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サンゴリアスをもっと楽しむコラム

2015年10月16日

「少年サンゴリアス」Vol.45 石原慎太郎 その2『都知事』

「少年サンゴリアス」Vol.45 石原慎太郎 その2『都知事』
 
正直、高校2年生になりたてぐらいまでは、「久我山に入れて良かった」という感じでした。ラグビーで大学へ行くというのは全然考えていなくて、練習もきつくて1年の頃はメンバー選考に絡むようなこともなかったので、「普通にラグビーをやってまた大学受験をするパターンかなぁ」と思っていました。
 
1年の時は試合に出ても怯えながらやっていて、周りは中学の頃ラグビーをガンガンやってきた人たちだったので、「お前あまりボール触るな」とか言われていました。何をしたら良いの分からない。「ウロウロして、仲間の邪魔にならないようにプレーしろ」みたいなことも言われてました。
 

そうしたら、夏を過ぎたあたりで、少しずつラグビーに楽しさを見いだせる自分がいました。ルールを分かり始めて、だいたい理解し始めてからは、ちょっとずつ身体が動くようになったんです。
 
久我山の1学年には8組くらいあって、5組がスポーツ推薦で入った人たちのクラスだったんです。「スポーツクラス」とは言わないで「5組」というのが通称なんですが、野球、陸上、バスケットボール、いろんな種目からそのクラスに入って来ていました。
 
その中で自分も、野球を中学までやり続けていたので、レギュラーを取り合うという感覚は自分の中では分かっていたんですね。それで久我山ラグビー部1年生十何人がスポーツ推薦だったんですが、「負けたくない」という気持ちはありました。
 
1年目の時は、ルールが分からないながらも、試合で何もできないと悔しいじゃないですか。その気持ちだけは持っていたので、「どうにかしなきゃなぁ」と思って、とりあえず必死に食らいついて行くしかなかったんです。その頃は上下関係が厳しくて3年生に話し掛けもできず、そういう状態の中で、ただ着いて行くという感じでラグビーをやっていました。
 
石原慎太郎という名前は、小学校では話題になりませんでした。小学生の頃はあまり政治家のことは分からないので、大人からの絡みはありましたが、仲間うちではなかったですね。
 
僕自身も石原慎太郎がどういう人か分からなかったんですが、中学校から「東京都知事じゃん」となって、中学校の3年間はあだ名は「都知事」でした。すぐに覚えてもらえるという良いところもあって、今でも地元へ帰ると「都知事」と呼ばれますが、「もう都知事じゃないけどね」と応えています。地元は三鷹です。府中生まれで、調布に引っ越して、中学校が三鷹です。

 
高1の頃は真っ白な状態でラグビーをやっていたので、その時は何をやっても間違えていました。何が正解分からず、でも毎日練習があるので、学校へ行ったら練習に出ざるを得ないという状態でした。学校からの流れで皆で練習に行くので、分からないけれど走る、そうすると「ボールをそこで持つな」とか、そんなことを言われ続けていました。
 
1年間そう言われ続けて終わって、2年生になって後輩が入ってくる頃に、自分もラグビーというものが分かるようになってきたんです。後輩にそういう姿を見せたくないという気持ちもあったんですが、それが分かり始めた頃に、U17の関東、東北、九州、関西とかいろんな地域のメンバーを選抜した大会が夕張であって、それにたまたま入ることが出来たんです。
 
その辺ぐらいから、「あぁ、なんか楽しいな」と。選抜されて試合に行くことも新鮮でしたし、ずっと野球で地区単位、都内単位の大会にしか出て来なかった自分が、関西とか九州の言葉の中で交流していることを感じて、あの時は楽しいなぁと思いましたね。
 
でもその分かる感覚があった2年生の時も、100%は分かっていませんでした。ただ「何をしたらダメ」という細かいルールの基礎を、身体で分かることが出来たんです。それ以上のことは何も分かっていないんですが、それだけでまずスタートラインに立てた気がして、それが自分の中では本当に大きかったですね。

 
僕の場合は強制的にやらざるを得ない環境だったんですが、小学生とか中学生からやっている人たちが、アドバンテージを持って高校へ入ってきて、もう羨ましくて仕方なかったですね。でも僕みたいに「高校生で初めて分かっても、まったく遅くはないよ」ってことです。学生だったら何歳からでも始められるものだと思うので、ラグビーを皆にやってもらいたいですね。
 
野球と比べてラグビーの方が、僕は面白いです。野球も好きですが、野球はチームスポーツなんですが、個人的な能力を求められる種目だと思うんです。それと比べて、ラグビーは個人のプレーだけではどうしようもない、どうにもならないというところがあります。
 
ラグビーはひとつの目標に向かってチームで動く。野球の場合、ひとつの目標に向かって個々がトレーニングして能力を上げて行く感じだと思います。ラグビーは皆で成長していくということを高校3年間で感じました。自分自身がどんどん成長していたというのもあると思いますが、それは本当に大きかったと思います。そこが面白かったです。
 
 
(了)

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