難しいシチュエーションで打つほうが燃える。
今季はさらにいいパフォーマンスを
「問題をクリアし続けて、ファイナルにたどり着けた」
- — 2022-23シーズンを振り返って、ムセルスキー選手にとってはどんなシーズンでしたか?
すごくタフなシーズンで、自分のコンディション的にも問題が多いシーズンでした。2回ほど体調を崩して長い間練習できなかったり、肩に問題を抱えて出場できなかった試合も何試合かありました。それがスコアや、チームの勝敗に影響した部分もあったと思います。他にもチーム内で多少問題がありましたが、チームとしてどうにかそういう問題をクリアしようと頑張ったシーズンでした。
うまくいった部分もあれば、うまくいかなかった部分もありましたが、振り返った時に、いろいろな問題を抱えながらも、それをクリアしていって、ファイナルまでたどり着けたことはよかった。ファイナルに行くに値するチームだったのではないかと思っています。選手、スタッフ1人1人が、チームの目標に向かって、しっかりと自分のやるべきことをやっていた。ナイススピリッツを示したと思います。
- — 23-24シーズンはムセルスキー選手にとって、サンバーズでの6年目のシーズンとなります。これだけ長くサンバーズでプレーしている理由はどこにあるのでしょうか?
すべてを気に入っているからです。チームのことがすごく好きですし、環境もいいので。私が他のことを気にせず、毎日100%バレーボールだけに集中できるような環境を、周りのスタッフが整えてくれるので、すごくやりやすいんです。自分がチームを選ぶ時に、こういうふうにやりたいなとイメージする条件に、サンバーズはすべて当てはまっていますから。
- — バレー以外の面、住み心地などはいかがですか?
すべてがとてもいいです。こちらで友達もできましたし、日本には訪れたい素敵なところがたくさんあります。海に行こうと思えば、箕面からも行けますし、竹林やお城、昔の文化などに触れたいと思った時に、そういう場所を訪れることもできる。すべてが揃っています。それに、箕面にもまだ訪れていない場所がたくさんあって、全部制覇できていませんから(笑)
- — 今まで訪れた中で印象に残っている場所は?
友人が琵琶湖の近くに住んでいて、そこでみんなでバーベキューをしたことがいい思い出です。
- — 5年前、最初にサンバーズに来た時の印象は?
最初にここに来た時は、すべてがそれまでのロシアでの暮らしとは違ったので、何がどこにあるのか、どういうふうに暮らしていけばいいのかがわからなかった。晩ご飯もどこに食べにいけばいいのか。だから当時通訳だったリマ・ダニエルさんにいろいろと教えてもらいました。当時は息子がまだ3歳だったので、彼が食べられるものを見つけるのが大変でした。それがファーストインプレッションです(苦笑)
チームの印象としては、すごくエネルギーを感じました。選手たちは、疲れていたり、何かフィジカルに問題を抱えていたりしても、体育館に来たら、1人1人みんな、自分ができる100%を練習で出していて、熱量がすごいと感じましたね。
たくさんの経験を得ても、変わらぬ熱量
- — この5年間でチームが変わったと感じるところはありますか?
選手1人1人がものすごく成長しました。みんな、たくさん経験を積んできたので。興味深いのは、それでもみんなが、僕が来た当初と変わらない熱量で練習に取り組んでいることです。昔と変わらず、自分たちの出せるベストを試合でも練習でも出している。それは本当にすごいことです。ステキです(日本語で)。
- — ムセルスキー選手が来た時のサンバーズはまだ優勝から遠ざかっていて、その後、リーグ2連覇を成し遂げました。優勝を経験したことで、何かチームの変化を感じられた部分はありましたか?
優勝したり、タイトルを獲ったりすると、必ずついてくるものがあります。“余裕”です。それはいい意味でも、よくない意味でも。よくない意味というのは、「ベストを尽くさなくても十分だ」と考えてしまう恐れがあること。試合中、「100%でやらなくても勝てるんじゃないか」「50%ぐらいの力で十分なんじゃないか」と思ってしまうことです。
昨シーズンでいうと、前半戦の(10月29日の)VC長野トライデンツ戦がそうだったんじゃないでしょうか。私の経験上、タイトルを獲って、そういう感覚に陥らずにいられる選手は見たことがありません。そうなってしまうのは自然なこと。マインドトラップのようなもので、避けようと思っても不可能なんです。
ただ、サンバーズにとってよかったのは、それが出た試合が、シーズンがまだ始まったばかりの段階だったこと。それがチームにとっていい教訓になり、その後に生かすことができた。シーズンを通して、1試合1試合どの試合も、決して気を抜いてはいけない、というふうに引き締めて戦うことができました。
- — Vリーグは、今はアジア枠もできましたが、外国籍選手の枠がチームに1つで、オポジットのムセルスキー選手は打数が多く、ご自身のコンディションや決定率が勝敗に及ぼす影響も大きいと思います。その分プレッシャーも大きいのでは?
特にそういうプレッシャーは感じていません。私は試合に出て、スパイクを打つのがすごく好きなので。
- — 以前はミドルブロッカーでしたが、ミドルをまたやってみたいという思いは?
それはないですね。私はハイボールなど、難しいトスを打っていくのが好きなので。ブロックや、クイックを打つことに比べると、難しいシチュエーションで打つほうが、モチベーションが上がって、燃えるんです(笑)
- — 今後、選手としてやり遂げたいことはありますか?
Vリーグ、天皇杯、黒鷲旗、アジアカップを制覇することですね。1シーズンで四冠できたら素晴らしいですね(笑)
- — いずれ現役生活を引退したあと、やりたいことはありますか?
アイデアはいくつか出てきているんですけど、まだハッキリとしたものはありません。自分がやりたいことが何なのか、心と相談して決めていくという感じですね。
- — バレーには携わっていきますか?
ハッキリはしていませんが、たぶん「ノー」。別のことをすると思います。バレーボールはもう十分。お腹いっぱいですから(笑)
- — 日本に来た時はまだ3歳だった息子さんももう8歳。日本の学校に通っているのですか?
日本にいる間はインターナショナルスクールに通っています。バレーボールも始めました。サンバーズジュニアで練習しています。彼は本当にバレーボールをするのが好きで、家の中でも風船を使って毎日バレーをしています。
- — 将来はバレーボール選手になるのが夢なんでしょうか?
(バレー選手に)「なる」と言う時もあれば、「ならない」と言う時もあります。私としては、本人が幸せになってくれたらそれでいい。自分の将来は自分で決めるものなので。彼が選んだ道に対して、全力でサポートしてあげたいなと思っています。
- — 最後に、サンバーズのファンの皆さんへメッセージをお願いします。
シーズンを通していつも、たとえチームが悪い状況にある時も、会場まで足を運んでくれたり、応援をしてくれてありがとうございます。次のシーズンでは、より一層いいパフォーマンスを見せたいと思っています。現時点で、選手たち全員がそういう高いモチベーションを持って、燃えていますので、今シーズンも応援よろしくお願いします。
13
Opposite
ドミトリー ムセルスキー
プロフィール