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サンゴリアスをもっと楽しむコラム

2012年10月 4日

特別対談シリーズ「となりのフットボール」 Verdy & Beleza × Sungoliath

特別対談 『となりのフットボール』 第2回
サントリーサンゴリアス 小野澤宏時×東京ヴェルディ 阿部拓馬
【自分が上手くなるため毎日毎日しっかり練習】
 
 
『毎試合ゴールを取るという目標』(阿部)
 
――阿部選手は足に自信がありますか?
 
阿部:あまり自信はありませんが、速いと言われます。ただ走ることよりも、ボールを追いかけていた方が速くなるとは思います。小野澤さんはどうですか?
 
小野澤:いや~、どうですかね(笑)。速さを競うだけだったら、僕はそこまで速くなくて、チームの中でも3、4番手くらいだと思います。
 
阿部:僕も速さを競うだけだったら速くないと思います。ボールを追いかけるということに関しては、予測することで、相手より半歩速く動けるので、足の速さは予測でカバーしています。けど、練習通りにボールが来ることはないので、何にでも対応出来るように準備をしています。
 
小野澤:僕はディフェンスに来た相手の動きをどう止めるかを考えています。一瞬相手の動きを止めることで、一歩で相手を抜くことが出来ます。簡単に言うと、逆を突くということになります。
 
――小野澤選手のステップは「うなぎステップ」と言われているんですよ
 
小野澤:あまりカッコいいネーミングじゃないですよね。
 
阿部:イメージしやすいですよ。僕にはそういう名前がないので、欲しいですね。
 

――相手の反則でPKとなった時、どうやって誰が蹴るかを決めているんですか?
 
阿部:例えば愛媛FC戦(9/17)では、西くん(紀寛)がPKを獲得してくれたんですが、西くんの場合は、前から「俺がPKを取ったら、お前に蹴らす」と言ってくれていました。一応、チームでPKの練習をする時も、最初に蹴らせてもらっています。PKを獲得した人が自分で蹴りたいという場合は別ですが、基本的には僕が蹴らせてもらっています。2回目のPKは中島翔哉っていう高校生の選手に蹴らせました。そういう若い選手は得点を取るとノッてくるので、譲りました。チームにもよると思いますが、ヴェルディの場合は、選手が蹴る人を決めています。ラグビーの場合も同じですか?
 
小野澤:試合が始まると、監督からの指示はキーワードくらいしか聞き取れなくなるので、選手同士で決めることが多いですね。チームとしての攻める方向性やこの試合の強みみたいなものは試合前に決まっていることが多いんですが、細かな部分に関しては選手同士で決めています。
 
阿部:それはサッカーも同じですね。愛媛FC戦で言えば、監督の思い通りの展開になったと思います。
 
――阿部選手はJ2の得点ランキングで上位につけていますが、得点王は意識しますか?
 
阿部:あまりランキングは意識しないんですが、毎試合ゴールを取りたいという思いでプレーしています。ランキングは後からついてくるものと思っているので、毎試合ゴールを取るという目標でやっています。
 
小野澤:そこは僕と似ています。この対談の前は、阿部選手はもっと若さでガツガツ来るかと思っていたんですが、大人な発言ですね(笑)。
 
――小野澤選手は最多トライゲッターは?
小野澤:僕はトップリーグになってからは2回です。トップリーグが出来る東日本社会人リーグの時からは、ちょっと覚えていないですね。
 
阿部:すごいですね。
 
――小野澤選手は史上初の通算100トライにも残り僅かですね
 
小野澤:長くやっているアドバンテージです(笑)。(※第4節(9/22)を終えた時点で、残り6トライ)

『20代の時よりも体力的には良い状態』(小野澤)
 
阿部:トップリーグが出来て、今年で何年目ですか?
 
小野澤:今年で10年目です。
 
阿部:長いですね。年間何試合あるんですか?
 
小野澤:今はリーグ戦が13試合です。トップリーグが出来た当初は12チームしかいなかったので、11試合でした。対戦方法がサッカーみたいにホーム&アウェーではないので、同じチームでの対戦は1回きりなんです。
 
阿部:その場合、どちらのチームがホームになるんですか?
 
小野澤:ラグビーの場合は、サッカーのようにホームとアウェーがはっきりと分かれていなくて、対戦カードによって試合をする競技場が決められるんです。
 
阿部:1試合に1トライを取ればすごいですよね。
 
小野澤:昨シーズンのトライ王は19トライなんで、すごいですよ。なかなか上手くいかないんですよ。ラグビーはボールよりも相手ゴールに近づいてプレー出来なくて、キック以外はボールを後ろにしかパスできないので、誰にでもトライを取るチャンスがあるんです。僕のポジションはウイングと言って、主にタッチライン際でプレーすることが多くて、走りが見せられるポジションなんですが、戦術やその日の天候などによっては、ボールを端まで回さずに、密集地帯からそのままトライを取ることもあります。チームによっては、密集地帯からの方がトライを多く取るチームもあります。
だから、僕がタッチライン際にいて、ボールが回ってくることは運によるところも多いんです。ボールが回ってきたら「今日はボールが来た来た」って(笑)。あと大量得点を取っている時などは、真ん中に近い選手たちがイケイケになってしまって、どんどん自分たちで攻めていくので、僕の所にはほとんどボールが回ってこないんですよ。
 
阿部:フラストレーションが溜まりますね。
 
小野澤:溜まりまくりです(笑)。そこに関しては年寄りじゃなくて若い気持ちを持っているので、「なんだよ~」って顔をしていると思います。阿部さんもそういう時はありますか?
 
阿部:やっぱりボールが来ない時はありますね。1試合の中でも良い流れの時と悪い流れの時があるので、ベテランの選手からは「我慢だ」と言われています。
 
――我慢をしながらも、これだけ得点を取っているということは、ゴールのコツみたいなものはあるんですか?
 
阿部:コツがあれば、僕が教えて欲しいですよ(笑)。
 

小野澤:子供の頃からフォワードですか?
 
阿部:フォワードであったり、1つ下がったポジションであったりしますが、ずっとゴールに近いポジションでやらせてもらっています。今でも自分はストライカーというタイプではないと思っています。
 
――自分でゴールを決めるという意識はありますか?
 
阿部:自分がゴールを決めて、試合に勝ちたいという気持ちはありますが、チームが勝つことが一番ですね。だから、自分が3点ゴールを決めたとしても、試合に負けてしまったら悔しいですね。
 
小野澤:そういう時って、どういう顔をしたらいいか分からないですよね(笑)。自分が3トライ取っても試合に負けたら、試合後はすごく暗くなりますし、負けは何よりもダメですよ。みんなが「ここで取ってくれ」って思っている時にトライが取れて、それで勝ったら「良かった~」って思います。
 
阿部:トライを取るコツはあるんですか?
 
小野澤:チャンスな場所にいる頻度を増やすしかないので、そこにいられるかどうかだけです。だからワークレートを上げていくしかないですね。怖いコーチがいるので、20代の時よりも体力的には良い状態にあると思います。
 
阿部:練習はキツイですか?
 
小野澤:練習もキツイですし、年齢関係なしにプレーの質で怒鳴ってくれるコーチがいるおかげで、若くいれることが出来ています(笑)。
 
――阿部選手はまだまだこれから成長していけるという感覚はありますか?
 
阿部:まだまだこれからですね。単純に体力やフィジカルだけでは、上には上がいるので、僕の目指しているプレーは考えてやるということです。考えてプレーすることには限界がないと思っていて、練習でも考えてプレーすると、毎回課題が見つかるので、まだまだやることはたくさんあります。

『大変なことを僕はしてしまった』(小野澤)
 
――東京ヴェルディの雰囲気はどうですか?
阿部:みんな仲が良いですね。僕はヴェルディしか知らないのでなんとも言えないんですが、周りからは「ヴェルディの雰囲気は独特」って言われます。チームの中に入ってしまえば、独特という雰囲気は分からないですよ。
 
――阿部選手は自分のことをどういう性格だと思いますか?
 
阿部:結構、楽観的だと思います。シュートを外した時でも、すぐに切り替えられますね。小野澤さんはどうですか?
 
小野澤:ラグビーはボールを保持できるスポーツなので、僕自身はあまり楽観的ではないかもしれないですね。例えば、ラグビーはボールを前に落としてしまうと反則になるんですが、その時などは、「大変なことを僕はしてしまった」と思う時もあります(笑)。僕にボールを繋いでくれた人たちがいるので、ボールを落としてしまった時の反省は半端じゃないですよ。ただそこで試合が終わるわけじゃないので、「やるしかない」と思って気持ちを切り替えます。けれど、この年になっても、ミスをしてしまった後は、その後のプレーはすべてネガティブな発想になってしまったりもします(笑)。
 
阿部:それは練習中からですか?
 
小野澤:練習からそういう気持ちですね。ミスをしないためには、何でも準備しますし、意識することで防げるミスは、事前に潰しておくようにしています。
 
阿部:やっぱり準備は大事ですよね。サッカーでも試合が終わった後の最初の練習からは次の試合に向けての準備が始まって、その準備が良ければ、良いイメージで試合に臨めます。けれど、準備が良くないからといって、ネガティブな気持ちで試合に臨むことは良くなくて、練習でもしないようなミスを試合でしてしまうことになります。だから、僕は良い意味で、準備にとらわれすぎないようにはしています。
 
小野澤:阿部さんはどんなことに注意をしながら準備をしているんですか?
 
阿部:僕はあまり調整をしたくないタイプで、試合前になると練習量を落としたりする選手もいますが、僕は全部の練習をしっかりやりたいと思って準備をしています。試合に合わせて練習をするのではなく、自分が上手くなるために毎日毎日しっかり練習をしようと心掛けています。
 
小野澤:その若さは良いね(笑)。

『フェイントで裏をついた時は楽しい』(阿部)
 
――同じクラブハウスをサンゴリアスが使っていますが、ラグビーの練習を見ることはありますか?
 
阿部:何回か見たことがあります。練習が激しくて、「ヤバいな~」って思っています。あと体が大きいですよね。練習を見ていて、自分がこの中に入ったら、潰されるんじゃないかって思います。
 
小野澤:ポジションにもよりますけど、出来るんじゃないかなって思いますよ。気持ち次第ですよ(笑)。
 
阿部:僕らのトレーニングルームはガラス張りなので、サントリーさんがグラウンドで練習している姿を見ますし、あとサントリーさんが使っているトレーニングルームはクラブハウスの外にあるので覗いたりしますが、トレーニングをしている姿を見ると怖くなります(笑)。
 
小野澤:サッカー選手はあまり筋トレはやらないものですか?
 
阿部:人それぞれになりますけど、全選手が筋トレをやるわけではないですね。僕もあまり筋トレをやる方ではありません。
 

――小野澤選手はサッカーの練習を見ていてどう感じますか?
 
小野澤:トップチームの練習は高い位置のグラウンドでやっているので見えないんですが、若い選手たちがやっている練習を見ると、「やっぱりサッカーは楽しそうだな」って思います。ラグビーは楽しさを見出すまでに時間がかかるスポーツですよ(笑)。
サントリーの場合は社会人チームなので、小さい子が同じ敷地内で練習をすることはないんですが、ヴェルディさんのように大人も子供も同じ敷地内で練習をしている環境を見ていると、僕もそろそろ次のキャリアを考える年齢になってきているので、普及や育成には興味ありますね。子供たちから憧れの目で見られる環境になってみたいです。
 
阿部:僕らもどういう目で見られているか分からないですけどね(笑)。
 
小野澤:きっと子供たちは、あそこで練習したいと思って見ていると思いますよ。
 
――阿部選手はサッカー以外でやってきたスポーツはありますか?
 
阿部:サッカーだけですね。たぶん運動音痴で、学校の授業でバスケットをやった時はすごく下手くそでした。野球もボールが上手く投げられませんでした。
 
小野澤:何歳からサッカーをやっているんですか?
 
阿部:幼稚園の年中からなので、5歳くらいからだと思います。もともと兄がサッカーをやっていて、それがきっかけで僕もサッカーを始めました。気がついたらサッカーをしていたという感じですね。
 
――サッカーのどこが面白いと思いますか?
 
阿部:一言じゃ言えないですね。全部が面白いです。サッカーを見ていても、考えてプレーしている選手もいれば、フィジカルだけで勝負している選手もいますし、単純にすごいシュートが決まることもありますし、いろいろな要素があって面白いですね。戦術もチームによっていろいろあるので、見ていても面白いですね。
自分がプレーする上では、相手を抜いた時はすごく充実感があります。僕はフィジカルでは勝負が出来ないので、フィジカルが強い選手相手にフェイントで裏をついた時などは楽しいです。
 
小野澤:僕も近いものがありますね。抜く瞬間に相手に「うわっ」とか言われたいですもん。相手の逆をついて、相手が動けない時とかは、魅せたと思いますね(笑)。

『怪我じゃなくて痛いだけ』(小野澤)
――小野澤選手から伸び盛りの阿部選手にメッセージはありますか?
 
小野澤:余計なことを考える年齢になってから、余計なことは考えればいいので、そのまま行かなきゃダメだと思いますよ。うちのチームの長友(泰憲)にも同じことを言っています。
 
阿部:若い頃と比べて、考え方は変わりましたか?
 
小野澤:年齢が上がれば、リスクも見えてきますし、年齢に伴う優位性も見えてきます。けれど、それによって可能性を小さくしてしまうこともあると思います。どうなるか分からないことを、分かったように考える必要はないと思っていて、こうすれば点が取れるということよりも、むしろラッキーで点が取れてしまうことの方が多かったりするので、周りの人たちは純粋に応援して見ている方が良いと思います。
 
――長期的な目標はありますか?
 
阿部:まだまだ漠然とした目標ですが、個人的には海外でプレーしてみたいですね。自分の力を試したいという気持ちもありますが、海外のチームの選手はどういう考え方でサッカーをするのかに興味があります。小野澤さんはありますか?
 
小野澤:僕にも聞きますか(笑)?僕の場合は、目の前のことを1つずつやっていくだけです。この年齢ですし、海外ということも難しいですね。時代のせいにして引退しようと思います(笑)。
 
阿部:若い選手の中には海外でプレーしている選手もいるんですか?
 
小野澤:少しずつ海外でプレーする選手は出てきていますが、本契約が結べるかも分からなかったり、ラグビーの世界ではプロとしていろいろなチームが成立している環境ではないので、海外でラグビーするということも難しいと思います。
 

――今シーズンの目標は?
 
阿部:今はJ2で戦っているので、J1に昇格することが目標です。最近はあまり良い結果を残すことが出来ていないので、これから上げていきたいと思います。個人的には、J1昇格に向けていかに貢献出来るかというところですね。
 
――怪我には強い方ですか?
 
阿部:あまり強い方だとは思わないですが、大きい怪我はしたことがないですね。これまでに1回くらいだと思います。
 
小野澤:どういう怪我をしたんですか?
 
阿部:一昨年に、左足の甲を骨折して、5ヶ月くらいは休んでしまいました。怪我をしている時は苦しいですね。今振り返ると、怪我しないようにしっかりと体のケアをしようという考えにもなれたので、良い経験だったと思います。小野澤さんは怪我には強いんですか?
 
小野澤:あまり大きい怪我はしないですね。この年齢にもなると、いろいろな経験もして、引き出しも増えています(笑)。うちのチームの中には、「怪我じゃなくて痛いだけ」という言葉があるんですよ。だから、痛いだけなんだなって思ってやっています。けれど、その状態で試合に出て、パフォーマンスが悪ければ怒られるので、試合中は「準備してきたんだから、きっと大丈夫」って祈りながらプレーします。
 
阿部:すごいっすね(笑)。
 
 
 
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)[写真:長尾亜紀]

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