サステナビリティ ストーリーズサステナビリティ活動の最前線!

農業を通じて、温暖化から地球を救え──農家とともに切り拓く「再生農業」

農業はサントリーの原料調達の基盤です。私たちがグローバルにサステナブル調達を行っていくために、作物の生産を続けながら農地の生態系を保全・回復する「再生農業」への取り組みを加速させています。サントリーの再生農業に向けた挑戦の最前線であるアメリカ・ケンタッキー州から、サントリーホールディングス サプライチェーン本部グローバルソリューション部ゼネラルマネージャー兼サントリーグローバルスピリッツ社ディレクターのマーク・ラコツィがご紹介します。

農業を通じて、温暖化から地球を救え──農家とともに切り拓く「再生農業」

気候変動に関する2050年目標達成に欠かせない「再生農業」での原料調達

再生農業とは、農地の生態系を保全・回復することで“土壌の肥沃度”を向上させるという、持続可能な方法で実りを得るための農法です。大きな特徴として、農地を極力耕さずに「カバークロップ」という被覆作物で土壌を覆います。このカバークロップは、風雨によってせっかく手間暇かけて肥沃になった土壌が崩れてしまうのを防ぐのと、さらに大切な役割として、耕起や肥料に極力頼らずに土壌の自然な生態系の働きで農地を肥沃にする助けをしてくれます。

アメリカ・ケンタッキー州にあるカバークロップ(被覆作物)で覆われた実証実験中のトウモロコシ農園。

また、耕運機によるエネルギー消費が節約できるうえ、植物の根や微生物によって土壌に多くのCO2が貯留されたり、さらに温室効果ガス(GHG)の発生源となる化学肥料の使用が抑えられたりと、気候変動対策にも有効な農法として注目が集まっています。化学肥料や農薬によって発生する亜酸化窒素ガスはCO2の300倍以上もの温暖化係数だと言われており、世界のGHG排出量の約4分の1が農業や林業によるものです。サントリーにおいても、従来農法による原料を調達した場合のGHG排出量は、全体のGHG排出量のうち約20%も占めています。つまり、再生農業に取り組むことは、サントリーが掲げる「2050年までにバリューチェーン全体でGHG排出量の実質ゼロ」という目標を達成するために欠かせない挑戦なのです。

(左)農家の方とカバークロップの検証を実施。(右)畑から土壌のサンプルを採取し、水の保水や土壌中の有機炭素の状況を調べたうえで、GHG削減のためにどのような改善策が考えられるかを農家の方々に説明しています。

再生農業自体は、新しい概念でありません。しかし、その手法、技術、ツールはあまり一般的ではないものも多くあります。そこで、どのような取り組みを重視するべきなのかを判断して、生産者への指導・教育を行うことができるアグロノミスト(農学士)など農業の専門家とともに、小規模なパイロット農場で試行錯誤を繰り返しながら、持続可能な方法で土壌を改良する再生農業に挑戦するための環境を整えています。

重要原料であるトウモロコシ栽培での再生農業への挑戦

サントリーはいま、世界中で重要原料の再生農業の実証プログラムを推進しています。バーボンの原料であり、また、ソフトドリンクなどで使用されるシロップの原料であるトウモロコシに関する取り組みもそのひとつです。私は、2023年からアメリカ・ケンタッキー州でトウモロコシ農家の皆さんに対して再生農業への移行支援を行っています。
農家の皆さんにとって、すでに確立された従来農法のやり方を変えるというのは、生活にリスクをもたらすことでもあり、そのリスクがありながらも「サントリーと一緒に未知の領域に挑戦したい」と感じていただくことが大切です。そこで可能な限り現場を訪問して、それぞれの土地にあった農法を段階的に見つけ出してきました。農家の皆さんと一緒に切り拓いてきた成果は、2年目を迎えた2024年、GHG排出量削減という実りを見せ始めています。

トウモロコシ栽培に効果があるカバークロップの検証など、農家の皆さんと協働することで進歩を遂げてきました。

再生農業の実証実験を行っている農園では、トウモロコシがすくすくと育っています。

協働していただいた農家の皆さんからは、「代々家族で耕してきた土地を子や孫の代まで受け継いでいきたい」、「この再生農業への挑戦を通じて農業関係者だけでなく、世界中の消費者が農業の重要性とその未来を理解できるようにしてほしい」という声が寄せられました。この再生農業の実証プログラムは、これから世界規模で展開していく計画です。再生農業への挑戦は、これからの農業やそれを支える農家の皆さん、地球、そしてサントリーの未来を支える取り組みです。持続可能な未来づくりに自ら関わっているという実感は、私にとってあらゆる困難に直面してもこの挑戦に向きあう原動力となっています。

トウモロコシのほかにも、大麦、カシス、コーヒー、緑茶といった原料が育つ農地で生産者の方々とともに──私をはじめとするサントリアンは、世界をより良い場所にしていくお手伝いを続けていきます。

アグロノミストが、実証プログラムに参加している農家にカバークロップなどの施策を通じたGHG削減の成果を共有している様子。

最新のストーリー