2015年1月29日
サンゴリアス ラグビー大辞典 #200 “特別編”『モール その2』
サンゴリアスラグビー大辞典“特別編”として、試合の日に起こるシーンやシチュエーションを選手が紹介します。試合前後を含めた場面場面を、選手たちならではの経験と感覚をもとに解説していきます。
「モール・シチュエーション」その2(解説:竹本 隼太郎)
モールはプロセスのどこかが1つでも破綻したら押せません。ジャンパーがジャンプして降りる、しっかり低くセットする。さらに2列目、3列目が来てしっかり組む。それからみんなでレッグドライブするという流れなのですが、例えば、最初にプラットホームを作る時に、1列目が高かったら前に推進力が行きません。ボールは取られませんが押せない状態になります。
味方同士のバインドが弱かったり、リフターが降りた瞬間に相手のプレッシャーを受けてしまったりすると、モールは崩れます。モールを引き倒してはいけないんですが、ジャンパーは引き倒しても良いんです。ジャンパーへのタックルはまだモールが出来る前と言うことで、通常のタックルとみなされます。リフターを引き倒すことは出来ません。ですので押すディフェンスの方が多いですね。モールの場合のオフサイドラインは、モールの最後尾にいる選手のいちばん後ろ、例えば足のかかととかになります。
ラインアウトからモールへ持ち込まず、ジャンパーがボールを取って投げることもよくありますが、投げたらバックスに展開できます。投げずに持っていれば、パスでボールを後ろに下げずに、前に出られるということです。どちらを選ぶかはシチュエーションによりますが、モールで簡単に前に出られるのであれば、モールのオプションを増やそうというコミュニケーションになってきたりします。
中盤などでゴリゴリ押して力を消費してもしょうがない時は、バックスに回したりとか、ゴール前はチャンスなのでまずモールでチャレンジしたいところですね。トライが取れる空気がなければ、最初から回して、フェーズの中でトライを狙えばいいだけです。
モールのディフェンスとして最高の状態はモールを押して、止めて、ボールを出させないようにすることです。ラックパイルアップかモールパイルアップか、人が倒れてボールが出せない、という状態が最高ですね。前に押してボールに絡んで、ボールが出なかったら、モールパイルアップでマイボールになります。
相手も必死で押してきますが、ボールをキャッチする場所を選べて、ずらすことも出来る、という選択肢が相手にある中で、ビタッと止めることが出来れば、こちらのボールにならなくても、それもいいディフェンスだと思います。相手はもう押せないなとプレッシャーを感じるはずです。
組み合っている人たちの力は、良い姿勢をお互いに作っていれば、アタックもディフェンスも変わらないと思います。アタックでボールを渡している人は足をかいてないですし、バインドして舵を取っているので、押すよりは楽かなと思いますが、その分相手のプレッシャーの弱い方に押していく責任があると思います。
入るところによって違って、ずっと足をかいていると乳酸がたまってきますので、これは体力を使います。でも良い姿勢で体重を上手く地面に伝えて無駄なく押すと、相手よりは楽に押す事は可能だと思います。そこはスキルですね。
押せている状態でもそれ以上押さないでボールを出す場合は、ハーフ団が判断しています。例えばこのまま押しても、トライラインまではまだ距離があってトライまでは持っていけない、ただ押しているから相手のディフェンスがモールに入ってくれて、ディフェンスラインの人数が少なくなって、外へ出したらチャンスだ、という時に、ハーフが判断して球を出して展開します。押し過ぎるということはないので、前に出ている訳ですから押せるうちはずっと押して良いと思いますが、止まるまで押すのではなく、止まる前に持ち出すのがポイントです。
よく最後尾の選手が飛び出るのは、モールの横の選手がモールに加われば、そこにスペースができます。次のディフェンスがそこにセットするまでの瞬間、そこにスペースがあるので、最後尾がそこをついてそのタイミングで抜けて前に出ようというプレーですね。ゴール前でトライ出来るチャンスがあったら抜け出すこともありますね。
試合展開にもチームのスタイルにもよりますのが、モールに勝ち目がない場合はモールを選択しないというチームもある訳ですが、勝負どころでフォワードがひとつになって、モールで取ったトライというのは格別ですね。「みんなで取った」ということで、そのあとひとつにまとまります。自然にひとつになることが出来るプレーですね。
<了>