令和6年度天皇杯・皇后杯 全日本選手権大会 ファイナルラウンド 12月22日(日) 決勝戦
- 開催日時
- 2024年12月22日(日) 14:00
- 会場
- Asueアリーナ大阪
3
- 25-12
- 25-22
- 25-17
WIN
0
試合経過
天皇杯全日本バレーボール選手権大会決勝。サンバーズは14年ぶりの優勝を目指し、現在SVリーグで2位につける大阪ブルテオンと対戦した。ブルテオンとは10月のSVリーグ開幕週に2連敗して以来の対戦。その時とは違った姿で、今季一つ目のタイトルを獲りにいく。
第1セットの立ち上がりは0-2と先行されるが、髙橋藍が巧みなサーブで崩し、立て続けに得点チャンスを生み出す。ブルテオンのトーマス・ジェスキーのパイプ攻撃をムセルスキーが左手1本でシャットアウトして追いつくと、西田有志のスパイクを柏田、シリフカが連続でブロック。さらにシリフカのスパイクで切り返し、一挙6連続得点で6-2とリードした。
得意のショートサーブを織り交ぜて相手を翻弄し流れを引き寄せた髙橋藍は、狙いについて「まずブルテオンにはリベロの山本(智大)選手がいる中で、そこに打つ意味はないし、アウトサイドの外国人選手(ジェスキー、ミゲル・ロペス)が並んでいたので、相手のパイプ攻撃を潰すのか、レフト側を苦しい体勢にするのか、考えながらショートサーブも交ぜていきました。僕がサーブの時は前にディマ(ムセルスキー)や小野寺選手がいてブロックで勝負できるので、自分がサービスエースを取るというよりも、相手の攻撃枚数を減らすことを意識していました」と明かした。
サンバーズはその後もサーブで揺さぶり、ブロックとディグが完璧にハマった。藤中颯、髙橋藍を中心とした好守備で相手にスパイクを決めさせず、髙橋藍のパイプ攻撃でブレイクしたり、ムセルスキーのノータッチエースなどで11-6と引き離す。中盤以降も大宅のブロックや、シリフカ、大宅の好守備を髙橋藍、ムセルスキーが得点に繋げ18-8と大差をつける。終盤も柏田のクイックやムセルスキーのブロックなどで点差を広げ、第1セットを先取した。
第2セットは髙橋藍が緩急をつけたスパイクを決め先行するが、ブルテオンのブロックで追いつかれ、その後は互いにサイドアウトを奪い合う。中盤ミスが出て9-13と先行されるが、ムセルスキーや髙橋藍のスパイクでリズムを立て直し終盤へ。
17-20でリリーフサーバーの甲斐がコートに送り出されると、大仕事をやってのける。勢いよくサーブを打ち込み、ムセルスキーが次々に得点に繋げて20-20の同点に。さらに甲斐がボールに食らいついて拾い、シリフカが懸命に繋ぐと、最後は小野寺のブロックでラリーを制し21-20と逆転した。小野寺の力強いクイックで勢いを増すと、シリフカの好守備をムセルスキーが得点に繋げ23-21とリード。シリフカのスパイクでセットポイントを握ると、最後はシリフカが強烈なジャンプサーブを打ち込んでエースを奪い25-22。逆転でセットを奪い、優勝に王手をかけた。
ずっとフローターサーブで揺さぶりをかけていたシリフカが、まさにこの場面のために取っておいたかのような強烈なジャンプサーブを放ち、勝敗のカギとなった第2セットを奪い取った。
シリフカは「サーブで重要な点を挙げたいと思って、最近ジャンプサーブをたくさん練習していたので自信があったし、相手は予想していないだろうから、ブレイクに繋げられるんじゃないかと思って、あの場面でトライしました。いい決断だったと思う」と笑顔で振り返った。
第3セットは先行されながらも小野寺のブロックで追いつくと、シリフカや柏田のスパイクでサイドアウトを重ねていく。中盤、ブロックでチャンスを作り、ムセルスキーのスパイクなどでブレイクし11-9とリード。その後もサンバーズの堅い守備はほころびを見せない。柏田が拾い、髙橋藍が客席に突っ込みながらボールを繋ぐと、ムセルスキーのブロックでラリーをものにし15-10と点差を広げた。その後も大宅の巧みなスパイクで得点に繋げるなど、サンバーズは流れを渡さない。
終盤には小野寺が鋭いサーブでエースを奪い22-13と大差をつけた。マッチポイントを握ると、最後は好守備から、後衛の髙橋藍が軽快にジャンプし、パイプ攻撃を打つと見せかけてライトにトス。鮮やかなフェイクセットから、ムセルスキーがスパイクを決め、25-17でゲームセット。
その最後の場面、髙橋藍は「もちろん自分がパイプ攻撃をするという選択肢もありましたが、最後の1点なので、終わらせ方は重要だと思った。やっぱり自分たちのエースはディマなので、そこに託すという思いもありますし、最後の1点は本当にみんなで取る1点なので、直感でディマに上げました」と振り返り、ムセルスキーは「最後の1点をしっかり決めて、早く試合を終わらせようと思った。自分の仕事である『点を取る』ということをやりました」と淡々と語った。
個々が自分の役割を果たしたサンバーズがセットカウント3-0で勝利し、今季1つ目のタイトルをつかんだ。昨季のリーグ優勝、黒鷲旗優勝に続く2024年3つ目のタイトル獲得だ。
決勝の舞台でも硬くなることなく、高い集中力で準備してきたことを発揮し、ここ一番での強さを見せつけた。大一番を前にしたチームの雰囲気を、藤中颯はこう明かした。
「昨夜も今朝もいい緊張感でしたね。考えすぎたり、自分の世界に入り込みすぎる選手はいなくて、和やかさもあった。試合前のロッカールームでも笑い声が聞こえていました。五輪に出ていたり、経験豊富でこういう舞台に慣れている選手が多いので、見ていて安心感がある。自分も考えすぎることなく、自分に集中できました。僕はサーブレシーブやディフェンスに関して指示を出すだけ。それに対してしっかりと周囲が答えてくれたのでやりやすかったですね」
藤中颯が「スタッフ陣から明確な指示が出ていた」と語るブロックとディグが試合を通してハマった。ミドルブロッカーの小野寺、柏田を中心としたブロックが機能し、堅い守備でチャンスに繋げ、ブルテオンのスパイク決定率を39.6%に抑え込んだ。
小野寺は「サーブが機能して、それが僕らのブロックやディグに繋がったし、相手のサーブレシーブが返った時は、ディマが前だったら(相手の)レフトは任せようとか、大宅が前でもクイックに跳んでみようとか、サイドの選手も相手のクイックに対してヘルプして跳んでくれたり、コート内で常にコミュニケーションを取って、それがしっかりハマった。後ろのディフェンスもたくさん拾ってくれたので有利な展開になった」と分析した。
サンバーズの指揮官となって初のタイトルを獲得したオリビエ監督は、「色々な感情が交錯していますが何より嬉しい。ジェイテクトSTINGS愛知、ウルフドッグス名古屋、そしてブルテオンという強豪との試合が続く中、全選手、スタッフがハードワークしてくれてこういう結果に繋がったことは誇りに思う」と選手、スタッフを讃えた。
2年前の天皇杯・準々決勝で敗れた後、自身のミスを悔やみ「申し訳ない」と肩を落としていたセッターの大宅は、「僕が入団してからこの大会ではベスト8までしか行けていなかったので、初めて天皇杯で結果を残せたことが何より嬉しい」と安堵の表情を浮かべた。
10月のSVリーグ開幕時はブルテオンに連敗したが、そこから選手間のコンビや連携、信頼関係は格段に向上した。
大宅は「開幕戦の自分たちに比べると別チームと言っていいほど成長できている」と手応えをにじませながらも、「リーグでもっともっといいチームに仕上げていきたい」を先を見据えた。
攻守に躍動し大会MVPを獲得した髙橋藍も「本当にいい通過点になった」と語ったように、ここがゴールではない。
「ブルテオンにここで勝つことはかなり重要なことだったし、勝てたことで、このあとのリーグも自信を持って臨める。自分たちは追われる立場になると思うけど、追われながらも勝っていける強さを、さらに磨いていかなきゃいけない」と髙橋藍。
優勝の余韻に浸るのは束の間。14年ぶりに得た栄冠の自信と勢いを、1週間後に再開するSVリーグに繋げる。