視野を広げてくれた日本代表での経験。
サンバーズを、誰かが悪くても誰かが助けられるチームに
自分が出られなくても、チームを応援できるようになった
- — 今年は5月のアジアクラブ選手権を終えたあと、長期間日本代表で合宿や国際大会を経験しました。そこで得た収穫や、サンバーズで活かしたいことはありましたか?
そうですね、以前より周りを見ることができるようになったかなと思います。サンバーズと違って、代表ではずっと試合に出ているわけじゃなかったので、その分、相手を分析する力がついたのかなと。サンバーズに帰ってから、「相手がこうしてきそうだな」というのが、以前よりも当たることが多くなりました。
もちろん試合に出ることを最優先に考えなきゃいけないんですけど、外から見る時間というのもすごく大事だったし、ネーションズリーグも世界選手権も、意外と冷静に戦えていた。途中出場でも思った以上にやれたところがあったので、それが自信になりましたし、海外に向けての視野が広くなりました。アジアクラブ選手権も含めて、海外に対して結果を出したいという思いが強くなっています。
- — 日本代表ではリザーブという役割でしたが、世界選手権では二枚替えなどの短い出場機会でも、好守備を連発するなど存在感を発揮していました。そこに至るまでには、リザーブの立場の難しさや葛藤もありましたか?
正直なところ、昨年までは、自分が出ていない試合って、あまり応援できない自分がいました。でも今年の黒鷲旗で、僕が(代表合宿に参加していたため)いなくて西田(寛基)が試合に出ていた時に、めちゃくちゃ応援していたんです。画面越しに「頑張れー!」って。なんの変化があったのかわからないんですけど…。
私事ですけど、今年3月に子供が生まれたんですよ。たぶん、そこから、1人1人を見る目が変わったというか、人を大事にするようになったというか、人に優しくなったのかなと(笑)。
- — そんな変化があったんですね。
たぶんですけど、それが理由の1つなんじゃないかと思います。以前は「絶対に試合に出ないといけない。出なきゃ自分の価値がゼロだ」という気持ちでした。でもそこが変わってきたというか。
代表でも、(正セッターの)関田(誠大・ジェイテクトSTINGS)さんに自分からコミュニケーションを取りにいくようになったし、代表のあのチームが好きになっていった。だから自分がベンチでも、(チームの勝利を)しっかり喜んでいたし、全員で“チーム一丸”を体現できた時は、「すごくいいチームだな!」と実感できた。特に世界選手権の最終戦(フランス戦)は、負けちゃいましたけど、ベンチもすごく一体になっていて、本当にいいチームが作れていたなと感じたし、そういうチームをサンバーズでも作りたいと思ったので、帰ってきてからはいろんな選手とコミュニケーションを取るように意識しています。
二枚替えもすごく大事な役割だと思ったし、例えばリリーフサーバーなどもすごく重要なポジション。1人1人に役割は絶対にあって、スタートから出ているから偉いとか、そういうことはない。自分がリザーブを経験したからこそ、リザーブの人たちの気持ちもわかったので、そこを今シーズンはサンバーズでも大事にして、リザーブの人たちへの声かけも徹底したいと思っています。
それと当時に、自分自身のバレーボールの幅も、もっと増やしたいと思いました。関田さんは昨シーズン海外のリーグを経験して、1年ですごくレベルアップされていました。昨年までは、頑張れば手が届く位置にいるって、勝手に思っていたんですけど、今年一緒にやっている中で、「あ、かなわないな」と思ったことが何回もありました。負けを認めたわけじゃないし、そこを追い越さないと絶対に(日本代表の)中心選手にはなれないし、彼がいるからこそもっと頑張れるんですけどね。
- — かなわないなと思った部分というのは?
もともとトスの質や精度はすごくいい選手だったんですけど、今年は本当にブレがなくて、その中にトリッキーさがあった。なんというか、奇襲が奇襲じゃないというか。奇襲って、決まればいいですけど、そこで得点にならなかったりミスした時に、ガタガタ崩れていってしまうんですが、関田さんの場合は毎回うまくハマるんです。たぶん彼は奇襲だとも思ってなくて、技術があってそこを使えるから使ってるだけ、という感じだと思う。例えば難しいところからのクイックだったり、僕が「そっからそこに上げる?」と思うようなトスを、精度高く上げていた。世界選手権の最後のフランス戦であそこまで(フルセットで)戦えたのは、関田さんのおかげだと思います。
相手にいると嫌な選手だし、何を考えているかまだちょっと理解できなかった。今年は自分からいろいろ聞くようになったんですけど、あまり話してくれるタイプじゃないので、「お前のほうがうまいよ」とか言われて、かわされた(苦笑)。でもいいライバルというか、目標が近くにいるのはいいことだし、今シーズンはVリーグに帰ってきてくれたので、対戦相手としては負けたくないなと思っています。
人に頼ることも、プレーの幅を広げるために必要
- — 日本代表からサンバーズに戻って、取り組んでいることは?
前衛のレフトのスパイク決定率と効果率を上げるということをやってきましたし、ブロックを見るということも、難しい技術ですけど、よりできるように挑戦しています。トスを上げる前に1回相手を見なさいというのはずっと言われてきたんですけど、それって結構難しくて。サーブレシーブの質だったり、返ってくる場所にもよりますし。イタリアのセッターとか、すごく(ブロックを)見ていたイメージがあるんですけど、どうやって見てるんだろう…。目線だけずらして見られれば一番いいんですけど、首を振って見ちゃうと、軸がぶれてしまう。返球がAパスだったら、目線だけで確認できるんですけどね。いろいろ工夫しながらやろうと思っています。それができてくれば、僕のトス回しも変えられるチャンスがある。昨シーズンと同じバレーをしていても絶対に勝てないと思うから。
関田さんは、毎回トスを上げたあとにも、今どこにブロックが来ていたかというのを確認していました。それを確認しながら、そのあとのトス回しを考えている。もちろんデータも事前に見ますけど、試合によって相手の対応も変わってくるので、その日のブロックのつき方を、序盤のうちに確かめながらやるのも一つの手だと思いました。あと、ベンチにいる僕にも「今ブロックどうやってついてきた?」と聞いてくるし、監督とも試合中にすごくコミュニケーションを取って、いろいろな人を頼りながら、自分のものにしていました。
僕は逆に今までは、自分でやりたいというか、あまり人に頼るということをしてこなかったんです。なんか(他の選手に)負けたくないというのもあったし、練習してきたのは自分だからそこを信じてやるんだ、というのがあったから。例えば「相手のオポジットが前衛にいるから、そこは避けて攻撃しなさい」と言われたら、逆にそこで決めさせたい、みたいな思いがあった。頑固なんで、自分(笑)。言われたらイラッとしてしまうこともありました。でも、冷静に見てくれているからこそのアドバイスなので、そこもしっかり聞き入れながらやっていこうと、今は感じています。
今サンバーズではリザーブに西田がいて、西田もすごく見てくれていると思うので、他の選手にも頼りながらやっていければ。ライバル心は大切だと思うし、それがなくなってしまったら自分じゃないと思うので、そこは消したくはないですけど、チームとして戦っている以上、助けも必要なので。代表で、僕がリザーブで関田さんにそうやって聞かれた時に、「あ、ちゃんと見なきゃいけない」と思ったことで、よりしっかり準備できるようになったんですよね。サンバーズでも、僕が悪い時には西田が出るので、そのための準備もさせてあげられるのかなと。
- — 夏場、長期間チームを離れていて、久しぶりにサンバーズに戻った時、チームの変化をどう感じましたか?
ミドルブロッカー陣がすごく成長していました。(小川)猛さんも、(佐藤)謙次も、(柏田)樹も、めちゃくちゃよくなっていた。昨シーズンまでは(小野)遥輝と彭(世坤)でしたけど、今シーズンは誰が出てもいいんじゃないですか。ミドルの層はかなり厚くなったと思います。本当にみんな成長しています。びっくりしました。
- — メンバーが変わり新たにスタートした今シーズンの目標は?
もちろん3連覇を目指しながら、個人としてのレベルアップをもっともっとしたい。キャプテンももう3年目なので、周りを見ながらチームをまとめて動かすということも率先してやっていこうと思います。僕自身Vリーグ5シーズン目で、節目の年なので、いいシーズンにしたい気持ちは強いです。サンバーズは過去に5連覇を達成しているチームなので、そこにも挑戦したい、その歴史を僕らが塗り替えたいという思いもあります。そのためにも、まずは今シーズンしっかり勝ちきりたいですね。
- — 開幕して3週間、6試合を終えて感じている手応えや課題はどんなところでしょうか?
(11月6日インタビュー時点) まだ3チームとしか対戦していませんが、みんなが僕らをターゲットにしているというか、3連覇を阻止しようという熱量が伝わってきます。本当に、簡単には勝たせてもらえない。昨シーズンの順位なんてまったく関係ないシーズンになると思うし、1試合1試合を決勝のように戦っていかないと、どこが相手でもコロッと負けてしまうというのは、この6試合を通してチームとして痛感していることです。本当にその週末を全力で戦うために、もっともっと質の高い練習をしていかないといけないし、雰囲気作りもそう。試合で結果を出すために何が必要なのかということを、この早い段階で気づけたことはよかったと思います。今後もまたレベルの高い相手との試合が続きますが、とにかくチーム全員で、誰かの調子が悪くても誰かが助けるという試合ができるチームだと思っているので、仲間を信じて戦っていきたい。そうすれば、いい結果につながっていくのかなと思っています。今シーズンも、応援よろしくお願いします。