですか?

ラグビーは格闘技。僕は格闘技が好きで、高校の頃プロレスの関係者の知り合いがいて、その人から誘われたこともあります。個人的に当たるのは好きではないんですが、でももともと中学の頃から、ぶつかり合いが好きだったんです。こんなこと言うと、ワルだったように思われてしまいますけど(笑)。

—— サントリーに入ったのは?

いろんな企業から声を掛けてもらいました。そこからいろいろ自分自身で絞り込んでいって、2個か3個ぐらいに絞って、そこからどこのラグビーがいいのか迷いに迷いました。絞った会社の人たちに会って話をすると、自分のところがいちばんいい、と皆さん言います。

そんな話をずっと聞いていたら、迷ってわからなくなっちゃいました。これじゃ結論出ないなと思って、最終的にいちばん最初に声を掛けてくれたサントリーにしようと決めました。

同期のラグビー部でない一般の友達からは、「こんなことで悩んでるの、お前幸せだな、サントリーなんか人気あって滅多に行けないよ」と言われました。

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◆スーツで仕事に行く

—— その2個か3個に絞り込んだ時は何を基準に絞ったんでしょうか?

まず、関東から出たくなくて、そしてスーツで仕事に行くというのが憧れでした。最終的にラグビーを辞めた後のことも考えて、仕事をやりながらラグビーをするというのが希望でした。

—— 憧れのスーツを着て仕事に行ってみてどうですか?

営業をやってますが、難しい(笑)。営業に行って何を話していいか分からなくて...。早野さん(貴大)と同じ部署で、早野チームの一員なんです。それで結構、早野さんにも助けてもらってます。

早野さんには、ラグビーもロックとして助けてもらってます。例えば、入ってきた当初は、スクラムで頑張ってるつもりだったんですが、プロップからすれば僕がいる感覚がぜんぜんない、ぜんぜん押してないと言われました。

それで早野さんに相談したら、どうしたらいいかいろいろと教えてくれて、ちょっとしたアドバイスをもらってやってみたら、プロップにとってぜんぜん違ったらしいんです。

それは言葉にすると単純なことなんですが、スクラムの時の姿勢や、肩の使い方です。自分は真っ直ぐに押そうとしていたんですが、早野さんに聞いたら、1回下に押してから上に向かっていく...話すの上手くないのでちゃんと説明できないんですが...押す方向の違いだったりします。

肩の使い方で言えば、肩というより腕の使い方なんですが、僕は肩で押そうとずっと思っていたんですが、腕にちょっと力を入れて形を変えれば、ぜんぜん違ってくるんです。

僕は1点で押そう、力を伝えよう、としていたんですが、腕のどこに力を入れるかを変えるだけで、点ではなくて肩の面で押せるようになるんです。

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◆スタッフに恵まれている

—— そういうことが分かり始めた今、毎日が楽しいでしょう?

はい、楽しいですね。1日1日の練習が勉強になります。高校、大学で技術面をあまり教えてもらってなくて、当時は技術より体力、根性というのばっかりだったので、面白いですね。

—— 清宮監督はどうですか?

最初会った時は恐かった(笑)。着いていけるんかな?と思いました。まず雰囲気が恐くて、あまりしゃべらない無口のイメージがありました。今もちょっと恐いですけど(笑)、そこまで恐いとは思わないですけど、でもやっぱり凄い人だなとは、ずっと思っています。

—— その監督のもと、ずっと試合に出続けてますが、達成感は?

毎試合、満足する試合はありません。そこで満足したら終わりだなと思っています。今、タックルがチームでいちばん悪いと思うんです。よく清宮さんにも言われますが、フランカーはタックル、ディフェンスができないとダメだと思うんで、そこは毎試合反省することばっかりですね。

—— タックルを練習してますか?

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今、隆道とエル(アラマ・イエレミア/バックスコーチ)と、ディフェンスの練習をしています。今は基本的なところ、タックルの入り方をやっています。

最初、隆道が練習してたんですが、自分もフランカーをやり始めて、タックルできなかったけど、改めてできないということを痛感して、自分もやり始めました。

エルとはまず、今まで手からタックルに行っていたのを、肩を当てるということを言われました。そういう基本的なことからやっています。いろいろ言われてるんですけど、あと例えば足の位置とかですね。この練習はずっと続けます。

エルは凄いプレーヤーなんですけど、基本的なことを教えてくれます。サントリーのスタッフのメンバーは、ほんとに充実してます。凄いスタッフばかりです。恵まれていますね。

(インタビュー&構成:針谷和昌)

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