SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2006年6月 6日

#17 坂田 正彰 『怒らない、口に出して言わない、泣きじゃくらない』- 2

◆体の左右のバランスのトレーニング

怪我をして足のリハビリをずっと継続的に続けていましたが、筋力的にどうのこうのというより、体の左右のバランスのトレーニングに変えていきました。ウエイトも重いものを挙げるのではなく、重心を真ん中に保ちながら自分の体をコントロールできるようにするとか、単に体をつくるだけではないトレーニングですね。スクラムも前に前にというだけでなく、横にもバランスを保てるようにコントロールできる自分の体をつくるというようなことです。

26歳の時に結婚しましたが、食べるものも1日に何品目以上という形で、量よりも種類を多く作るという気遣いをしてくれるので、食生活が偏らないようになりました。カレーならカレーだけ、というそれまでの食事から、ほうれん草もあって、魚もあって、肉もあって......というメニューですね。

—— 念願のワールドカップにはいつ?

99年のウェールズにも行きましたし、2003年のオーストラリアにも行きました。99年の時に初めて行って、試合の途中から出たりしていましたが、地元であり本場であるウェールズと試合をしてみて、ラグビーに対する人々の受け止め方や考え方が、日本と世界では大きく違うということを感じたし、そこに行っただけで満足という感じでした。

坂田 正彰_画像6

ウェールズと試合をして、相手は赤いジャージなんですが、街中も赤ばかり、小学校の子供たちも赤い服を着ていて、みんなが赤い服を着て試合会場にやって来て、ちょっと想像できないような試合会場になるんです。みんなで歌を歌って、サインのコールも聞こえないぐらいだし。

それとサモア、アルゼンチン、ウェールズと試合しましたが、ぜんぶフォワードが強くスクラムが強いところでした。なんでこんなに体格的に違うんだと思ったし、90kg、100kgのレベルではダメなんだなぁとも思いました。それで体重増やそうって、一緒に経験した(長谷川)慎さんたちとがんばって、2003年ではスコットランドとフランスとの試合では、99年みたいにスクラムがまったくダメだ、というのとは違ったし、楽しみながらできた気がします。

僕自身は体重を増やすというよりも、体脂肪率が変わるなど、中身が変わったという感じです。2003年の時は、サンゴリアスのみんなもフランス戦に応援に来てくれたし、いい試合もできたと思います。

◆1年間闘える体づくりをする

—— 今年の新サンゴリアスはどうですか?

チームとしてやることとか、個々のやらなくちゃいけないことの設定は、まったく変わって来ているので、対応してかなきゃいけないと思います。僕は去年リザーブで試合に出ていなかったのですが、終わりに近づくに連れて体的(からだてき)には調子良くなってきていましたので、もう一度、1年間闘える体づくりをするのが、いま一番のテーマです。

今年は新しいことをやるので、みんな反応しよう、対応しようとしていますし、初めての(部内)ゲームでも、そういうことをやろうという意志を持ってやっているし、これから夏に向けてまだまだ良くなっていくだろうから、自分も良くなっていかなきゃいけないと思います。練習が毎日あるからシンドイですけれどね。

—— 去年はもっと練習が少なかったんですか?

去年は週3日と1日という感じでしたが、今年はウェイトと練習とぜんぶ一緒にやりますし、環境的にも変わってきて、つらいこととかはいろいろあるけれど、若い時のようにだからどうこう文句を言うようなことはありませんね。今年入ってきた新人もほとんどが大学でキャプテンやバイスキャプテンだった選手ですし、チーム内に元キャプテンも多いですし、1人1人個性があるのがいいところであり、またその中で協調性を持って上手くチームがまとまっていければいいのではと思っています。

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チームスローガンの"アライブ"は、みんな意識しているし、できていなくても口で「アライブ」と言っています。これはディフェンスで倒れないで動き続けたり、ディフェンスが減らないようなまた行けるという動きがあったり、言葉だけ口だけのキャッチフレーズでないということが分かった状況でやっているから、素晴らしいことだと思いますよ。

◆怒ったりしない

—— いままでで最も印象に残る試合とかプレーは?

奥さんによく「感情ないね」って言われるんです(笑)。怒ったりしないし、感動はするけれどそれを口に出してみんなに言ったりはしません。中学、高校といろんな環境でやってきたので、そうなったのかもしれないんですが、プラスの時も黙ってやるし、マイナスの時も黙ってやるし、いつも淡々とやるところがそう思われる原因なのかも知れません。嫌なことも嫌なのかもしれないけれど、サササッとやっちゃうとか...。熱くならないですしね。やってることが結果に残ったりすれば嬉しいですが、優勝して泣きじゃくるとかはしませんしね。

—— その分ずっと情熱を持ち続けられるのでは?

そうですね、だからずーっとできるんだと思います。起伏があったらシーズンは長いし、しんどいと思います。若手にどういう精神状態でやっているんですか?なんて質問されることもありますが、どこにピークを持ってくるとかいうのではなく、オーバーヒートしないような状況に調整しながらやっているよ、なんてストレッチしながら話すこともあります。

自分に対してはこだわりがありますから、タイムが年々落ちてくるのは嫌だし、自分自身の納得や満足に関わることですから、そこはヒートするなどコントロールしているんでしょうけれど、何か人にされてもそこでは何もしない、という感じでやっています。相手が怒るってことは、自分が嫌なことをやっている訳でしょう。蹴られてもしょうがないことをやったから蹴られるんであって.....。そしてそうやって怒ったことで、相手のスタートがワンテンポ遅れたら、それはマルな訳ですしね。

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高校時代はラグビーだけでなく全寮制だったので、夜中じゅう起きていなきゃいけなかったり、夜中にいきなり魚釣りに行かされたり、帰宅部もいたりして、とにかくいろんな奴おるなぁ、という発見の連続でした。法政大学は噂のようなイジメもなかったし、いろいろと経験したのは高校でした。ラグビーしたかったから入った高校にいろんな人がいて、まだ大人になる前の経験ですから、そこでいろいろあったことから、強くなれたのかも知れません。

—— じゃあその頃の友達とは今でも交流があるのでは?

ラグビー以外の他の部の奴とかともありますね。同期には県内の人たちも多かったけれど、大阪や東京から来た奴らが、10人ぐらいはいました。自分にとって滋賀県は嫌な想い出だし、京都は水泳しかないし、それと比べて松山はふるさとみたいな感じ、松山に帰るわ、みたいな感覚なんですよ。

(インタビュー&構成 針谷和昌)

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