2014年11月11日
サンゴリアス ラグビー大辞典 #183 “特別編”『キックオフ その1』
サンゴリアスラグビー大辞典“特別編”として、試合の日に起こるシーンやシチュエーションを選手が紹介します。試合前後を含めた場面場面を、選手たちならではの経験と感覚をもとに解説していきます。
「キックオフ」その1(解説:小野 晃征)
試合のはじめのキックオフの時は、ゲームプランが決まっているので、どこに蹴るかというのはほとんど決まっています。キッカーとしては、その決まっている位置にしっかりとボールを落とすことに気をつけています。先ずファーストキックオフを蹴るか蹴らないか、つまりこちらのキックから試合が始まるのかレシーブから始まるのかは確率的に50%-50%ですが、蹴った場合はほとんど狙った場所に落とせます。
ファーストキックオフなのでリスクのあるキックは蹴りません。しっかりとチェイスして相手にプレッシャーをかけるということが、試合の入り(はいり)ではいちばん大事なので、しっかり良いキックを蹴って、良いチェイスをさせて、相手のしたいプレーをさせないというのが、ファーストキックオフのポイントだと思います。
チームでどういうキックを蹴るのかは、試合の週のはじめから考えています。そこに関してはスタッフが相手チームの分析もしているので、コーチ陣から「相手はこうやって攻撃してくるチームで、相手の立ち位置はこうなので、ここに蹴ろう」という流れの話になります。ですから毎週蹴り方は違いますね。
奥に蹴る時には、ボールが長く空中にあればあるほど、チェイスする時間が稼げるので、それを意識してなるべく高く蹴ります。計算できない天候、例えば風の状態などは、試合の当日グラウンドに着いたら、その場で確認してもう一度判断しないとダメですね。例えば左キックだったのが、風が逆に吹いているので右に変えて蹴るとか、そういうことは当日に判断します。
風はアゲインストの方が蹴りやすいです。向かい風の方がボールが浮くので、アゲインストの方がチェイスの時間が長くとれます。フォローウインドだとすぐにボールが落ちてしまいます。手前に蹴る時にはちょっと低めのキックもありますし、高く蹴るキックもありますが、僕は基本、高く蹴ります。
手前に蹴る時には、相手はジャンパーをリフトして高い位置でボールを取りたいはずなので、高く蹴るとそのジャンパーに落下点まで動く時間を与えてしまいます。そうさせないで1対1の勝負にするために低く蹴って時間を与えず、相手にリフトする時間を与えないようにするキックもあります。
ファーストキックオフでない、例えば点を取られた後のキックオフの時は、ハドルの中で「次これでいくよ」と話をしますし、トライされたら「次のフォーカスはこれだから」としっかりチームに言ってから、ハーフウェイラインのところへ走って行きます。
最初のキックオフが上手く行ったからといって、試合展開が良くなるかどうかは、また別物ですが、キックオフで気をつけていることは、しっかり10mラインを超えることと、サイドラインからダイレクトに出ないようにすることです。
サントリーでは基本10番が蹴りますが、ドロップキックはチームのベストキッカーが蹴ると思います。上手なキッカーがいたら「どうぞ」と言って譲るつもりです。いろんなキックがあるし、いろんなスキルを持っていたいと思いますし、10番としてキックオフは「蹴れた方が良い」というスキルです。ですからしっかり練習しています。