2015年3月26日
サンゴリアス ラグビー大辞典 #216 “特別編”『トライ・シチュエーション その5』
サンゴリアスラグビー大辞典“特別編”として、試合の日に起こるシーンやシチュエーションを選手が紹介します。試合前後を含めた場面場面を、選手たちならではの経験と感覚をもとに解説していきます。
「トライ・シチュエーション」その5(解説:成田 秀悦)
思い出深いトライは前回お話した初めて1試合で4トライを決めた時と、もうひとつは13-14年シーズンの九州電力戦で、試合中、最初にトライした時にウォーターボーイをやっていたヒューイ(ヒューワット/現コーチ)から、「絶対あと2トライ」みたいな声を掛けられて、それに応えたい一心で、あと2トライをポンポンと取った時です。
その後にまたヒューイが「もう1トライいける?」と聞いてきて「大丈夫、絶対もう1トライいける」と僕も答えて、それでトライを取った時には、「ちゃんと期待に応えられたな」という、とても印象深いトライでした。
トライを取るには僕の中では“良いイメージ”がいちばん大事です。エディーさんからムービーを貰う前は、「こうやっていったら、痛い目に遭う」みたいなマイナスのイメージがあったりだとか、プラスのイメージもそこに交差して、ダメな時も良い時も考えるということをやっていました。最後は良い時を考えて、「こうやっていったら抜ける」というものが頭の中に描けてくるんですが、ある程度、経験を積んでからそれが出来るようになりました。
今でも悪いイメージも絶対に出てきます。悪いことも経験があるので、「こうやっていったら、こう返されたな」ということもありますから、それはずっと残っています。むしろ悪いイメージの方が、ずっと残っていきます。だから良いイメージを何とかして描こうと、今でもエディーさんの映像を見ますし、特に試合前はよく見るようにしています。後はシェーン・ウィリアムズの プレーをyoutube とかでも見ます。
試合に入ったら、そのイメージ通りにボールをもらえるように内側の選手に要求します。もらえなかったらもらえなかったで、スタンドオフに「次はこういう入り方をするから、ボール頂戴ね」みたいな感じの話をします。
2014-2015シーズンの開幕戦は、スクラムハーフとしてパスに徹したというのもありますし、最後にトライを獲ったシーンではアドバンテージが出ていて、相手の目を見た時に、まったく僕のことを見ていなかったんです。悪い方に考えて僕がつかまったとしてもアドバンテージがあるので、もう1回リセット出来るなと思って、そういう全てのことを頭の中に入れて、思い切って行けたかなと思います。僕のことを誰も見ていませんでした。
僕の中では「マークしなかったら行くよ」(笑)という感覚です。1年目の若い頃には、行き過ぎてずっと見られていたと思いますが、今は「そんな簡単に目をはずしたら行くよ」っていう強い気持ちがあります。
結局スクラムハーフでトライを要求されるのも、ウイングでトライを要求されるのも、どちらも難しいです。プレッシャーは一緒ですね。
<了>