CLUB HOUSE

クラブハウス

サンゴリアスをもっと楽しむコラム

2012年12月20日

「中年サンゴリアス」その6 大久保尚哉 『1対1の勝負』

「中年サンゴリアス◆大久保尚哉◆1対1の勝負」
サントリービア&スピリッツ株式会社 東京支社第2支店 店舗開発担当
サントリーサンゴリアス 採用補佐
1999~2008年度現役

■物足りないなという感じ


同じ名前で1つ先輩の大久保直弥さんがサンゴリアス新監督になって、「監督になったんだって?」って言われます。しょっちゅうです(笑)。会社の女の子にも冗談なのか本気なのか言われて、「俺じゃないょ、それだったらここに居ないだろう」って。

選手からの引退が一緒で、1年間直弥さんが家業に戻っている時に、何回か飲んだんですよね。いちばん覚えているのは、直弥さんは豆腐屋で朝早いので、夕方5時に待ち合わせて長嶋監督がよく行くという田園調布のお店で飲んで、9時には解散みたいな日がありました。僕もそうでしたけれど、直弥さんも何か物足りないなという感じはちょっとありました。

そんなことがあったので直弥さんは現場にコーチで戻ったら、やっぱり生き生きしていて水を得た魚のようで(笑)、昔の直弥さんに戻ったなと思いました。飲んだ時に「直弥さんが監督になったら僕、全力でサポートしますよ」ということも言ったと思います。今年、新監督ということでプレッシャーも相当なものだと思いますけれど、出来る限りのことはお手伝いしたいなというのが率直な気持ちです。

現在、チームには片足を突っ込んでいるというか、採用補佐としてU20など若い世代を発掘したりしながら、本業として業務店のビールの開拓をするというのがメインの仕事です。正直、ラグビーに関しては活動らしい活動は、これからというところです。

ラグビーの場合、高校で結構活躍していた選手が大学で伸びないケースもあって、高校でやっていなくても大学で頑張った選手が日本代表になったりしたり、他種目から来て大学で活躍する人もいます。高校で良くて大学でも良いという選手はたぶん一握りですね。そしてAクラスの選手はいっぱいいますけれどSクラスの選手はそんなにいませんから、当然争奪戦になりますし、もちろんチームの補強ポジションによってもどんな採用をするかが変わってきます。

■熱意を伝えていく

ビールの営業は飲食店に対する営業で、2店以上のチェーンの飲食店に直接訪問して、うちの商品やいろいろなご提案をして、ビールを取り扱っていただくプラス他のスピリッツとかウイスキーとかを取り扱っていただこうという仕事なんです。例えば新しく開店します、じゃあうちのビールをお願いしますという場合もありますし、お店があって違うビールを扱っているところを、うちのにしてもらえませんかという話をする場合もあります。酒屋さんと連動しながらの仕事になります。

プレミアムモルツは9年連続で売り上げが伸びていますし、いまハイボールも伸びていますので、そういう武器があって、まずそれを商談で持っていけるので、入口のところでお断りされるケースはほとんどありません。そこからは、新規のお店の場合にメーカーさんのこだわりがなければ話を進められますけれど、既存のお店で他社さんから変えて下さいというケースでは、これまでの義理人情もありますから、足繁く通ったりとか、先方の求めていることを聞いてそれに対して改善策を提案したりとかしながら、フェイスツーフェイスで熱意を伝えていくことが大切だと考えています。

現役を引退してから僕は初めて今の業務用という世界に入りました。それまでは家庭用というスーパーとかディスカウントショップを担当していました。それから3年半ですが、最初は分からないことも多かったんですが、これはラグビーと同じで、目で見て覚えるということもありました。先輩に同行してもらって、担当しているお店に夜一緒に飲みにいってもらい、メニューとか気づくポイントなどを話してもらったりしました。

社内では、こういう提案をしようと思っているんだけれど、と会議で話すと、良い事例や参考資料を誰かしら持っていたりします。さらに他の事業部の援護射撃もありますから、チームで攻めていくという感覚ですね。それでお客様と段々距離を縮めていって、握手して、一緒にやって行きましょうという形が理想です。


■スポーツマンとしての活動と共通

  初めてお店に行って、体がデカいので何かやっていたんですか?ラグビーをやってたんです、という話から始まって、初対面でも早く打ち解けられるということも多いです。その面ではラグビーが役に立っています。それから家庭用の担当者は会社員なんですが、お店は皆さん社長であったりオーナーだったりするので、話が早く、そこは面白いですね。

気持ちの部分で繋がることが大きいので、熱意や、やってやろうという思いとか、相手に対してこうした方がいいだろうと考えてトライしてみるとかの戦略的な部分は、自分で考えて自分でやる1対1の勝負ですよね。人として気持ちの部分、情の部分を活かせるということを含めて、スポーツマンとしての活動と共通するところがあるかもしれません。

  ただ僕がラグビーをやっていようが何をやっていようが、お店をやっている方々はお店の利益を出すためということが最大の目標ですから、ラグビーをやっていたから許されるということは絶対にありません。ですからそこは完全に棲み分けて考えていますし、そういう姿勢で取り組んでいます。飲食店へ行って、最後に残った食べ物を担当して残さずに食べるなんていうのは、ラグビー選手ならではの体のデカさとかを活かしていますけれど(笑)。

企業のトップにはラグビー好きな方が多かったりするので人脈とか、人と人との繋がりとか、どうしたら目標を達成出来るかということを戦略的に考えるヒントとか、そういうことがラグビーをやっていたことを活かせる部分だとは思います。ラグビーでは体ごと人と接していましたので、それだけではないですけれど仕事でも人と接することやコミュニケーションが苦にならない、ということもあるかもしれません。

僕自身の今の課題は、もっと飲食店の知識を増やしていきたいということと、もうひとつはモチベーションの部分で、現状に甘えているかもしれない状況を、もっと自分で活性化しなければいけないなと思っています。飛び込みだったりとか、自分で飲食店さんの調査をして、提案をいろいろしていったりとか、もう一段階アクションを起こさないといけないと思っています。

■1人ライブじゃなく

  僕はラグビーを小学校からやって社会人が終わるまで20年やった訳で、人生の半分以上、ラグビーとつき合ってきていて、引退した時に、もの凄くカラッポ感があったんです。もちろん仕事をしなければいけないというのはありますし、自分のラグビーを見切って引退したつもりだったんですけれど、近くに高校があって土日のコーチの話があったのでお手伝いするようになりました。それで自分のライフスタイルバランスが取れてきた感じがあります。子供を教えるのも好きですし、今後も何かしらラグビーに関わって行きたいですね。

サンゴリアスはメチャクチャ気になっていますが、去年、一昨年はラグビーを教えていたりして応援に行けないことも多かったので、試合があった日は結果を見ないで情報をいっさい遮断して、家に帰って風呂に入って、ビールとハイボールを用意して録画を見る、というほどこだわって見ていました(笑)。ライブ感を自分で出して、結果はもう出ているのに「あぁ、これはまずいぞ今日」とか言いながら見るんです。1人ライブ(笑)。

選手たちと会うと、みんな目がキラキラしています。凄く意欲的で楽しそうだなというのが去年、第一印象でありました。充実感にあふれていて、スタッフ、選手の1人1人がお互いをリスペクトする気持ちを持っているし、凄く上手く回っているなと感じました。チームに対してやってやろうという気持ちが溢れてました。1人1人が役割を持ってやっていて、キャプテンやバイスキャプテンだけでなく、それぞれがリーダーになって責任を任されて、それに対してやろうということでベクトルが内側に向いていて、1人として外側に向いている人がいないという印象がありました。

今年の期待は三冠(リーグ戦1位、トップリーグ優勝、日本選手権優勝)を去年に続いて2年連続で取ってほしい。シーズンは長いので良い時もあれば、悪い時をどう最低限で食い止めるかというところを、いまのスタッフは年齢が近くて仲の良いスタッフなので、余計に頑張ってほしいですね。今年は1人ライブじゃなくて、グラウンドへちゃんと行けるようにスケジューリングしなければと思っています(笑)。


(構成:針谷和昌)

一覧へ