2015年5月21日
サンゴリアスラグビー大辞典 #231“特別編”『ハドルその1』竹本隼太郎
チュエーションを選手が紹介します。試合前後を含めた場面場面を、選手たちならではの経験と感覚をもとに解説していきます。
「ハドル」その1(解説:竹本隼太郎)
ハドルは試合中はもちろん、練習の時から、何回も組みます。練習では練習のはじめと、いちばん大切な練習をやる前、練習の終わりにもやります。フォワード、バックスが分かれてアップする時にやり、練習では最初全員でやって、最後にも全員でやります。練習の時のハドルでは、「何を意識してやるか」を中心に話すなど、選手同士のコミュニケーションを図ります。
試合直前に組むハドルもありますね。ロッカーに戻ってハドルを組んで、キャプテンやリーダーが基本的な話をして、気合いを入れて、ロッカーを出て行きます。試合前のこの時が、いちばんチームがひとつにまとまる時です。やるべきことはチームミーティングでみんなに情報が伝わっているので、リーダーがみんなに気合いを入れる部分が大きいです。主にキャプテンが一言二言しゃべって、ひとつに固まって掛け声をかけて、ロッカーを出ます。
それからグラウンドに移動するまでに時間があるので、ロッカールームで高まった熱が、その間に少しずつ下がっていくので、グラウンドでも掛け声をかけたりします。しゃべる情報量が多いのはロッカーで、少ないのはグラウンドです。やることはその前に確認しておいて、グラウンドでは勢いをつけるためにハドルを組みます。掛け声で「ひとつになる」ことを目指します。掛け声は毎年決めるので、毎年違った掛け声になっています。
相手がトライを決めてそのあとのコンバージョンを準備しているうちに、ハドルを組むこともあります。試合によって、あるいはリーダーによって、そこで言うことはいろいろ違ってきますが、とても大事なハドルであることは間違いありません。
こういう時の“悪い”ハドルというのは、リーダーだけではなくて思いつきで話し合ってしまうハドルです。フォワードはフォワード目線、バックスはバックス目線でチームの粗を攻める、粗があるから得点されていることは分かりきっているのに、「ここが悪い」「あそこが悪い」と、1度に3個も4個も5個もいろんなところから言う形です。
試合中、疲れている時に、1度に5個の情報すべてをクリアに理解してプレーするなんていうことは無理ですから、こういうのは悪いハドルですね。相手に得点された劣勢の時でも、あまり動揺しないで、やるべきことを1つか2つ、多くても3つぐらい言う形で情報量を抑えて、情報共有して次のプレーにつなげると、それは“良いハドル”になります。
<つづく>