2006年5月 1日
#9 サイモン メイリング 『集中! サイモン メイリング』
◆ニュージーランドでメジャーなスポーツ
—— ラグビーを始めたのは何歳の時?
たぶん8歳(*「たぶんハチさい」と日本語で答える)。それまで何年かサッカーをやっていたんですが、ラグビーはニュージーランドではとてもポピュラーなスポーツであり、学校が変わった時にそこにラグビーチームがあったので、自然とやり始めました。もしかしたら始めたのは8歳より前だったかもしれません。
—— その時のラグビーの印象は?
やってみたら、楽しかった。サッカーもラグビーもどちらも楽しいですが、ラグビーをやっていくうちにたくさん友達ができたし、試合をしていても楽しい。ラグビーはニュージーランドではとてもメジャーなスポーツ。やっている人も多く、ラグビーをやってたくさんのことを知ることができました。他のスポーツも見るのもやるのも好きですけれど、自分でいちばん気に入ったのがラグビーです。
—— もう少し詳しく気に入ったところを教えてください
たくさんの友達がやっていて、多くの人が見ているし、走ってパスしてキックもあって接触するところが、サッカーと違うところだと思います。その頃から背は高かったですが、例えばぶつかり合うのが好きだとか、そんなにちゃんとした理由があったのではなく、なんとなく好きになっていきました。
—— ニュージーランドはシーズンによってやるスポーツが違うんですか?
冬だけラグビーをやります。夏はクリケット、それから野球よりもソフトボールをやっています。あとローイング(ボート)とウォータースポーツ。夏のナンバー1スポーツはクリケット。ローイングもかなり好きでしたが、年間を通したらもちろんラグビーがナンバー1でした。
—— ラグビーをスペシャルスポーツとして選んだのは何歳の時?
18歳です。ニュージーランドの高校生のジュニア・ローイングチーム代表に選ばれたんですが、それを続けるには学校を変わらなければならないということになり、ローイングをやめたんです。大学ではローイングの未来が見えなかったし、朝早くトレーニングするのも、とっても辛かった(笑)。それで大学でラグビーに絞りました。大学では、できる限りちゃんとラグビーをやっていましたが、一生を通してラグビーをやるとは、まだ考えていませんでした。
—— 大学(オタゴ大学)では何を勉強していたんですか?
マーケティングを勉強しましたが、とくにしっかりした将来のプランがあって、マーケティングを勉強した訳ではありません。
—— ラグビーに専念しようという気持ちになったのはいつからですか?
U21のニュージーランド代表に選ばれたのと同じ年に、シニアのオタゴ州代表にも選ばれました。そうやって選ばれたことによって、ラグビーを本格的にやっていくのかな、と意識してきて、ラグビーを更に真面目にやるようになりました。ですからこの時は大学で勉強していても、ラグビーを考えている時間が多くなりました。
それまでも努力してプレーしていましたが、人生をしっかり考えたのがこの時です。20歳でした。卒業してオタゴ州代表チームとスーパー14(※1)のハイランダーズ(※2)の2つのチームで、1年の半分ずつプレーしました。つまり1年を通じてラグビーをやっていたのです。オタゴ州代表としてニュージーランド国内の大会に出て、ハイランダーズとして、3つの国のクラブチームの大会に出て、ニュージーランド、南アフリカ、オーストラリアのチームと試合をしました。
※1:スーパー14
1996年に始ったラグビーのニュージーランド、オーストラリア、南アフリカのトップチームによる対抗戦「スーパー12」が、今期から「スーパー14」に変わった。南半球最強チーム目指して迫力ある試合が展開されるリーグ。最近3年間の優勝チームは、03年ブルーズ、04年ブランビーズ、05年クルセイダーズ。 ◆2006.4.16(第10週終了時点)現在の順位
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※2:ハイランダーズ
HIGHLANDERS 。スーパー14に所属するニュージーランドのチーム。本拠地は DUNIDEN(ダニーダン)でホームスタジアムは Carisbrook。03~05年度シーズンの結果はそれぞれ7位、9位、8位。 |
—— オールブラックス(ニュージーランド代表)にはいつ?
この2つの大会をもとに、26歳の時にオールブラックス(※3)に選ばれました。オールブラックスは、オタゴ州代表やハイランダーズでやっていた時の夢であり、大きな目標にしていたので、選ばれてとても嬉しかった。
※3:オールブラックス
ラグビー・ニュージーランド代表チームの愛称。ユニホームは上下とも黒。試合前のマオリの出陣の踊り「ハカ」を行うことで知られている。 |
—— オールブラックスとして最初に試合に出た時のことを聞かせてください
ヨーロッパへ行って試合をして、勝ちました。この最初のツアーでは、あまり試合に出なかったんですが、それでも楽しかった。次の年のトライネーションズの大会(※4)では、南アフリカ代表とオーストラリア代表と試合をしました。
※4:トライネーションズ
南半球の強豪国、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカの3か国代表によるリーグ戦。 起源は正式な3か国対抗戦としては99年前、96年シーズンから「スーパー12」とともに始まった。 ◆歴代優勝チーム
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—— オールブラックスのラインアウトの方法をあなたが作っていたと聞きましたが
ラインアウトにかかわっているプレーヤーみんなで作っていました。みんなが参加して、サインプレーを作りました。
◆何かを変えたかった
—— 日本に来た動機は?
ニュージーランドで何年かプレーしていて、変化が欲しくなったんです。何かを変えたかった。選択肢はヨーロッパか日本でしたが、友達が日本に来ていたし、姉と妹も日本語を勉強していたし、いろいろ考えて日本に来ようと思いました。すべてが違う文化、新しい試合、ニュージーランドとはまったく違った環境へ移ってみたかったんです。
—— 日本は初めてだったんですか?
はい、初めての日本でした。ニュージーランドのTVで東京の街が紹介されていて、新宿とか渋谷とかが出てきましたが、日本の地理はまったくわからず、何いってるんだろうなぁと思いながら見ていました。そのTVを見た感じでは、日本はコンクリートジャングルだと思ってました。来てみて違いましたが、もっともっとコンクリートのイメージが強かった。来るまでは、東京のすべてがコンクリートでできていると思っていました(笑)。
飛行機を降りたあと、想像とは違う場所が広がっていて、ビックリしました。緑があって、街もとても奇麗でした。この広い東京をすべて回ったりする時間もありませんし、日本は人の数が多過ぎて、すべてやることに時間がかかるという印象もありますが、いまは慣れてきたので、まったく問題ありません。
—— 結婚されていますか?
独身です。ニュージーランドから一緒に日本にきたガールフレンドがいます。ルーシーというニュージーランド人です。日本に来て、幼稚園の英語の先生や、個人レッスンもやっています。日本に来るときには彼女ともよく話しましたし、両親や親戚とも話をしました。みんな、やりたいことをやるのが幸せだ、といってくれました。
—— プロ選手になったのはいつですか?
大学のときです。1997年からプロとしてやっています。
◆違いはストラクチャー
—— ニュージーランドと日本のラグビーは違いますか?
結構違います。日本は展開が速いのが特徴で、ニュージーランドは日本より遅いけども、そこにストラクチャー(組立て・組織・構造)があります。ニュージーランドのラグビーは前を見て前にいくラグビーですが、日本はフィールドの全体を使って、右から左、左から右に動きます。ニュージーランドの方が試合の中に強いストラクチャーがあります。
ニュージーランドと日本では、ボールが出てくるタイミングが違うレベルにあります。もっと日本のゲームにもストラクチャーが必要ですが、トップリーグが始まった頃と比較すると、日本にもストラクチャーが少しずつ出てきました。これから日本も国際的なチームとして育っていくと思います。
—— もう少し「ストラクチャー」について説明してもらえますか
ゲームプランです。ニュージーランドではフィールドのどこにいるかという位置によって、チームが何をすべきかが決まっています。ストラクチャーを作る目標に向かって、いろいろな選択肢があります。ニュージーランドはディフェンスがしっかりとしていて、それを突破するためのストラクチャーが必要となります。日本はディフェンスが弱いと思います。パスして走り回ることで、ニュージーランドは日本を突破することができます。
でも日本も少しずつディフェンスができてきて、ストラクチャーもできてきていると感じています。トライをするためのストラクチャーもできているし、チームとして何をしたらいいか、東芝やNECなどはちゃんと決まっています。何をやりたいかを全員がわかっている。そういう点で日本もよくなってきていると思います。
—— 今年の目標は?
トップリーグの優勝、日本でいちばんになること。個人的には自分がチームの中で何ができるかを考えて、ベストなプレーをしていきたい。サンゴリアスが日本で1番いいチームになるために貢献したい。長い道であるけれど、東芝やNECに追いつくために、サンゴリアスはこれまでと違うことをこれからやっていくので、きっとチームはよくなると思います。
—— あなたの性格は?
カジュアル(※5)でリラックスしていると思います。
※5:カジュアル=無頓着な・呑気な |
—— 最後に、好きな言葉は?
「ヤバイ」(*これはいい言葉?悪い言葉?と近くにいた山下主将にしきりに聞く)。
「がんばりましょう」「集中」。みなさん、がんばりましょう!
(協力:中村 直人、西久保憲太郎/取材・構成:針谷 和昌)