CLUB HOUSE

クラブハウス

サンゴリアスをもっと楽しむコラム

2012年11月 6日

「少年サンゴリアス」 Vol.27 真壁伸弥 『モラルのある家庭』

08~09年に連載し好評を博した「少年サンゴリアス」。思わず微笑んでしまう様なエピソードや、ビックリしてしまう話もたくさんあり、そんな子供たちも今は1人前のラガーマンになりました。3年振りに復活の「少年サンゴリアス」と併せて、サンゴリアスのOBたちの現状を伝える「中年サンゴリアス」もスタートします。どうぞご期待ください。
 
 
「少年サンゴリアス◆真壁伸弥◆モラルのある家庭」
 
自分もお酒が好きですが、親父もウイスキーが大好きで、普段は大人しいんですけれど、酔うと人が変わるタイプの人間だったんです。酔って帰って来ると、母親が「あなた、頭を外で冷やして来なさい」って親父を庭に出して窓を閉めるんですが、そうすると親父は「ここは俺の家だぁ!」と言って、窓ガラスをバンバン叩いて入ってくるような家でした。そんな家庭で育ったので、子供の頃はよく泣いてました。ちなみにお爺ちゃんの家で親父の家ではなかったんですけれど(笑)。
 
酔いが冷めれば親父もすぐに謝るんですが、家に入って来た時の親父を、母親も叩いて追い返すような感じだったんで、子供だった僕は泣いて風呂場に行くみたいな状態でした。風呂場は逃げ場でした(笑)。
 
僕には2つ上のお姉ちゃんがいるんですが、お姉ちゃんも強い人で、そんな両親のやり取りを「あんたら何やってんの!」という感じで冷たい目で見ているようなお姉ちゃんでした。この頃、僕は小学校の高学年でしたが、子供ながらに「早くここから出て行こう」と思っていました。
 
大学を決める時も、東京の大学に行くことに対して親に反対されたんですが、「いや、俺は奨学金で行く」と言って中央大学に進学しました。とにかく家からでて違う環境でラグビーに打ち込みたかったんです。半分は逃げるような感覚もありましたが(笑)。
 
小学生の頃、家族で北海道旅行へ行った記憶があります。北海道について、ふと僕が「あ、宮城とあまり変わらないね」みたいなことを言ったんです。そうしたら親父がものすごく怒ってしまって、ホテルのロビーに連れて行かれて、「ここで待ってろ」と言われ、母親と親父はなぜかそのままエレベーターで部屋に戻ってしまいました。しばらくしても戻ってこないので、どうしたのかと思っていると、結果、親父はもうチェックアウトしてたという状態でした(笑)。結局親父の家族旅行ボイコットみたいな感じになって、そこで旅行は終了という衝撃的な家族旅行でした。
 
自分が社会人1年目の時に、母親が亡くなり、親父も体が弱くなってきたせいか静かになりました。僕は子供の頃から大人しい子供だったんですが、そういう親父に育てられた影響としては、優しい父親になろうと思ったことです。工業高校を出てすぐ就職しようと考えていましたが、その高校でラグビーと出会って、良いメンバーや友達に知り合えたし、それでどんどん世界が広がって行きました。
家庭だけじゃなくて、勉強するところは他にもいっぱいあるので、家庭が全てという風に考えるんじゃなくて、それを反面教師にするわけじゃないですが、違うところにもたくさん学ぶ場所があると思います。今この歳になったから分かりますが、大人でも子供の気持ちのまま大人になったような大人もいる訳です。大人がすべて正しいという事ではなく、自分でしっかり考えを持って大人になると良いと思います。そういう意味でも、自分がつくる家庭は、モラルのある家庭にしたいですね。どこへ行っても、先ず自分が恥ずかしくないようになりたい。そうすれば子供はそれを見るし、あとの成長は学校だったり地域だったりの環境なので、勝手に育つだろうと思っています。だから嫁さんができたら、その嫁さんと俺はしっかりとモラルのある家庭を築いていきたいです。
 
 
(構成:針谷和昌)

一覧へ