SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2006年6月14日

#21 山岡 俊 『目立たなくてもうまいことやってるなって気づいてくれるプレー』

◆一昨年、日本代表デビュー

—— ここのところずっと日本代表に選ばれていて、それはいいことでもあり、またチームの活動との両立は大変ですね

大変とは別に思わないですよ。チームと代表とでやろうとしているラグビーがちょっと違うけれど、その切り替えだけなので、そんなに大変だとは思ってません。チームの練習ではウエイトしたり走ったり充実してできますが、代表では集まってすぐに試合をして確認することの方が多いですから、自分のコンディションがフィットしているかと言ったら、完全ではありません。そういう面でチームのみんなと比べると、実際ウエイトとかはできていないですね。

代表では、始まるまでがオフとはいえ、それなりに期間があったので調整して集まってきているんで、まったく調子が悪いって訳ではないんですよ。代表ではウエイトも数少ないですけれどゼロではないので、みんなちゃんと調整しています。春にチームでやることと比べると、いつもより少ないという感じではありますが。

代表チームは、各チームで核になるプレーヤーの集まりだと思うので、もともと知らない人たちってわけでもないんですよね。だからちゃんとコミュニケーションを取りながら、お互いのことをわかり合うことができています。だいぶ試合を重ねましたし、キャンプも続いているので、選手も1人1人が仕事を理解してきているんじゃないかと思います。

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—— これからまた、代表の活動が活発になりますね

6月4日あたりから、5週連続で「IRBパシフィック・ファイブ・ネーションズ」大会が開催されます。5月29日に代表メンバーが福岡に集合して、その1週間後にトンガと試合をして、そのあと東京へ移動して翌週にイタリアと対戦します(*IRBパシフィック・ファイブ・ネーションズとは別の試合)。それが終わると次の週にニュージーランドへ行って、サモアとニュージーランド・ジュニアとやってと、1週間おきに試合があって、最後は日本に帰って来て、大阪でフィジーと試合をやります。(*6/4日本 vs. トンガ、6/11 日本 vs. イタリア、6/17 日本 vs. サモア、6/24 日本 vs. オールブラックス・ジュニア、7/1 日本 vs. フィジー)

—— そんなスケジュールで、ご家庭は?

2年前に結婚しました。今回これだけ合宿とか遠征とかあるので、家族でどこかへ行くというのはありません。普段は嫁と休みも合わせて取るのですが、こういう状況だとできません。

—— 仕事の方もサントリーの社員ですよね、普段どんな仕事を?

サントリーで営業をやっていて、酒屋さんを回っています。いまは代表に行っているので、その期間は日本ラグビー協会へ出向という形になっています。その期間は、営業の仕事は会社の人たちにサポートしてもらっています。会社の人たちは、いましかできないだろうから会社の仕事を考えずに充実してやって来いよ、と言ってくださって、そういう方々のバックアップのもとやらせてもらってます。

—— 日本代表デビューは?

一昨年のイタリア戦です。後半残り5分から出たのが、初キャップです。自分でも出ないだろうな、と思っていた試合でした。最後の最後で、出ていた選手の怪我かなんかだったと思いますが、替わったけれどボールはとりあえず触っていません(笑)。ラックに2~3回入った、そんな感じでした。

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◆相手の頭と当たって右肩を骨折

—— その後はずっと代表だった?

毎年11月、シーズン中に国際的なテストマッチ期間がありますが、一昨年のその期間にイングランド遠征に行って3試合やって、1試合目のスコットランド戦で100点以上取られて、2試合目はルーマニア戦でそこそこいい試合をしたけれど20点差で負けて、最後のウェールズ戦でも98点ぐらい取られて、3試合合計250点弱の失点という遠征に行って、そのあと代表からはずれました。そのときは日本に帰ってきてサントリーに復帰しても、リザーブとしての出場が結構多かったですね。

—— そうするとその時期がいちばん辛かったときなのでは

行く前までは先発が多かったですし、帰ってきてそういう使われ方が多かったので、悔しいというか、チーム的にもメンバー編成はこうなのかなと。納得はしていなかったけれど、精一杯やるしかないと思っていました。

その後、春ぐらいにジャパンAに呼ばれて、NZU(ニュージーランド学生代表)と試合をして、右肩を骨折したんです。それは前半終了間際のワンプレーでした。点を取られたあとのこっちのキックオフで、それを相手がキャッチしてそのまま来て、そこへタックルにいったんですが、相手の頭と僕の腕が当たって。力が抜ける感覚だったんです。

そのプレーで試合が止まって、前半が終わってロッカーに戻ったんですが力が入らなくて、それでも行けるか?と言われて後半また出ていって、ラインアウト投げたら、そこまでしかボールが飛ばなくて(*と、自分の指先で足下先の目の前を指す)、あぁもう無理です、って言って、そこから協会の用意している病院へ行って診てもらったら、折れていました。あまり怪我しないタイプですので、骨折は高校以来でした。

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—— その怪我の回復は?

夏合宿ぐらいからチームに合流したんですけど、腕はとくに問題なかったので合宿でチームの練習に専念できて、結果的には良かったと思います。去年はチームで先発で出場する機会が多かったですよ。怪我して休めたからってわけではないですけれど、サンゴリアスに集中できたと思いますし、結果的にその試合が日本代表のセレクションを兼ねていたかもしれなくて、怪我をして良かったとは言えないけれど、チームにいて体の管理体制がしっかりできたと思います。

—— その後の日本代表は?

去年1年呼ばれなくて、シーズンが終わってスコッド(代表)を50何人か発表のときに呼ばれました。

—— いちばんの想い出は?

ジャパンでいちばんいい想い出ですか?すごい記録的な負け方をしているんで、余りいいイメージがないんですよね。今回のIRBパシフィック・ファイブ・ネーションズの大会出場チームは格上ばかりですが、なかなかこういう機会でないと経験できませんので、とても楽しみです。

—— 日本が世界と闘うスタイルは明快ですか?

闘い方とかはあると思うので、これから代表スタッフが考えた上でやっていくことだと思います。劣っている部分は結構あるけれど、代表のパスのスキルとかは勝てるんじゃないか、ラインアウトもそこそこ取っている、その辺のオプションを結構持っていると思うので、全部が全部通用しないというわけじゃないですよね。

勝っているところをしっかりと出しながら、いかに劣っているところをカバーできるか、まったくチャンスがゼロというわけじゃないと思うので、これから相手を見てやっていきたいと思います。前のワールドカップのときに、パスのスキルやスピードとかは負けはしたけれど、他の部分で通用していたところもいっぱいあったと思うのでそういうところを出しつつ、ヘッドコーチが新しくフランス人になったことを考えると、そういう部分をプラスして、食いついていけたらなぁと思います。

—— そのフランス人のヘッドコーチ(ジャン-ピエール・エリサルド)は選手から見てどんな人ですか?

ヘッドコーチは、日本のいいところはもちろん残しつつ、それにとらわれないと言っています。何て言ったらいいのかな。実力はやっぱりあるという言い方をします。出来る能力があるんだよということです。日本人だから手堅く細かいラグビーをやらなければいけない、というだけではなくて、グラウンドを大きく使って、ダイナミックにやろうと言っています。スクラムとかも結構練習しているんですが、いままでの日本チームだと細かいやり取りがありましたが、いまはすぐに先ず組もうとなって、日本でいままで組んできたものはゼロにしよう、という感じになっています。

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—— チームに持って帰ってくるものもありそうですね

スクラムとかラインアウトとかバリエーションの組み方とか、その辺り使えるものはぜんぶ持って帰ってこようと思っているし、サインプレーとか細かいテクニックとか、あれば持って帰ろうと思っています。選手生活もそんなに先は長くないと思うので、いまはせっかくのチャンスなので、来年のワールドカップ出場を目標にやっていきたいと思います。

◆細かい仕事でかかわって行きたい

—— チームのスタートから少し遅れて合流しましたが

細かいことはまだ聞けていない部分もありますが、今年はこうやっていくというスローガンのアライブとか、アタックにしてもディフェンスにしても、生き残ろう、そのためにボールを動かし続けて、立ったままプレーしようとか、オプション対応とか、細かいプレーのコールの仕方や基本的なことを教えてもらったので、もっと深いところは合宿に向けて、頭の中に入れておかなければいけないな、と思っています。

—— 自分のことはどんなプレーヤーだと思っていますか?

フッカーって、結構特殊なポジションで、専門職だと思っています。スクラムリーダーだし、ラインアウトは投げなければいけないし、プレー的にはフランカーまでとは言わないけれども、それに近いものを求められると思います。ここのところずっと代表に行ったりとかを含めて、いろいろと経験してきて、セットプレーとかはある程度自信になってきているので、あとはディフェンスですかね 。

—— チームでの役割は?

今年のチームは球を動かしながら、もちろんアタックもディフェンスもアライブし続けようという感じですね。僕はボールを持って突進するタイプではなくて、ボールを持っている人のサポートだったり、うまくつなぎ役をするタイプですので、目立たなくても見ている人が、うまいことやってるな、って気づいてくれるプレーをより多くできればいいなと思ってます。

今年やろうとしているラグビーは、絶対そういう仕事をしないとアライブし続けられないし、ボールも動かないと思うので、細かい仕事で関わっていけたらと思います。常にセットプレーを安定させるという大きな仕事があって、その辺を中心に心掛けてやっていきたいですね。

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◆ウイングで出たのが初めての試合

—— ずっとラグビー一筋ですか?

小学校3年から柔道をやっていました。もともと柔道は兄貴がやっていたのを見ていてやりたくなって、学校の柔道場に行き出したのが始まりだったんですが、地区の大会で女の子に押さえ込まれて負けて、やめました(笑)。たしか1歳上の子だったと思いますが、オレには向いてないなと思って、バスケットボールを始めました。

バスケは中学までずっとやってました。他のスポーツをやろうとはまったく思わなくて、バスケが面白くて続けていました。ただ親父がもともとラグビーをやっていて、地元で不惑チームを作っていたんですが、日曜とかやることないんだったら来い、と言われてついていって小・中学校の期間やってました。日曜の朝とか柔道やバスケの方は何もないんで、体を動かしたりボールを蹴ったりするのが面白かったんで、日曜だけやっていました。

そのころ中学のラグビー県選抜チームが東北の遠征に行っていたんですが、親父が協会の人と知り合いだったこともあって、Bチームに入ってやってみるかって言われて、ウイングで出たのが初めての試合でした。グラウンドへ行って入れてもらって、何もわからない状態。ボールを持ったら走り、相手が来たらタックルすればいいっていうやり方でしたが、体をぶつけてタックルするのが面白いなぁと思い始めて。それで高校(山形中央)でラグビー部に入って、それからはずっとラグビーで、ずっとフッカーです。

—— サントリーに入ったのは

薫田さん(真広/東芝府中監督)や坂田さん(正彰)たちが日本代表でやっているのを見ていて、すごいなぁ、行けるんであればこんな人たちのプレーを近くで見たいし、強いチームでやりたいと思っていました。それで大学(明治)の先輩が非常に多かったということもあって、ラグビーも強くて仕事もできるところとなったらだいぶ絞られてきて、坂田さんもいるサントリーに決めました。

—— その坂田選手から学んだところは

僕は2~3年前ぐらいからゲームとかに出れるようになったんですけれど、坂田さんとはプレースタイルとかはまったく違いますが、見ているとこういうところでこう動いていて、いやらしいプレーだなぁ、自分にはないけどちょっと真似してみようとか思ったりして、いろいろ学んでます。

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◆新鮮で面白い

—— 今年のサンゴリアスはどうですか

練習内容がガラッと変わっていて、実際にやってみるとわかるんですが、僕らに必要なところを徹底的にやっていると思います。新鮮ですね。面白いなぁというのが率直な感想。練習日程は結構タイトですけど、そこはやっていかなきゃいけないところだし、僕だけでなくみんな頑張ってますからね。代表合宿にいたときから聞いてましたし、実際戻ってきて雰囲気が良くて、すごく入りやすかったですね。

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—— ラグビー面白いな、と思う瞬間は?

タックルしたときとか、うまく決まって、相手チーム選手を倒したり、体の大きい外国人を倒したりしたときは、面白いですね。

—— お酒が好きだと聞きましたが

嫁さんも働いているんですが、僕は練習場で夕食を食べ終わっているので、嫁さんが帰ってきて1人でご飯を食べている横に、ただ座っているわけにもいかないので、たまにビールを飲んだりしていますし、チーム内ではプロップでの飲み会があったりします。いろいろ失敗談はありますが、それを話すとまたすごく長くなるので、これくらいでお願いします(笑)。

(インタビュー&構成:針谷和昌)

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