2014年9月23日
サンゴリアス ラグビー大辞典 #171 “特別編”『コイントス その3』
サンゴリアスラグビー大辞典“特別編”として、試合の日に起こるシーンやシチュエーションを選手が紹介します。試合前後を含めた場面場面を、選手たちならではの経験と感覚をもとに解説していきます。
「コイントス」その3(解説:竹本 隼太郎)
僕がキャプテンの時は、陣取り合戦で最初にキックオフを選択する、ということは無かったですね。エリアを重要視していました。相手がキックオフを選択することはあるんですが、それは最初のプレーのエリアを敵陣から始めたいということだと思います。
ボクシングなどですと、計量の時から戦いが始まっていて、にらみ合いなどの心理戦があったりすると思いますが、ラグビーの場合はそういう心理戦などの駆け引きはないですね。結構、前半と後半でイコールコンディションになるので、どっちでもいいよ、と思っているチームも多いと思います。「何でタケそっちを選んだの?」なんて、聞かれたことはありますが、「ちょっと言えないです」と答えたこともあります。
コイントスの結果については、相手の意図が分からない時もありますが、コイントス自体にこだわっている訳ではないので、あまり気にならなかったですね。マイボールを選んでキックで始まれば、敵陣から始められてエリアを取ることが出来るので、失点のリスクが少ないですし、相手が蹴ってくれたら、僕らはマイボールをキープする力があるので、それを繋いで繋いでポゼッションを上げられます。だからどっちでも良いといえば良いんです。
キックとエリアが決まったら、監督とコーチに報告して、ロッカーへ入って、エリアはどっちでボールはどっち、という話をチームの皆に伝えます。その時に「マイボールキックだから良いチェイスをして、良いディフェンスから始めよう」とか、キックオフレシーブだったら「マイボールキープをして、最初の何フェイズかはしっかり継続して、良いスタートを切ろう」とか、一言加えます。
キャプテン2年目には1シーズン17試合あって、怪我で出られなかった試合が2試合あって、15試合のトスをしましたが、結局自分たちの望み通りにコイントスがなったのは、13試合でした。この13試合、いつもと同じルーティーンで試合が出来たということが、面白いなぁと思います。残りの2試合は、トスで負けて、なおかつ取りたいエリアを取られたということです。
確率的には半分なので、7/15とか8/15は選択権が取れます。残りの7、8試合の半分は、相手がマイボールかエリアを取るかの確率が半分ですので、相手が何も考えずに選んでくれれば、確率的には75%はこちらの狙い通りに取れる、ということだと思います。こだわりがあるかないかで、そういう差が出てくると思います。
こだわりというのは意図ですから、戦術的なもので、前半に勢いをつけて点差をつけ、後半逃げ切りたいというチームと、前半は風下で耐えて、後半は楽に勝ち切りたい、とするかの2パターンだと思います。
<了>