2020-21 V.LEAGUE 決勝戦
- 開催日時
- 2021年4月 4日(日) 16:11
- 会場
- 船橋アリーナ
3
- 25-21
- 25-23
- 25-20
WIN
0
試合経過
ついにこの舞台にやってきた。2020-21V.LEAGUE DIVISION1 ファイナル。6季ぶりにこの舞台にたどり着いたレギュラーラウンド1位のサンバーズは、前日のファイナル3に勝利したレギュラーラウンド2位のパナソニックパンサーズと対戦した。コロナ禍の中、多くの人々の尽力によりリーグが開催され、ファイナルを迎えられたことに感謝しながら、選手たちはコートに立った。
第1セットの立ち上がり、サンバーズは藤中がパイプ攻撃で最初のスパイク得点を奪うと、レギュラーラウンドでサーブ賞を獲得したムセルスキーの強力な武器が1本目から炸裂する。サーブで崩し、ムセルスキーがカウンターアタックを打ち込み4-2と先行。出だしからサンバーズの得点パターンが機能し、セッターの大宅が笑顔でコートを走り回る。中盤、逆転を許しても、小野のサーブでプレッシャーをかけ、ムセルスキー、柳田の3連続ブロックで13-10とリードした。
パナソニックもサーブが走り、カウンターアタックを決められ13-12と迫られるが、柳田のスパイクなどでサイドアウトを重ね、小野のクイックで切り返し18-15と再びリードを広げた。追い上げられても、リリーフサーバーの佐藤が好サーブを打ち込み、ムセルスキーのスパイクで切り返し、再び点差を広げる。最後はリリーフサーバーの西田のサーブで崩し、ワンポイントブロッカーの小川がブロックで仕留めてサンバーズがセットを先取した。
レギュラーラウンドを31勝3敗という圧倒的な勝率で制したサンバーズにとって、ファイナルのカギは、平常心で今季やってきたバレーができるかどうかだった。
かつて前人未到のVリーグ5連覇の快挙を成し遂げたサンバーズも、2006-07シーズンを最後に優勝から遠ざかった。14年前の優勝を知る選手はもういない。6年前のファイナルをスタメンで経験したのは栗山と鶴田だけ。初めてVリーグのファイナルを経験する選手がほとんどの中、特別な舞台で浮き足立ってしまうことだけが不安材料だった。
しかし、今季31個の勝利と自信を積み重ねてきたサンバーズは、大一番でも揺らがなかった。強力なサーブから、堅いブロックとディグでチャンスを作り、高い攻撃力で得点につなげるという今季築いてきたサンバーズのバレーを出だしから発揮し、主導権を握った。
第2セットも、小野が2枚ブロックの横を鋭く抜くクイックで好スタートを切り、大宅の強力なジャンプサーブで崩して2-0と先行する。藤中のパイプ攻撃などでサイドアウトを重ね、柳田のカウンターアタックで6-3とリードした。中盤も塩田のサーブで揺さぶり、ムセルスキー、藤中のスパイクで切り返して10-6と点差を広げた。サーブレシーブを崩されても、柳田が力強いパイプ攻撃を決めてしのぎ、ムセルスキーのカウンターアタックで16-10とする。パナソニックのカウンターアタックやブロックで追い上げられ、サーブレシーブを崩されて16-14と迫られたが、柳田のパイプ攻撃などで流れを取り戻し、小野のクイックやムセルスキーのスパイクでサイドアウトを重ねていく。終盤には塩田のキレのあるクイックも決まり、最後は柳田のパイプ攻撃で逃げ切り、サンバーズが2セットを連取。優勝へ、王手をかけた。
第3セットは塩田のサーブで揺さぶり、小野、藤中のブロックで2-0と先行するが、パナソニックの巧みなフローターサーブに揺さぶられてブロックに捕まったり、エースを奪われ2-4とリードされた。ムセルスキーの強力なサーブで崩し、自らカウンターアタックを決めて7-7と追いつくが、中盤、パナソニックのブロックに捕まったり、サーブに崩されて切り返され9-12と再びリードされた。それでも、柳田のパイプ攻撃で流れを切ると、ラリーをムセルスキーのスパイクや藤中のブロックでものにし12-12の同点に。さらに、柳田が強烈なカウンターアタックを決めて14-13と逆転。ムセルスキーのブロックで16-14とした。しかし後がないパナソニックも反撃を見せる。サービスエースやカウンターアタックで連続得点を奪われ、17-18と逆転された。
ここで、勝負どころに強い柳田が本領を発揮する。レシーバーの間を狙ったサーブでノータッチエースを奪って19-18と逆転。その後も強力なサーブを打ち込み、塩田のクイックなどで3連続得点とし21-18と抜け出した。塩田のサーブで崩し、小川がダイレクトスパイクを決め23-19と、優勝へと近づいていく。そして24-20のチャンピオンシップポイント。大宅がサーブで崩すと、パナソニックのスパイクがネットにかかり、ゲームセット。
14年ぶりの優勝。ベンチにいた選手たちがいっせいにコートになだれ込み、一瞬にして歓喜の輪ができた。
ゲームセットの瞬間、コートに倒れ込んで動けなかった主将の大宅は、チームメイトに助け起こされ、泣きながら輪に加わった。この1年、プレッシャーに押しつぶされそうになりながらもチームを引っ張り、司令塔の役割を果たした主将は安堵の表情で言った。
「1セット目の序盤は自分自身硬さがあって、うまくトスを上げられなかったんですけど、その中でも笑顔だけは心がけていました。試合前の円陣で、チームのみんなに『この1日を精一杯楽しんでいこう』と声をかけて試合に入ったので。
勝って終わることができて、ホッとしました。キャプテンらしいことが何かできたかと言われたら、そんなにないと思うけど、勝ってみんなの喜んでいる姿を見ると嬉しくて、やってきてよかった、という気持ちにすごくなりました」
海外リーグから4季ぶりにサンバーズに戻ってきた柳田の目にも光るものがあった。
「前回はVリーグでいい成績を残せずに海外に出てしまって、その悔しさはありました。自分が海外でやっている間も、ずっと気にかけてくれたサンバーズのスタッフの方がいらっしゃって、『サンバーズは優勝から遠ざかっているので、もう1回、強いサンバーズを作るために戻ってきてほしい』と毎年言われ続けていました。僕は毎回それを振ってしまっていたんですけど、今シーズン、僕をまた受け入れてくれて、ここで優勝することができた。そういうつながりを思い出して、感極まったところがありました」
サンバーズの得点源として、この日もチーム最多の28得点を記録し、今リーグの最高殊勲選手(MVP)に輝いたムセルスキーは、「今季はいろいろな困難があったけれど、シーズンを通してずっと1人1人が全力を尽くして、本当にチームとしてハードワークができた。今日の優勝は、このチームにとってふさわしいと思います」と胸を張った。
今季、チームが掲げたのは"PLAY HARD"。それは、選手たちがグループワークの中で意見を出し合って自ら決めたテーマだった。
昨季までは淡白な試合もあったが、今季は開幕当初から、泥臭くボールに食らいついて拾い、つないだ。試合を重ねるごとに、それは特別ではなく当たり前の光景になり、サンバーズは勝者となった。
就任1年目でチームを優勝に導いた山村監督は、感慨深げに語った。
「大きな舞台を経験していない選手が多く、その点は心配していたんですが、大宅キャプテンを筆頭に、選手たちは落ち着いていつも通りのプレーをしてくれた。すべての選手が自分の役割を果たし、勝利に貢献してくれた。僕は監督として1年目で、戦略面でも、選手のスキルを成長させる面でも、まだまだ足りない部分はありますが、こうしてみんなに勝たせてもらって、感謝の気持ちでいっぱいです」
ミドルブロッカーの塩田にとっては、このファイナルが、現役最後の試合となった。この日も先発出場し、最後までサンバーズのブロックシステムの要となり、クイック、サーブでも相手の嫌がるプレーで存在感を発揮した。
試合後のコートインタビューでは、「気持ち的にはいつも通りで、あまりファイナルって感じもしなくて、勝った瞬間も、『終わったんだな』という特別なものもなくて、まだまだバレーが続いていくのかなって感じでした。今(最後だと)言われて、終わりなんだなと、ちょっと感慨深いです」と笑った。
「最初から今季が最後だと決めていたので、とにかく怪我をせずに最後までしっかり走り抜けようという気持ちでやっていた。9年間サンバーズにいたんですけど、リーグ優勝というのは一度も経験がなかったので、本当に最後の最後に勝てて、優勝して終われたことは嬉しく思います」
優勝後のロッカールームで、塩田は最後にチームメイトに言った。
「オレがいなくなったからって、弱くなるなよ」
山村監督は「塩田らしい」と笑う。
独自の存在感を放ったベテランが去っても、サンバーズは前進を続ける。さらに強い集団へ。14年ぶりにつかんだ王座を、常勝軍団へのスタートとする。