2015年1月13日
サンゴリアス ラグビー大辞典 #195 “特別編”『ファーストスクラム その2』
サンゴリアスラグビー大辞典“特別編”として、試合の日に起こるシーンやシチュエーションを選手が紹介します。試合前後を含めた場面場面を、選手たちならではの経験と感覚をもとに解説していきます。
「ファーストスクラム」その2(解説:青木 祐輔)
ファーストスクラムは、「ファーストプレー」の一部ですね。そこでコケたら、その試合の入りが良くないということです。だいたい組み合った時に、「今日は相手強いぞ」とかは感覚で分かります。ファーストスクラムは大切なんですが、そこで「勝っておしまい」ではなくて、次のスクラムに向けて時間があれば話し合っています。
同じ相手でも「今日は強いぞ」「今日は弱いな」というのはありますが、「前回勝っているけど今回も組み方が一緒」ということは、あまりないですね。こちらが組み勝っていたら、相手は次回組み方を変えてきます。
ファーストスクラムは、相手のフォワードに精神的なダメージを相当与えられるものだと思います。目に見えないメンタルな部分で、ダメージを与えられるんです。ですが、こちらがやられた場合、それを引っ張らせないためにも、ひとこと声を掛けます。「俺らは、試合を通して、絶対勝てるから」と。
ファーストスクラムがダメで、セカンドスクラムで良くなることもありますし、セカンドスクラムがダメでも、サードスクラムで良くなることもあります。
スクラムトライが狙える場所でスクラムを組む時には、普段より力を発揮する場合があります。やっぱり全部のスクラムに100%力を出すのは無理だと思いますし、例えば中盤で、ここはステイでも大丈夫、という時もある訳です。プレッシャーをかけてもそんなに良い状況に変わらない時ですね。そこで100%の力でガンガン押していっていると、今度はいざという時に100%で押せなくなるんです。
毎回「ここ行くぞ」と言っていたら、「何回ここがあるんだよ?」となってしまいます。ですから言う時は「ここぞ」という時ですね。こっちが相当力の差を出して勝っていたら、毎回「これも取りに行くよ」と言えますが、そんなに差は出てこないものです。試合の終盤になれば、そういうことも時々ありますが。
ファーストスクラムを「早く組みたい」という気持ちはあります。試合が始まって、なかなかファーストスクラムがない時には、どことなくソワソワしている状態が続いている感じです。1回やれば、結構リラックス出来ます。
ファーストスクラムでは勝ちたいですが、そこで勝った負けたよりも、相手の傾向をしっかり見て、その対策を取った方がさらに良くなります。勝てば「さらに良くするにはどうしたらいいか」を話し合います。
ラグビーはこちらと相手の勝負だけではなく、そこにレフェリーもいます。レフェリーのスクラムの見方がありますから、最初のスクラムの時にどんなレフェリングをするのか、あるいは立ち位置とかも、チェックします。
相手チームを研究しておいて、試合前のユニフォームチェックの時に、レフェリーに「相手はこうやってくるのでここを見てください」といったことも伝えたりします。それでも試合でレフェリーが見ることが出来ない時に、「やっぱりこうやったでしょ」ということも言ったりします。実際に、そういう選手の声を参考にしてくれます。レフェリーとコミュニケーションを取りながらスクラムを組んでいく事も重要になります。