2015年3月19日
サンゴリアス ラグビー大辞典 #214 “特別編”『トライ・シチュエーション その3』
サンゴリアスラグビー大辞典“特別編”として、試合の日に起こるシーンやシチュエーションを選手が紹介します。試合前後を含めた場面場面を、選手たちならではの経験と感覚をもとに解説していきます。
「トライ・シチュエーション」その3(解説:中靍 隆彰)
サントリーに入って思うのは、ボールの近くの数人が“動き”をしているのではなく、全員が動いて動いて、選択肢がたくさんある状態になります。その方が相手も止めにくいですし、特にサントリーはそういうチームだと思います。よく“リンケージ”と言う言葉を使いますが、“シェイプ”もそうです。全員が良い形で動ければ、どこかしら相手のディフェンスに穴が空くと思うので、そこに判断良くパスが出たらトライになりやすいと思います。
相手のキックからのカウンターや、ターンオーバーしてディフェンスをしていたのに急にアタックになって相手のディフェンスラインが揃っていない時など、そういう“アンストラクチャー”の場面では、個人の感覚で行ったりすることもあります。ですが、スクラムやラインアウトから継続してアタックする時は、割と決められた形が多いですね。7対3、8対2ぐらいで決められた形の方が多いと思います。
長い距離を走ってのトライの方が、短い距離を切り裂いて行くトライよりも難しいのかなと思います。完全に抜け出して真っ直ぐ走るだけのケースは別ですが、どんどん相手も戻って追いかけて来ますから。僕自身はどんどん抜いて行くトライが気持ちいいですね。15人抜くことが出来たら究極のトライです(笑)。ただそれは本当に個人的な考えだと思うので、その前に体を張ったり、繋げてくれたりする、そういう全員で取るトライが、やっぱりラグビーの楽しさじゃないかなと思います。
トライには価値があって、みんな同じという訳ではなく、大量リードしている中でのダメ押しのトライよりも、競っている中でのトライの方が価値があると思います。また価値あるトライが出来た試合でも、ディフェンスで対面の相手にやられたりしたら、スッキリは出来ないですね。
試合の状況で、苦しい時にトライを取りたいですね。トライを取れば気持ちいいですが、トライを取った時には、ホッとするというのもありますし、自分の思うようなプレーが出来てそれがトライに繋がったら嬉しいです。ラグビーはあまりトライをした人は喜ばず、周りの人のお陰でトライ出来た、というところがあります。
ですから、周りの選手が喜ぶことは良いと思います。トライした時にみんなで寄ってきてくれたりしたら嬉しいですし、逆に僕もフォワードがモールとかスクラムでトライに繋がったりした場面では、どんなに遠くにいてもそこに寄って行って、みんなで喜ぼうという思いがあります。そういう時はやっぱり楽しいですね。