SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2006年4月28日

#8 小野澤 宏時 『ボールを持ったらどこからでもトライを取りにいく』- 2

◆負けるのは嫌

—— ハートは熱い方ですか?

僕は敬介(沢木/*インタビュー中に横を通りかかる)さんの次に熱いんじゃないですか?(笑)サントリーでも馬車馬のように走りますから。このスタンドオフ(沢木選手) が呼んでくれれば、いつでも走っていきます。僕はこの人の下で働いて6年、今年で7年目になります。

*たまたまこの日が沢木選手の誕生日で「おれ、今日誕生日」(沢木)「おめでとうございます、幾つになったんですか?」(小野澤)「31歳、お前は?」「2週間前に28になりました」「お互いいい歳だな」の会話あり

—— 熱いってことは負けず嫌いですね

負けるのは嫌。趣味のことで負けるのは嫌です。

—— ラグビーは趣味?

ラグビーは趣味です。お金を払ってくれている会社には申し訳ないけれど(笑)、ラグビーは趣味です。趣味でないと頑張れない。趣味だからウェイトもするし、負けたくないのはTVゲームと一緒ですよ。

小野澤 宏時_画像1

—— 山下大悟選手は小野澤さんの横でウェイトでも張り合ってるっていってました

大悟にはそういうものを凄く感じる。今も大悟は怪我のリハビリ中で、自分はできないけれど僕がやっている横で「僕、これ昔挙げましたよ」なんていう。こんどそれ以上挙げてやって、あいつの悔しがる顔が見たいなぁ(笑)。大悟はだからいいんじゃないですか。みんなそうであってほしい。最近、強い人は強いなぁ、とその部分で諦めてる選手が多かった。

その点、大悟は強い。新田さん(博昭/フィットネス&ストレングスコーチ)が、現状はこれでいいんだよ、と止めても、いや、過去にこれ挙がってんだからヤダよって頑張ってる。そこにこだわらなくてもいいのでは?と思うところですけれど(笑)。

—— 最も印象に残る試合を教えて下さい

好きな試合は2年目のウェールズに勝った時かなぁ.....。1つの国のクラブチームが、国の代表に勝つという試合ができた。相手が正規じゃないといったって、勝ったもん勝ちでしょう。サントリーが逆転トライをする前に、ウェールズに逆転トライを決められて、キャプテンだった直弥(大久保)さんがみんなに檄を飛ばしたら、誰もあきらめてないぞ!とみんないい返していた。

それぐらいの勢いのあるチーム、強気、勝ち気のチームだった。相手うんぬんより、自分たちのラグビーを80分間できるか不安だったけれど、そのために練習しようといってやっていたチームでした。先手を打てて、勝ち気で80分闘いたいですから、しんどいですけれど、以前は走るのが得意な人がたくさんいました。

—— ラグビーを始めたきっかけは?

父親がラグビーをやっていて、僕が子供の頃も父は県内のクラブチームで趣味としてやっていました。ラグビーがある県内の中学は2つだけ。試合すればいきなり県の決勝戦です(笑)。基本的に好きなことをやらしてくれましたが、部長の先生が父の知り合いということもあって、入った中学にせっかくラグビー部があるんだからやってみるか、という感じで始めました。

—— それからずっと続けているラグビーの魅力は?

小野澤 宏時_画像2

団体競技でありながら、非常にシンプルであること。スクラムやセットプレーに専門家がいるし、凄い奴が全員を抜ければいいとしてもそうもいかないし、戦略や戦術面も奥深くからんできて、体が大きくなればスピードが落ちることもあり、全てのことに矛盾があって複雑でありながら、相手チームが組み上げてきたものを1人で壊せるシンプルさもある。そしてラグビーには見えてきたと思った途端に、壊されるものがあります。

サントリーがキックを蹴らずに自陣からボールを回してばかりいたので、7人制ラグビーはトライを取った側が次のキックオフをするけれど、15人制もトライを取った側がキックオフするようになるんじゃないかなぁ、なんて社会人になったのに本気で思ったこともありました(笑)。そういうラグビーをやって成長してきて、ラグビーにはいろんな方法論的なものがあるというのもわかって、面白いですね。

—— 魅力は中学時代からずっと一緒ですか?

中学の時とは違います。中学の時は、ボールを持って1人で走ったら、それでいいでしょ。ボールを持つのが好きで、ボールを持ったらどこからでもトライを取りにいきたかった。

◆ビックリするようなことを見せる

—— 今年の目標は?

チームは日本一。個人的には余り大きな声ではいえないけれど(*本当にひそひそと)、相手のディフェンス力も上がっていますが.....1人でラグビーできるくらい強くなりたい。そういうとみんな鼻で笑うけれど、抜け切りたい、全部抜きたい。その目標に向かって今、最短ルートでトレーニングしています。

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—— その最短ルートとは?

それは新田コーチのストレングスです。できればグラウンドへ出るまでの準備を120%したいなと思っているんです。グラウンドに出てしまったら、自分のフィジカルがどれだけ出せるかが勝負であり、その上でスキルを学んでいくという練習になります。その前に、自分1人でいかに強く、速くなれるか。このトレーニングで、そのための用意ができるのではないかと思っています。

新田コーチと始めて3年目ですが、どんどん良くなっています。やっていけばいくほど、あの人がいうことがわかってくる。動きというのは1つの直感的な動きだけではなく、連動性を持っています。ストレングスの「クリーン」というやり方は、このタイミングで力を入れればいい、というのではなくて、やりながらタイミングをつかんでいくというものなんです。言葉ではなかなか上手く表現できませんが、3年目になって、なるほどね、という部分がとても多くなってきました。(※2=*本インタビューの最後をご参照下さい

—— 海外について

行けるんだったらいってもいいかな、というぐらいな感じです。でも果たしてそれが自分を上手く強くしてくれるのかな?と最近は思います。海外という環境が自分を強くしてくれるとは思わないし、日本にきた外国人選手がチームにフィットしているかといえば、誰もが凄く良いとはいえません。海外へぜひ行きたいという、そこまでの憧れ感もないし、行っただけでどうにかなる訳でもない。

逆に行かなくてもどうにかなる場合もあります。海外が上だとは思っていないので、チャンスがあったら行ければいいなぁ、というところです。日本ラグビーを証明するには、選手個人が海外に行くことではなくて、代表を強くすることだと思っています。

小野澤 宏時_画像4

—— ファンへのメッセージをお願いします

グラウンドに足を運んで下さい。練習の時、どんな練習をやっているのか、でもいいし、TVじゃ伝わりきらないので、試合の時にグラウンドにきてくれれば、ビックリするようなことを見せられると思います。ぜひ応援にきて下さい。

—— 最後にご家族のことを

結婚していて小さい息子がいます。謙真(けんしん)といいます(*と言いながら、自らインタビュアーのノートに 謙真 と書いてくれました)。我がドラゴンズ(プロ野球・中日)のエース、川上憲伸と字は違うけれど同じ名前です。川上は背番号11、僕の好きなカズ(プロサッカー・三浦知良)も背番号11、僕も背番号11です。嫁のお父さんが、大洋ホエールズ(現・横浜ベイスターズ)の竹内(広明)というドラフト1位のピッチャーだったんです。僕の父もラグビーをやっていた訳ですから、隔世遺伝したら息子は凄いスポーツ選手、プロ野球選手になれるんじゃないかと、思っているんです。凄い楽しみです(笑顔)。

 ※2:「クリーン」を新田博昭コーチに訊く

「ウェイトリフティングでバーベルを挙げるクリーン&ジャークという動きの中のクリーンの部分のことです。地面にあるバーベルを持ち上げて胸のところで止めるところまでを『クリーン』と言います。

足の力を地面に伝える力が、スピードだったり強さになったりするのですが、このバーベルを挙げる時の足の動きが、ジャンプしている時と一緒の動きなのです。作用、反作用の法則ですが、140kgの力を地面に伝えるから、140kgの力が上への力となってバーベルが挙がります。

このとき使っている足の筋肉と、走るときに使う足の筋肉の動きのパターンが、すごく似ていることを利用したトレーニングの方法です。元は旧ソ連が崩壊して、なぜソ連があれほど強かったのかの情報が、研究者たちからでてきて世界で研究され始めました。」

(インタビュー&構成 針谷和昌)

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