2006年6月 8日
#19 早野 貴大 『頂点に登りつめた6年前と似ている』- 2
◆親父がラグビーにハマってる
—— ご家族も運動が得意とか
両親はスポーツが得意ですし、いちばん上に姉もいますがバスケットをやっていたし、兄は最初野球やっててラグビーですから、スポーツ一家ですよね。兄は野球もラグビーも非常に上手かったんです。いまでもクラブチームでラグビーをやっていますよ。
—— じゃあお兄さんは弟がこうなるとは思ってなかったのでは
思ってなかったでしょうね。兄にとってみれば、いつまでも同じ弟なので。
—— ご家族は試合の応援にいらっしゃいますか?
千葉に住んでいる兄は1年に1回ぐらいですが、山梨に住んでいる両親、というか親父と姉は9割5分の確率で応援に来てくれます。どこまで来るんだよ、って感じですが、親父は息子がやっているからというより、普通にラグビーが好きになっちゃったんです。仕事も一段落したので、もう結構、趣味の世界に入ってきてます。僕がラグビーやめたらどうなっちゃうのかな、と心配になるほどラグビーにハマってるんです。
—— 今年の目標を聞かせてください
怪我しないようにプレーして、チームのためになればいいかなと思っています。チームのためになるというのは大まかな意味ですけれど、試合に出て役に立つのかもしれないし、試合に出なくても練習などで役に立つということもあると思います。漠然とやっていたら意味ないじゃないですか。ここまでラグビーをやらせてもらってるんで、その意味を今年は考えてやっていければいいなと思っています。
◆楽しく過ごしたい
—— 会社の仕事とラグビーの両立は大変でしょう?
単純に、時間が足りません。仕事の内容が大変とか肉体的にきついとかでなくて、時間がない分、いろんな方々に仕事をお願いして迷惑をかけている部分があります。それと、家にいる時間が少ないというのが、いまいちばんの心配です。
—— 奥様のことを聞くのを忘れていました
試合は見にくるけれど、いつも後半に来ます。1試合ぜんぶは見ていられない、って言ってます。いい意味で。だいたい僕が後半の10分、20分で交替するので、正味20分ぐらいしか見ていませんね。
—— 結婚されたのは
4年前?いや5年半前かな?2000年の10月に結婚したので、5年半前ですか。
—— 間違えちゃうと、マズイですよね(笑)
いや、そういうことは気にしない人です。
—— 仕事をやっていて面白いときってどんなときでしょうか
営業をやっていますが、人との関わりのある仕事ですから、人対人の信頼関係ができたときが、営業冥利につきます。信頼関係ができれば、時間がなくてそんなに頻繁に会えなくても、電話とかで話したりすることで仕事できますから。
—— 将来の夢は?
大きな意味で、楽しく過ごしたいですね。仕事で何をしたいかとか、どこに住みたいとかではないし、将来何をしているかいまは想像がつきません。とにかく、無理して何かすることはしたくないので、それがいまのところ、妻と私と犬一匹の3人、人(にん)と言いますがその3人で楽しく過ごしたいと思います。ことし4歳になる柴犬ですが、かわいくて仕方がないんです。
楽しく過ごすためには、いろいろと苦労もあるし、やらなくちゃいけないこともあるでしょうが、そのためなら何でもやっていこうかなと思っています。
◆顔が違う、目が違う
—— 高校からずっとやっているラグビーの魅力は?
ラグビーはみんなでやっているスポーツ、団体スポーツです。まだ全般的に日本の中で人気のないスポーツかも知れませんが、見ている方たちにとって、僕らのプレーがいい意味、悪い意味で影響を与えるスポーツだと思います。
気持ちの面やバックボーンがすべて出るスポーツだと思うんです。それによってチームのファンの皆さんと、上を向いたり下を向いたりする、わかり易いスポーツだと思いますし、そういうところに自分をおいてやるのが楽しいと思います。
—— すべて出るのは何故なんでしょう?
苦しいときに何ができるかとか、見ていて一目瞭然だと思います。それは勝ち負けではなく、表情でしょうね。負けたときに妻に言われました。顔が違う、と。試合中の顔が、東芝とか三洋とかNECとかの強いチームの選手と違う、目が違うってよく言われました。
◆3年間の悔しさ
—— 奥様はとてもいいメンタルコーチですね
いつも勇気づけられています。彼女も僕の中のバックボーンのひとつですから、がんばりたいですね。バックボーンには、選手1人1人の家族もあるでしょうし、会社の仕事もあるだろうと思います。
—— これまでで忘れられない試合、プレーやシーンってありますか?
忘れられない試合は、ウェールズ戦ですね。勝っちゃった試合で、僕は80分間出ました。結構、点を取れて最後は45-41だったと思いますが、もの凄いスコアですね、いま考えると。あの試合は異空間にいるようで、後にも先にも僕自身とてもよく動けたので、ビックリした試合でした。印象的です。
忘れられないプレーは、2000年に神戸製鋼に大逆転負けしたときのトライです。インジュリータイムに僕が大逆転トライをして、さらにトライされ返された試合。天と地。自分がトライをしたときは、やってやったぞ!と思いました。当時の神戸は強くて、神戸を倒そうとチーム全体でやっていて、いまとすごく雰囲気が似ているんです。そうやってみんなでやってきたことに背中を押されてトライ、泥棒のようなトライ(笑)をしたんですが、最終的にうっちゃられた。
試合後は、満足感と悔しい思いとが入り交じって、あそこで勝っていたら、その後どうなっていたかわからないという試合でした。その悔しさがあったからこそ、次の年、その次の年と、優勝できた訳ですから。それで悔しさもチャラになったので、それからまた、そういうものをいろいろ探している感じです。
でもこれまでの3年間の悔しさが背中にあります。それがまたクリアできたら次へ、という感じですが、6年前に頂点に登りつめたサントリーと、いまのチームがよく似ているんです。だからいまとても楽しいですよ。
(インタビュー&構成 針谷和昌)