2023年アジアクラブ選手権大会 決勝
- 開催日時
- 2023年5月21日(日) 19:00(現地時間)
- 会場
- バーレーン
3
- 28-26
- 25-23
- 23-25
- 25-17
WIN
1
試合経過
<試合経過レポート>
2023アジアクラブ選手権・決勝。2年連続でこの舞台にたどり着いたサンバーズは、昨年わずかに届かなかったアジアチャンピオンの座をかけて、インドネシア代表のジャカルタ バヤンガラ プレシシと対戦した。2日前の1-8位決定戦ではセットカウント3-0で勝利した相手だが、「前回と同じようにはならないとみんなで話していた」と主将の大宅。その予想通り、激しい試合となった。
第1セットはムセルスキーのサービスエースなどで3-0と好スタートを切る。スパイクミスやジャカルタのブロックで4-4と追いつかれたが、大宅の好守備をムセルスキーが得点につなげて9-7と再び先行。中盤、好守備から切り返されて11-12と逆転され、その後、相手のサービスエースで16-18とリードされた。それでも終盤、アラインの強烈なサーブで崩しチャンスを作ると、藤中謙がきっちりブロックアウトで得点につなげて18-18と追いつく。樫村、佐藤のクイックでサイドアウトを重ね、アラインが1枚で相手のライトスパイクをブロックし、23-22と逆転。堅いブロックと大宅の好守備で粘ってムセルスキーが得点につなげ、先にセットポイントを握るが、デュースに持ち込まれ、ジャカルタのブロックで25-26と逆転された。それでも、ブロックとディフェンスが機能し始めたサンバーズは、ブロックでタッチを取って正確につなぎ、ムセルスキーが立て続けにカウンターアタックを決めて連続ブレイク。28-26で第1セットを先取した。
第2セットは佐藤の好守備や、大宅がコート後方まで走って懸命にブロックフォローをするなど、集中力高くボールをつなぎ1点1点重ねていく。ムセルスキーの好守備からムセルスキーが自ら得点につなげ6-4と先行すると、その後もブロックのワンタッチや樫村の守備から、アラインがノーマークでパイプ攻撃を決めたり、藤中謙が速いレフト攻撃で切り返し、4連続ブレイクで8-4と引き離した。中盤には佐藤が相手のクイックをシャットアウトし点差を広げる。ジャカルタのブロックに捕まり15-13と追い上げられるが、藤中謙、佐藤の力強いスパイクで流れを取り戻し、藤中謙がノータッチエースを決めて18-14と再び点差を広げた。終盤、ジャカルタの巧みなサーブにエースを奪われたり、好守備から切り返され21-20と迫られたが、ムセルスキーのスパイクでサイドアウトを重ねて逃げ切り、セットを連取した。
優勝へ、王手をかけた第3セットは、クイックが相手ブロックに阻まれるが、藤中謙、アライン、ムセルスキーのスパイクでサイドアウトを重ねる。しかしジャカルタのブロックで6-8と先行され、中盤にも、アラインのパイプ攻撃を好守備で拾われて切り返され8-11とリードされた。それでも、相手のミスで13-14と追い上げ、引き離されても、アラインが強烈なサーブで3連続エースを奪い18-17と一気に逆転。ところがその後、ジャカルタの好守備から次々に切り返され18-20と再び引き離された。終盤、佐藤のサーブで崩してミスを誘い追い上げるが、あと一歩届かず、セットを奪われた。
仕切り直した第4セットは、佐藤のサーブで揺さぶり、アラインのブロックや藤中謙のパイプ攻撃で3-1と好スタートを切った。その後は樫村のブロック、クイック、ムセルスキーのスパイクなどで得点を重ねる。中盤、ムセルスキーのサーブで崩し、アラインのスパイクで切り返して13-8、藤中颯の好守備をムセルスキーが得点につなげて15-9と点差を広げた。追い上げられても、相手のパイプ攻撃を藤中謙が好守備で拾い、アラインがブロックの上からスパイクを叩き込み19-13と再び突き放す。さらに、大宅の好守備を、藤中颯がジャンプトスでつなぎ、ムセルスキーが豪快に決めて20-13。終盤には、ムセルスキーが強力なサーブを打ち込んで立て続けに崩し、アラインが2連続でダイレクトスパイクを叩き込み、24-16とチャンピオンシップポイントを握った。最後はムセルスキーがバックアタックを決めてゲームセット。
サンバーズがセットカウント3-1で勝利し、日本の男子チームとしては大会史上初のアジアチャンピオンに輝いた。
試合直後、いつもクールな藤中謙がさりげなく涙をぬぐった。
「今季のVリーグと黒鷲旗はファイナルまで行って負けたので、その分の悔しさがありましたし、昨年のアジアクラブ決勝での(2セット先取からの)逆転負けもあった。そういう苦い経験があったので、勝てたことの嬉しさと、安堵が、一気に来ました。今シーズン最後の試合ということもありましたし、いろいろな思いが全部詰まっていたので」
1年前のアジアクラブ選手権決勝から、今季のVリーグ、黒鷲旗と、3度続いた決勝での敗戦。その悔しさを今大会にぶつけ、初のアジア王座を勝ち取った。
大会MVPにはムセルスキーが選ばれ、大宅がベストセッター賞、アラインがベストアウトサイドヒッター賞に輝いた。
そして、サンバーズは今年12月に開催される世界クラブ選手権大会の出場権を初めて獲得した。
「世界のビッグクラブが名前を連ねる大会。そこに参加できることが嬉しいし、選手には楽しんでほしい。失うものはないし、何が起こるかわからないので、何か爪痕を残せるように」と山村監督は語った。
進化を続けるサンバーズにまた一つ、大きな目標が加わった。
<試合後のコメント>
■山村宏太監督
監督としては、今シーズン最後に勝たせてあげることができてホッとした気持ちが大きいです。Vリーグと黒鷲旗は負けてしまい、選手たちはモチベーションの維持やコンディション面ですごく難しかったと思いますが、この大会のために各自がもう一度、気持ちを作って臨むことができたのがよかった。予選リーグではいろんな選手がコートに立ちましたし、出場機会が少なかった選手や、ベンチに入れなかった選手も、最初から最後までみんな必死で声を出して盛り上げてくれて、異国の地でもサンバーズらしく戦えた。1人1人が成長してくれていると感じさせてくれ、強いチームだなと思わせてくれる大会でした。
■大宅真樹主将
優勝して、ホッとしたという思いが一番強いです。決勝の相手は一度戦って3-0で勝った相手でしたが、その時とは別チームのように粘り強かった。決勝ということで、みんないつものプレーができていなかったし、僕自身も準決勝までのパフォーマンスがなかなか出せず苦しい時間が多かった。1人1人、この大会にかける思いがあって、最初は各自が1人でどうにかしようという感じになっていた。でも第3セットを取られて、ようやく「チームで戦おう」ということが体現でき、最後は一つになって戦えた。
準決勝まではみんな楽しんでやれていたし、僕自身、準決勝のイラン戦は、ゾーンに入っていたというか、周りが見えていた。レオナルドコーチから「(サンバーズに来てからの)5年間で一番いい試合をしたね」と言われてすごく嬉しかったし、最初から最後までやりたいバレーをできたのは初めてでした。あの日はみんな調子が良く、どこに上げても決まる自信しかなかったので、思い切りやれました。日本代表から外れて、挫折というか、一度はすごく(気持ちが)落ちてしまったんですが、この大会に救われました。
今大会の収穫というか、僕が思うMVPはミドルの2人、(佐藤)謙次と樫村です。謙次はこれまでリーグでそれほど試合に出ていない中、今大会はずっとスタートで、しかも海外相手で、プレッシャーもあったと思う。樫村は今季V2(ヴォレアス北海道)でプレーして結果を残しましたが、僕自身は1年間まったくトスを上げていない。それでも今大会すごく仕事をしてくれた。あの2人があそこまでやってくれるというのは正直最初は予想していなくて、小野が抜けて、彭も(外国人選手枠の関係で)あまり出られなくて、主力だったミドルが2人もいない状態での戦いは不安もありましたが、逆にそこを頼れるようになったのは、本当に彼らがすごく頑張ったから。僕ならあんなに堂々と戦えない(苦笑)。自分はミドルからリズムを作りたいので、「本当にありがとう!」という感じでした。安心しましたし、来季も戦えるなという手応えを得られた、それが収穫でした。
■藤中謙也選手
素直に嬉しい気持ちが大きい。Vリーグと黒鷲旗はファイナルまで行って負けて、昨年のアジアクラブも決勝で逆転負けしていたので、それを取り返す、とはまだいかないけど、最後にいい形で終われたのはよかったかなと思います。
今大会は、今シーズンの一番大きな目標ではありましたけど、国内で勝っていなかったので、正直モチベーションの難しさや、自信という部分では不安もありました。でも試合が進むにつれて、チームで戦えている感覚と自信が高まってきた。準決勝で対戦したイランには、ライバル意識みたいなものがある中、決勝やその先を意識せず、その試合に集中して、それぞれのパフォーマンスが出せた。ここぞという場面で全員でつないでポイントを取れたり、劣勢の場面でもネガティブにならなかった。試合に勝ったというより、チームとしてやるべきことができたことが嬉しかった。
世界クラブ選手権は、間違いなく楽しみです。まだちょっと想像できない世界なんですけど、世界で勝てるように、そこで通用する力をつけるために、自分自身を成長させていきたいなと思います。