2012年12月21日
281
『逆輸入の司令塔』
こんにちは、テレビ朝日の瀧川恵です。
トップリーグも残すところあと2節。
みなさん、今シーズンのサンゴリアスの試合を見ていて、特に目に留まる選手は誰ですか?
私には、以前から取材してみたいと思っていながらも、クラブハウスにお邪魔する時は日本代表の合宿などでなかなかその機会が作れなかった選手がいます。
今年からサンゴリアスに移籍し1年目のシーズンながら、ここまで7試合に出場、目覚ましい活躍を見せるスタンドオフの小野晃征選手。スタンドオフというポジション柄、バックスへとボールを回して攻撃を組み立てたり、ときにはキックで展開したりと、“司令塔”としてボールに触る回数も多いので、皆さんの目に留まるチャンスも多いはずです。
ようやくお話しを伺えるチャンスが来ました。
「僕にとっては日本でプレーするのは、海外でプレーすると同じ。東京に来ることも、大きなチャレンジだった(笑)」
3歳から19歳までニュージーランドで育った小野選手の経歴はとっても異色。
ラグビーは6歳の時に始めました。
ラグビーがナショナルスポーツであるニュージーランドでは、ラグビー部の活動は年に6ヶ月。その他の時期には、ボートやクリケットの活動にも参加していたそうです。大学生になった時「日本でプロとしてラグビーをやりたい」という思いから、前々から声をかけてもらっていた福岡サニックスへの入団を決意し、そのために海を渡ることを決めました。
「僕にとっては日本でプレーすることは、海外でプレーするということだったんです。でも、プロラグビー選手になりたかった。」
ニュージーランドで育った選手が異なるラグビー文化を持って、日本でプレーするという新しい形、まさに“逆輸入”のラグビー選手です。2007年から5シーズンをサニックスでプレー、その間には日本代表としてワールドカップにも出場し、今シーズンからサンゴリアスでプレーしています。
「サニックス時代は福岡の宗像市という田舎で過ごしていたので、東京という都会に来ること自体、僕にとってチャレンジでした。(笑)」
サントリーというチャンピオンチームで、しかもスタンドオフというチームの中心的なポジションを任されることにプレッシャーはなかったのでしょうか?
「チャンピオンになるという目標がある」
実は、サンゴリアスで日本人選手を移籍獲得した例はこれまで一度もないのだそうです。
この移籍にどれほど大きな期待を寄せられているかが伺い知れます。
「初の移籍選手だという意味では少しプレッシャーはありました。でも、それを周りのみんなが感じてくれたので、そういう気負いを感じることなくプレー出来ました。まずはチームにフィットすることを考えていましたが、今ではサンゴリアスのスタイルの中で、どう自分の持ち味を出していくかを考えられています。」
171cmというラグビー選手としては小さな体で、大きな相手にどう勝っていくか。
小野選手の強さは?と問うと、「アジリティ(=俊敏性)」という答えが返ってきました。
サッカーやラグビーなどの対人スポーツでは、日本が世界で勝つための武器として、この“アジリティ”という言葉がよく聞かれます。ラグビー大国で培ってきた“低さ”や“瞬発的なスピード”は大きな武器になっているのですね。
サンゴリアスというチャンピオンチームに移籍したことで、さらにその強さは磨かれています。
「チャンピオンチームの中でやっているという実感は、練習から感じます。選手一人一人の意識も高く、練習の内容、精度がとても高い。自分をもっと成長させたいという思いから移籍を決めたので、まずはここでチャンピオンになりたいという気持ちがあります。活躍できれば、日本代表へもつながっていきますから。」
「いつか、日本一の選手になる」
移籍の時、小野選手はこうコメントしていました。
「5年前、来日したときに掲げた“日本一の選手になる”という目標を達成するために、日本一のチームでいっそう努力していきたい・・・」
その目標に近付くために、まずはチームで日本一へ。
“逆輸入の司令塔”がその原動力となっていることは間違いありません