2013年1月 4日
サンゴリアス ラグビー大辞典 #020 『スクラム』
サンゴリアスやラグビーを語る上で、必ず出てくるラグビー用語やサンゴリアス用語。そんなワードをサンゴリアスのあの選手、あのスタッフならではの解説で分かり易く解説するコーナーです。
「スクラム」(解説:尾崎 章)
スクラムは、ラインアウトと一緒でセットプレーの1つで、最初にコンタクトで始まるプレーです。8人対8人で組みますが、シンビン(イエローカードによる一時退場)などで人数が減る場合もあります。またフロントローが怪我などでいなくなってしまうと、ノーコンテスト(押し合い無し)のスクラムを組みます。ノーコンテストのスクラムは押し合わないで、ボールを出す手順として行うスクラムになります。
「スクラムの1mmがバックスの1m」という言葉がありますが、スクラムはとても大事なものです。試合に勝ったとしても、スクラムに負けたらフォワードは悔しいですね、特にプロップは。相手に勝つには、8人のまとまりと、メンタル面が大切で、スクラムをちゃんと組めている時が結果的に、「あ、まとまっていたな」という感じです。
例えば1番の僕が負けている時はダメで、一枚岩になって皆でバインドして固まって、同じ方向に押すようにしなければなりません。敵がいてのことなので、膠着状態になることもある訳です。向こうも“うゎーっ”と押してきて、こっちも固まっての膠着状態。前半の前半ではよくあることだと思います。そういう時、「あ、これイケル」とか、「これもうちょっとしたらヤラレルな」とか、フロントローの選手は特に肩で感じていますね。
スクラムが回ってしまうことがありますが、どっちかのプロップ(1番か3番)が押されている場合です。そういう時は真っ直ぐ押してもダメなので、しっかりフッカーに寄りながら組まないとダメなんです。1番も3番もフッカーに寄って押すイメージです。そういう中で、「こうしよう」「ああしよう」というのがフロントローではよくあります。言葉で言うと、「もっと寄って、真っ直ぐ押そう」とか。
「動かなくても、相手はこっちに押してくるから、そっちに寄っておけば結果的に真っ直ぐいくよね」っていう時もあります。「敵がこっちを前に出したいから、逆に引いてみてこっちを出そう」とか。それにつき合って、「あ、イケル」と思ったら、グーッと回ってしまったりとか。
会心のスクラムは最近、ないです。シーズンを振り返って、何回あるかなという感じだと思います。でも去年のサントリーでは、結構あったと思います。今年と去年の違いは、ペナルティが少ないように組み方を変えたりしています。
今のサントリーのラグビーは、スクラムでガンガン押すというチームではありません。よく昔は「スピードを犠牲にしても力強さでチームを引っ張るのがプロップ」と言われましたけれど、今のサントリーのラグビーをやるには、ハタケ(畠山健介)だったり金井(健雄)とか新田(浩一)のように、スピードとテクニックを持っていて、スクラム以外でどれだけ仕事をするかというのが重要になってきています。だからスクラム以外のところもすごく大事なんです。加えてそういう状況の中では、スクラムの大事さを改めて皆に伝えていくことも重要ですね。
スクラムは好きでやっているんで、怖いということはラグビー選手の場合ないと思います。でもスクラムに負けた時が辛いですね。スクラムは慎さん(長谷川慎/元サントリー/現ヤマハ発動機コーチ)から教わりました。池谷(陽輔)に言わせたら「俺は直人さん(中村直人/元サントリー/現キヤノンコーチ)」って言うかもしれませんが、1番は慎さん、3番は直人さんですね。
慎さんはヤマハへ行っても、行ってすぐスクラムをあれだけ強くできるというコーチとして凄い人ですし、選手としてもスクラムの強さは凄かったですね。いちばん教わったのは、考えることですが、すべてが印象的です。ああいうふうになりたいですね。こういうスクラムを組まなきゃいけないとか、これでいいということはないので、スクラムの強さはずっと追求していきたいと思います。
スクラムの魅力は、100%コンタクトがある、ぶつかり合いがあるというところだと思います。ラガーマンはコンタクトが嫌いな人はいないと思うし、絶対にコンタクトするのがスクラムですから。しっかり組んで8人で固まって押してくるし、こっちも8人で固まって押す、それでいいボール出して、パッと見た時にバックスがサインプレーでバァーッと抜けていたら、歯車になっている感じがあって、嬉しいですね。
スクラムは僕が押しているというよりは、ロックとかフランカーとかナンバーエイトが後ろから押してくれてるから押せているという感覚なので、フロントローが凄いという訳ではないでしょうけれど、でもそうさせるのがフロントローの仕事だなと思っています。