2014年9月 2日
サンゴリアス ラグビー大辞典 #168“特別編”『試合会場到着 その3』
サンゴリアスラグビー大辞典“特別編”として、試合の日に起こるシーンやシチュエーションを選手が紹介します。試合前後を含めた場面場面を、選手たちならではの経験と感覚をもとに解説していきます。
「試合会場到着」その3(解説:篠塚 公史)
東京での試合以外は、基本的に宿泊先のホテルからみんなでバスに乗って会場に入ります。東京では試合会場近くのホテルに泊まって、タクシーで会場へ行きます。ナイトゲームの試合の時にはその日の午前中にホテルへ行って、ミーティングしてストレッチして、みんなで会場へ入ります。みんなでバラバラに会場へ入るというケースは基本的にないですね。
試合会場で先ずロッカーに入ったあと、グラウンドを見ます。太陽の位置、風の強さ、風の向き、グラウンドの芝のコンディションとか、人それぞれ気になるところがあるので、それを必ずチェックします。前に別の試合が入っている場合はグラウンドサイドから見ますが、試合をやっている方が風の影響でどういうボールの変化をするのかが分かったりするのでいいですね。
ロッカーでは人それぞれですが、スパイクのメンテナンスをしたり、テーピングを巻いたり、ストレッチをしたりします。後は軽いウエイトで筋肉を動かして、動ける準備をすることもやったりします。フォワードはこれをやるというルーティーンは決まっていなくて、人それぞれルーティーンを持っている感じです。
身体を動かすのはこの日ここで初めて、ということではなくて、朝ホテルで集まって、ストレッチや身体を動かしたりチームランをしたりします。プレーのチェックを行うという時間もあります。それはホテルの中や近くの公園でやります。試合開始の3時間前にまた軽く動いてストレッチをして、その後にサンドイッチなどの軽食をとります。その後は試合が終わるまで食べませんが、水分補給は常に行います。
試合の日は、本格的に汗をかくのはアップからになります。アップは大事で、そこで試合が決まってしまうということもあると思っています。アップの出来で試合の出来が分かると思います。アップでミスが多かったり、集中してなかったり、静かだったりすると、ゲームでもそれが出て来ます。良くない時も結構ありますので、その場合は修正しなければなりません。良くない時は、アップの途中でも一度止めて集めて、意識を変えるようなこともあります。
今年はスターティングメンバーとリザーブメンバーは分かれてアップをしています。去年まではスターティングメンバー中心にやっていました。身体をぶつけるアップの時には、バッグをリザーブが持ってやって、リザーブのアップが足りない場合はリザーブが各自でアップの後やっています。
ラインアウトやスクラムの確認はアップの時が最後ですので、そこで上手くいったら試合でも良い感じに出来ます。上手くいかないと不安が残ってしまうので、アップがとても大事です。アップで万が一良くなかったとしても、要は信じるしかないですね(笑)。自分が良くなかった時は、自分にずーっと問い掛けます。「意識を変えろ」と。あっちゃいけないことですけれど、たまにそういう時もあります。
人の状態が良くなくて気になったら、気になった人にも言います。年齢も立場も関係なく、みんなが言うことが良いと思っています。集中しているかどうか、ミスが起こってしまったり顔を見たりすれば分かるので、そういう人にはちょっと声を掛けるだけで変わります。
アップ後は、各自自分の中で気持ちを盛り上げていきます。ロッカーを出る前には、みんな「今日は頑張ろう」という感じで1人1人と握手して、円陣を組んで、ロッカーを出ます。アップに入る時から、僕はスイッチを入れていますが、アップまではリラックスしています。アップに行く前のロッカーで、自分の中でやることを確認します。その時に50から100ぐらいへ上げて行きます。もともとまったくのゼロではありません。
試合前に気をつけているのは、「いつも通り」ということです。テーピングの巻き方にしろ、ストレッチのやり方にしろ、行動にしろ、いつも同じようにしようと心掛けています。その日起きる時間からいつもと同じ時間に起きて、朝食も同じ時間に食べて、だいたい同じようなものを食べて、ずっと「同じことをやる」意識をしています。
僕も竹ちゃん(竹本隼太郎)のアップシューズがいちばん印象に残っています。竹ちゃん、あの時は相当プレッシャーを感じてたんだなと思いますよ。珍しいです。自分の場合はアップが終わってロッカーに戻って来たら真っ先にスパイクを履くので、ありえないですね(笑)。