2021-22 V.LEAGUE FINAL ゴールデンセットvs ウルフドッグス名古屋
- 開催日時
- 2022年4月17日(日) 16:00
- 会場
- 千葉ポートアリーナ
1
- 25-17
WIN
0
リザーブメンバー
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デ アルマス アライン
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秦 耕介
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佐藤 謙次
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小川 猛
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西田 寛基
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鍬田 憲伸
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喜入 祥充
試合経過
ファイナル第2戦終了から15分後、ゴールデンセットがスタートした。この1セットですべてが決する。サンバーズは引き続き隙を見せず、主導権を譲らない。このセットも小野のショートサーブで揺さぶり、相手が万全の状態で攻撃できなくなったボールを柳田が確実に拾い、藤中、ムセルスキーのスパイクで連続得点を奪い3-0と好スタートを切った。追い上げられても、彭のブロックで7-3と再び引き離す。1点挙げるごとにベンチの選手、スタッフは立ち上がって喜び、熱気をコートに送り返す。
中盤には、大宅のサーブで揺さぶってミスを誘ったり、大宅の好守備をムセルスキーが得点につなげ11-5と引き離した。サーブレシーブが返ればミドルブロッカー陣が鋭いクイックを決め、サーブに崩されても、正確につなぎ、ムセルスキーが得点につなげてブレイクを許さない。逆にサンバーズは大宅の好守備をムセルスキーが得点につなげたり、柳田のブロックで連続得点を奪い19-12とリードを広げた。WD名古屋のブロックなどで20-16と追い上げられるが、終盤、リリーフサーバーの西田が登場すると、そこからムセルスキーのカウンターアタック、彭のブロックで連続得点を奪い23-16と再び引き離す。最後は、鶴田がWD名古屋のオポジット・クレクのスパイクを拾い、柳田が丁寧に託したトスを、ムセルスキーが豪快に打ち込んで決め、25-17でゲームセット。
2年連続9度目の優勝の瞬間、ベンチからコートに選手がなだれ込み、赤い歓喜の輪ができた。
喜び合い、たたえ合う選手を見つめながら、山村監督は「すごいわ。選手たち」と思わずうなった。
その一言がすべてを物語っていた。ここ一番での勝負強さと集中力。スタートから全員が自分の役割を果たして戦術を遂行し、相手を一気に飲み込んだ。持ち味であるサーブからの堅いブロックとディフェンス。こだわってきた正確なつなぎからの高い攻撃力。この日はサーブレシーブも安定しており、4セットを通して相手に1本もサービスエースを許さなかった。攻守すべてが噛み合ったサンバーズが、掲げてきたVリーグ2連覇を成し遂げた。
武器であるサーブやスパイクだけでなく、好守備も光った柳田は「連覇がかかる中で、(ファイナル第1戦に敗れ)今日は勝つしかないということで逆に吹っ切れて、自分たちらしいプレーができたんじゃないか。ブロックとディグに関しては先週の分析をしっかり確認して挑んだ。なおかつ1つのシステムに固執しすぎず、相手に対応した動きがみんなできていたと思う」とうなずいた。
この日も高いスパイク決定率でチーム最多得点を挙げた頼れるオポジット・ムセルスキーは「連覇できて嬉しい。チームのみんなに感謝したい。昨季の優勝がたまたまではなかったということを改めて示せたんじゃないか」と喜びを噛みしめた。
今季は昨季よりも苦しいことが多かったと、監督も選手も口を揃える。昨季は23連勝するなど圧倒的な強さで勝ち上がったが、今季はムセルスキーが前半戦に出場できなかったり、柳田、鶴田、藤中という主力選手が怪我で離脱する期間があった。全員で補い合って勝ち星を積み上げたが、2月には新型コロナウイルスの感染に見まわれた。終盤戦は負けがこみ、レギュラーラウンド1位を逃した。先週はファイナル第1戦に敗れ、崖っぷちに立たされた。
だが試練に立たされるたび「オレたちは土壇場に強い」と自分たちに言い聞かせてきた。その自信もあった。
主将として連覇を味わい、今季の最高殊勲選手に選ばれたセッターの大宅は、大舞台を楽しんでいた。
「今日は今シーズンの集大成にふさわしいバレーボールが最初から最後まで展開できて、相手にペースを渡すことなく攻め切れた。トスに関しては、昨日と今朝のミーティングで(前週の)スパイク決定率の数字を提示されて、シンプルにクイックとレフトサイドの決定率を上げていくことが課題だったので、最初にそこを見せることを意識しました。1セット目から相手にレフトとクイックの意識を持たせられと思いますし、本当にサーブレシーブをする人たちが崩れずに耐えて、相手との駆け引きをしっかりできるような返球をしてくれていたので、2セット目からはもう自分が上げやすいように上げられた。すごく今日は楽しかったです」
この日を最後に現役を引退するリベロの鶴田は、試合後、仲間と輪になって喜び合う中、感極まり、コートにうずくまって泣いた。長年、共に守備の核を担ってきた藤中が、その鶴田を助け起こし、一緒に泣きながら整列に加わった。
鶴田は少し照れくさそうに振り返った。
「最初は『やったー!』という思いで、泣いていなかったんですけど、なんなんでしょうね(苦笑)。今シーズンは本当に苦しかったんで......。なかなかメンバーが揃わなかったですし。最初ディマ(ムセルスキー)がいない中で試合をしていて、マサ(柳田)が怪我して、自分自身も怪我で出られなくなった。でもみんなで頑張って、年内はあの位置につけた(10勝4敗の3位)。年明けからディマが合流して『よっしゃ!こっから優勝や』と思っていたのに、終盤パナソニックとWD名古屋に2敗ずつしてしまって2位通過になった。『ディマが来るまでなんとか頑張って、ディマが来たら負けない』という、思い描いていたルートとは違った。負けが込んで苦しくて、自信が揺らいだ、その中での優勝でした。
自分の中で最後だというのをこれまでは全然意識していなくて、とにかく優勝したいという思いだけでした。終わった瞬間、優勝できた喜びと、『もうプレーすることはないんだ』という思いがわいてきて、みんなに『ありがとう!!』って感じで、涙が止まらなくなりましたね。寂しさは今のところないです。本当にやりきったので。最後、優勝して引退できる選手がどれだけいるんだと考えたら、ほんの一握り。自分は本当に幸せだなと思いました」
表彰式の後、引退する鶴田、加藤、松林が三度、仲間たちの手で胴上げされた。3人と共にコートで戦うことは、残念ながらもうない。
だが、サンバーズは立ち止まらない。2連覇を達成した直後に、選手たちはもう先を見ていた。
大宅主将は「目標の1つとしていた2連覇を達成できたので、ホッとしている。でもまだ黒鷲旗とアジアクラブ選手権があって、2つともタイトルを目標にしているので、もう一度チーム一丸となって、その2大会も頑張りたいと思います」と力強く語った。
柳田も「これからまだまだ、アジアクラブまで走り続けなければいけないので、今日の試合も含めて、さらに成長していきたい」と前進を誓う。
次の勝利へのあくなき渇望。それがある限り、サンバーズはまだまだ強くなる。