「新旧チームマネージャー対談」
現役引退後、アナリストを経て、2018/19シーズンから4シーズン、チームマネージャーを務め、現在、運営・ファン事業グループに所属する松﨑 廣光スタッフと、2021/22シーズンをもってユニフォームを脱ぎ、昨シーズンからチームマネージャーとして奮闘する加藤 久典スタッフによる“新旧チームマネージャー対談”をお届け!チームを近くで支えるマネージャーだからこそ知っているサンバーズの事件簿とは?松崎スタッフがはじめた試合前のインスタライブはどうして終わっちゃったの?など、思う存分語ってもらいました!
サンバーズのお客様サポートセンター(笑)
2022/23シーズン、『チームマネージャー』の肩書きが松﨑スタッフから加藤スタッフへバトンタッチされました。まずは、マネージャーの仕事について簡単に教えていただけますか。
松﨑 |
遠征の手配やスケジュールの管理、チームの情報を発信したり…。 |
加藤 |
『月刊バレーボール』の巻末にある『チームの話題』というコーナーがあるんですが、そこに載っている情報もマネージャーが文章を考えて編集部に送っているんです。 |
松﨑 |
細かい仕事を上げるとキリがないくらいたくさんありますね。コーチ陣や選手からの「こうして欲しい」「ああして欲しい」といった声は、一旦すべてマネージャーが受けることになりますので、僕がマネージャーをしていた時は、頼られる存在になろうと思っていました。僕の場合、選手は全員後輩だったので、お兄ちゃん的な立場でフォローしようと。そういう意味では、加藤は、選手の中には先輩もいたので、お兄ちゃんという接し方は難しいよね。 |
加藤 |
そうですね。1シーズン経験し、チームマネージャーは、サンバーズのお客様サポートセンターだと思いました。 |
マネージャーはつらいよ!?
お客様サポートセンターですか(笑)。チームマネージャーの仕事で大変なことは何なのでしょうか。
加藤 |
外国人選手の登録ですかね? |
松﨑 |
確かに、大変だね(苦笑)。シーズンが終わると、外国人選手のビザが切れるので、新シーズンの前に、ビザを取り直さないといけないんです。その上で、リーグが定める国際移籍に関する手続きをしないといけなくて。それを終えていないと、V・リーグの選手登録ができないので、試合に出られなくなっちゃう。インターネットで行うのですが、英語だし、海外への送金もあって、毎年のことですが、その一連の作業がめちゃくちゃ大変でしたね。 |
加藤 |
今だから言えるんですけど、昨シーズンはギリギリでした(苦笑)! |
松﨑 |
あと、新外国人選手の部屋探しも大変ですね。特に、ディマ(ドミトリー・ムセルスキー)の場合、身長が218cmもあるから、賃貸物件は天井高が低くて、浴室はだいたい2mくらい。結局、ディマには今も浴室が2mの物件で我慢してもらっています。 |
加藤 |
さすがにディマも毎日首を曲げて浴室を使うのが嫌になったみたいで、引っ越したいと言っていて…。今、(小川)猛(通訳)に希望を聞いてもらっています。 |
松﨑 |
あと、大変なことというと、この時期、リーグ戦のスケジュールがある程度決まり、遠征先のホテルをどんどん予約していくんです。チームが宿泊するホテルは、全員が集まって食事やミーティングができるよう大きな宴会場が必要で、そういうホテルは地方では限られています。昔は、1つの会場に4チームが集まり試合をすることもあったので、早くホテルを抑えないと、部屋がなくなってしまう。今は、ホームアンドアウエーになり、2チームだけなので、以前より楽になりましたけど、それでも大変ですね。 |
加藤 |
コロナも落ち着いてきて、旅行に行く人が増えたので、できるだけ早くホテルは抑えるようにしています。 |
松﨑 |
それに、試合日程が直前に変わると大変だよね。 |
加藤 |
新幹線、飛行機といった移動手段の予約も変更しないといけないのでホント大変ですね。 |
松﨑 |
僕の時も何度かあって、その都度、対応して大変だった。 |
大ピンチ!サンバーズ事件簿
「大変」を連発しているお二人ですが(笑)、マネージャーをしていて、これまでで一番のピンチは?
松﨑 |
マネージャーになって1年目の黒鷲旗開会式かな。選手時代、毎年といっていいほど、開会式の前はバスの中で30分ほど待っていたので、30分遅らせて出発したら、事故が起きていて会場に行くまでの道が大渋滞!きっと他のチームも渋滞に巻き込まれているだろうと思って、大会運営サイドに連絡をしたら、「サンバーズさんだけです」と。あの時は、めちゃくちゃ焦りましたね。 |
加藤 |
覚えています。開会式の時間が迫っているけど、間に合うのかなと。バスが着いた瞬間、みんなで中体育館までダッシュしましたよね(笑)。 |
松﨑 |
全チーム、すでに整列していて、サンバーズのところだけが1列空いていて、滑り込みでセーフ!あれはマネージャーをした4シーズンの中で、一番のピンチでした。マネージャーになってすぐは、時間設定をはじめ、いろいろな面で攻めていましたが、黒鷲旗事件から教訓を得て、余裕を持たせたり、適度に調整したりすることを覚えましたね。 |
海外遠征は大変なんです!アジア事件簿
加藤 |
僕は今年の「アジアクラブ選手権大会」ですね。大会前日にチーム関係者が集まって会議をし、最終エントリーなどの手続きを行うんですけど、大会サイドがなぜか外国人選手の出場を許可してくれなくて…。僕は事前に外国人選手の出場にあたり、やるべきことはすべてやって、FIVB(国際バレーボール連盟)から承諾を得ているのに、大会サイドは頑なにダメだと。最終的に許可されたんですけど、ディマ、(デ アルマス)アライン、ポン(彭 世坤)が出られなかったら……。あの時は、本当にピンチでしたね。 |
松﨑 |
通信環境はどうだったの? |
加藤 |
ホテルでも会場でも通信状態は良かったです。 |
松﨑 |
昨年のアジアクラブ選手権開催地のイランは、モバイルルーターが使える国から外れていて、めちゃくちゃ大変だった。 |
加藤 |
そうでしたよね。ホテルのWi-Fiも微弱で、苦労したことを覚えています。 |
松﨑 |
そういえば、イランに着いた時もピンチだった。 |
加藤 |
出国時もピンチでしたよ(苦笑)。 |
松﨑 |
まず着いた時は、現地のコーディネーターが空港の到着ロビーで待ってくれているものだと思っていたのに、誰もいなくて…。どこに行けばいいのかわからないし、選手たちは何があったんだとか、ホテルに早く行きたいとかいろいろと言ってくるし、ちょっと待ってくれと(苦笑)。 |
加藤 |
たまたま通りがかった日本語を話せる現地の人に助けてもらったんですよね。 |
松﨑 |
その人がコーディネーターを探してくれて、無事にホテルにたどり着くことができた。出国時の事件は、昨年はまだ出発する前にPCR検査をして陰性証明書を見せる必要があったんですけど、空港の担当者が、このフォーマットじゃダメだと言ってきて…。現地のバレーボール協会経由で手配してもらった病院なので、そんなはずはないと、コーディネーターを介して延々と交渉したけど、埒が明かない。そうこうしている内に飛行機の出発時間が迫ってくるし、このままでは日本に帰れない可能性があるので、僕と加藤、空港で交渉する係とホテルとバスなどの手配をする係に分かれて動いていました。結局、僕らが提出したフォーマットで問題ないということになって、離陸5分前に飛行機に乗ることができましたけど、あの時もハラハラしましたね。 |
日本勢初のアジア制覇!陰のMVPは…。
「アジアクラブ選手権大会」は、昨年は準優勝、今年は優勝と、チームは素晴らしい成績を納めましたが、その裏で、マネージャーは東奔西走していたんですね。
松﨑 |
海外遠征は予期せぬ出来事が起こるので、国内以上に気が張りますよね。 |
加藤 |
松さんにもバーレーンに来てほしかったんですけど…(笑)。 |
松﨑 |
バーレーンの出入国はどうだったの? |
加藤 |
イランと違ってスムーズでした! |
松﨑 |
外国人選手の登録でトラブったけれど、無事試合に出ることができたし、日本チームで初となるアジア制覇を達成できたのは、加藤のお陰だな。 |
大好評だった試合前インスタライブ
本当にそうですね。ところで、チームマネージャーの仕事をしている中で、満足感や達成感を得られる時というのは?
松﨑 |
遠征の時に、移動を含めて、荷物を送る手配、ホテルの部屋数、食事の数など、すべてのことが段取り通りに運ぶと、気持ちがいいですね。バラバラのピースがカチッとはまったみたいな感じで嬉しい。ただ、マネージャーの仕事は、すべてがうまくいって当たり前で、常に100点を求められています。それが当たり前だと思っていたので、プラスアルファとして、僕がマネージャーをしていた時に、インスタライブを始めました。もともとイタリアのチームが試合前に選手の様子をライブ配信していて、いいなと思っていたんです。それを参考にして2019/20シーズンからスタートし、最初は選手の様子を流すだけだったんですけど、途中からファンの方々が書き込んでくれた質問に答えるようになって、最終的に選手に話しかけたり、雰囲気を実況したり、ずっと喋り続ける形になりました。多くの方に視聴していただいて、すごく好評だったんですけど…。 |
インスタライブの復活なるか!?
そういえば、加藤マネージャーになってから、インスタライブをやっていませんよね?
加藤 |
そうなんです。 |
松﨑 |
加藤からインスタライブをやめたいと相談があって。 |
加藤 |
その代わりに動画を作って配信することにしました。 |
松﨑 |
選手インタビューを盛り込むなど、あれもいいと思うけど、大変じゃない? |
加藤 |
移動中、ずっとパソコンに向かって動画編集していますね。 |
松﨑 |
それはそれで大変だ!だけど、なんでインスタライブをやめようと思ったの? |
加藤 |
通信状態で画面がぼやけたり途切れたり、また選手が未発表の情報を言ってしまうようなことがないよう気をつけたりと、気を使うことも多い中で、僕自身、まだ余裕がなくて…。 |
松﨑 |
確かに、選手の発言は、事前に伝えておくなどして気をつけないといけないな。けど、通信状況の件は、逆にライブ感があっていいんじゃない?会場の雰囲気を共有しているように思えるし。 |
加藤 |
そうですよね。 |
松﨑 |
僕がマネージャーをしていた時は、全試合でインスタライブをしていたけど、例えばホームゲームのうち数試合で実施するなど、できる範囲で配信してみたらどう? |
加藤 |
前向きに検討します! |
マネージャーに向いている性格って?
加藤マネージャーの頑張り次第ですね(笑)。ところで、マネージャー向きの性格というのはあるのでしょうか?
松﨑 |
まずスケジュール管理ができないといけないですし、いろいろと頼まれることも多いので、優しくないとできないと思います。そういう性格を含めて加藤はマネージャーに向いていますね。 |
加藤 |
牟田(真司)さん(OB)、松さんといった歴代のマネージャーさんから、次のマネージャーは加藤だと言われ続けてきました(笑)。 |
松﨑 |
加藤は入団した時からしっかりしていたもん。 |
加藤 |
普通のことを普通にしただけですよ。 |
松﨑 |
マネージャーは責任もあるし、やらないといけない仕事も多い。誰でもできる仕事ではないと思うし、僕の後任を決める時は、加藤を指名させていただきました。 |
加藤 |
僕はまだ(後任の件)聞かれていないですよ(笑)。 |
チームの勝利がやりがいです!
チームマネージャーというのは、改めて縁の下の力持ちだということがわかりました。チームマネージャーのやりがいとは?
松﨑 |
僕はもともとサンバーズが好きで、憧れていました。そういうチームに入ることができ、選手としてプレーし、引退後、サンバーズを支える側になった。子供の頃から好きだったチームが、何事もなく練習や試合ができるよう手配したり、魅力を発信したりすることは、すごいことだなと思って、そこにやりがいを感じていましたね。 |
加藤 |
僕はチームが勝つことがやりがいです。みんなが、ストレスを感じることなく、練習ができ、試合で最高のパフォーマンスを発揮し勝利してくれて、ファンの方々が喜んでくれればいいんです。僕は黒子に徹して、チームをサポートします。 |
松﨑 |
チームが勝ってくれることが、一番のやりがいだよね。マネージャーはチームと向き合う時間が長い分、勝てば喜びも大きいし、負けると本気で悔しい。それに、あまり出場機会がなかった選手がコートに立って活躍したら、親のような気持ちで嬉しくなる。もちろん、今も勝てば嬉しいし負ければ悔しいけど、少しチームから離れた立場になったので、マネージャーをしていた時の方が思いは強かったなって。マネージャーは大変だけど、サンバーズの魅力を一番近くで感じることができるので、加藤には頑張ってもらいたいな。 |
加藤 |
昨シーズン、V・リーグ、黒鷲旗と決勝戦で敗れ、選手の時以上に悔しさを感じました。松さんの気持ちはよくわかります。今シーズン、V・リーグで王者奪還できるよう、チームをしっかりサポートし、ファンの皆様にはいろいろな情報を発信できるよう頑張ります! |
加藤マネージャー、頑張ってくださいね。ありがとうございました!
チームをあらゆる面からサポートするチームマネージャー。遠征の際、選手がADカード(大会身分証)を忘れた時には、なんと松﨑スタッフが夜中に車を飛ばして取りに行ったこともあるとか。チームマネージャーに必要なのは、不測の事態が起きた時の「対応力」と「ネットワーク環境」だときっぱり言い切ります。
大変なことは多いけれど、「チームの勝利がやりがい」という加藤マネージャーは、1シーズン経験し、仕事にも随分慣れてきたそうです。来シーズンは、サンバーズのV奪還と試合前のインスタライブ復活をどうぞご期待ください!(取材日:2023年6月14日)
松﨑スタッフは「選手の話を聞く時は兄のような感じで、何かやってもらわないといけない時は、お母さんのような感じで『ちゃんとやりなさい!』と、使い分けていましたね」と話していました。
「松さんがマネージャーとして優秀だったので、後任は大変なんです」と、現チームマネージャーの加藤スタッフ。コーチ陣、選手から信頼を重ねていき、日本一のチームマネージャーを目指します。
あんなことあった、こんなこともあったと大盛り上がりでした。