2006年4月20日
#5 浅田 朗 『日本一になる時にグラウンドに立っている』- 1
◆逃げないという気持ち
—— バイスキャプテンに指名された挨拶で、10分前に知りましたと言ってましたが
最初何かなって思って、スタッフ的なことをやれということで、永島さん(茂樹/主務)の手伝いみたいな形かなと思っていたので、バイスキャプテンと聞いてビックリしました。僕の中ではサントリーで7年間やってきて、そういうのに選ばれるという考えはまったくなかったんです。
—— 学生時代からそういう役目はあまりされてこなかったんですか?
中学の時はバイスキャプテンで、高校、大学ではキャプテンでした。けれどもサントリーの中では、そういうキャラクターというか、そういう立場になかったので、7年間やってまさかそういう役を期待されるとは思わなかったので、ちょっと戸惑いました。それがモチベーションになるとか、バイスキャプテンだから頑張る、というのはないですが頑張ります。
—— 今年の目標は?
日本一を取る。それしかない。自分自身はバイスキャプテンとかでなく、先ず試合に出られる様にみんなと競争します。1人1人、全員がそうすることでチーム内に激しいポジション争いが生まれ、全体のレベルが上がっていくことが目標となります。その上でグラウンドに立っていられればいい、決勝の時にグラウンドに立っていれればいいなと思います。
基本的に日本一を取る、そして日本一になる時にグラウンドにいる、これは毎年変わらない目標です。
—— そのための始動は?
今トレーニングしているところですが、先ず体を作り、体が出来た上で、自分としての特徴をいかそうと思っています。それはセンター(※1)としてのタックルであり、そしていろんな仕事を正確にこなすということですので、それらのレベルを上げていきたいと思っています。
※1:センター=センタースリークォーターバック(CTB)
—— ご自身の特徴をもう少し具体的にお願いします
いちばんは逃げないということ。それが基本中の基本で、気持ちの部分です。そしてタックルに行くポジションに先ず行くということ。タックルをしないと思えば行かなければいい訳で、自らそういうポジションに走っていくとか、すぐに起き上がるとか、タックル以前の基本を持った上で、抜かれない、外さない、それが出来た上で、前へ出る。そのおおもとは、間違いなく気持ちなんです。
もともと僕は身体能力が高くないし、何かが上手い訳でもなく、気合いだけでやってきました。それを前面に押し出してやるのが自分の特徴です。自分が抜かれるかもしれない、そうしたらチームメートの信頼が失くなるのが恐い。大きい選手にタックルへいく時にも多少恐いというのはあるけれど、練習でも試合でもどんな場面でも、体を張らないといけない場面にいける選手でないといけない。そこにいけない選手というのは信用されないし、例えぶっ飛ばされても立ち向かっていく選手は信頼される。
だから先ず向かっていく気持ちがあって、それにプラスして止められる肉体的強さとテクニックがあるということ。テクニックだけあっても抜かれたら信頼されないですから。
◆気持ちは本人の本当の奥から出る
—— ラグビーを始めたのは何時から?
中1からです。小学校では遊んでいて、クラブ活動に所属していませんでした。運動は好きだったので、中学(石切中学)へ入ってたまたまラグビーをやってみよう、と思ってやったら面白かった。先生があーだこーだというのではなくて、自分たちで考えてやらしてくれる先生で、僕は副キャプテンだったので自分で練習を考えて、自主的にラグビーに取り組みました。個人もチームも、どうしたら強くなるかというのを、そういう放任主義の指導者でしたので、身につけることができました。
—— ラグビーのどの辺が面白かったんでしょう?
子供の頃は乱暴な方だったので、体をぶつける対象ができて発散するというのはありました。そして中1の初試合でタックルを決めた。それがハマったいちばんの原因です。小さい時から暴れん坊で、うちの親は好きにしなさいというやり方でしたが、気がついたらここにいたという感じです。
高校(布施工業高校)の時は川村先生という有名な先生がラグビー部の総監督で、あまり直接教えてもらったことはありませんが、基本重視で走り込みと姿勢を徹底的にやりました。その時の面白くない練習のお陰で、今でもちゃんとした姿勢で自然にプレーできるんだと思っています。
大学(摂南大学)の時の河瀬さん(先生)は放任でした。中学と同じで自分で考えて練習したり、コーチもいなかったのでぜんぶ自分で考えて好きな様にやったのが、良かったと思っています。先生は任せるタイプでしたので、キャプテンだった僕はぜんぶメニューを考えて、みんなの前で説明したりしました。そういう能力はその時に養われたのかも知れないと思います。
—— そういう経歴を知ると、今回のバイスキャプテンはまさに適役だと思います
やりたいとかいうのはなかったんですが、サントリーはキャプテンみたいな人たちが集まっていて、バイスキャプテンがどうするこうすると言わなくても、自分たちで考えてできる人たちだと思います。バイスキャプテンとして、あーしろこーしろと言うのではなくて、みんなと一緒に、しっかりと一生懸命にやって競争すること、いちばんそれがチームのためにもなると思っています。
—— 特徴に挙げられたタックルのコツは?
大したタックルしないから、コツも何もないです。しいて言えば、実戦を積むこと、そして自信をつけること。タックルバッグにばかりタックルしているのではなくて、人間にもタックルしないと.....。試合では人にタックルしないといけないし、何回もタックルが出来ると自信になります。
タックルの細かい技術はサントリーに入ってから教えてもらいました。それは練習を積めばできます。でも気持ちは本人の本当の奥から出てきます。生まれ育った環境とかも影響するでしょうし、気持ちを教えるのは難しい。ですのでタックルが上達する秘訣は、実戦を何回も経験して、抜かれたり止められたりしながら、自信をつけていくことです。
(インタビュー&構成 針谷和昌)