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ウイスキーの重要原料である「ピート」と地球の未来のために──「ピートランド・ウォーター・サンクチュアリ」プロジェクト
スコットランドでは、湿原はウイスキーづくりに良い水を育むと言われています。また湿原に堆積した泥炭は「ピート」と呼ばれ、ウイスキーの原料である麦芽に香りづけをする大切な原料となります。サントリーグループは、長年にわたる土地開発や過度な商業用採掘などによって失われつつあるスコットランドの泥炭地および水源を保全する活動「ピートランド・ウォーター・サンクチュアリ(PWS)」プロジェクトを2021年11月に開始しました。2030年までに400万米ドル以上の投資を行うPWSプロジェクトについて、サントリーグローバルスピリッツ社でプロジェクトを主導しているアリステア・ロングウェルがご紹介します。
熱帯雨林よりも多くの二酸化炭素を蓄える泥炭地(ピートランド)
古くから「泥」は、美容やヘルスケアに利用されていることはよく知られていると思います。人々にくつろぎのひとときをもたらすスコッチウイスキーづくりにも、この泥が欠かせません。あのスモーキーフレーバー、それはスコッチウイスキーがつくられるスコットランドの湿地の一種、泥炭地(ピートランド)から採掘された「ピート(泥炭)」によるもの。ピートとは、湿原の植物が水分過剰により分解が不十分な状態で長い時間をかけて堆積した有機物に富んだ土壌です。これをウイスキーの原料・麦芽の香り付けに使うことで、特有のピート香がもたらされます。この泥ですが、人の健康だけでなく、“地球の健康”にとっても重要であることがわかってきました。実は地球温暖化を引き起こす温室効果ガス、二酸化炭素やメタンの元となる炭素が、熱帯雨林の樹木よりも多く蓄えられているのです。採掘などによって泥炭地を破壊してしまうと、逆に大量の温室効果ガスを放出してしまうことになります。
「ピートランド・ウォーター・サンクチュアリ(PWS)」プロジェクトとは
サントリーホールディングスとサントリーグローバルスピリッツ社が協力して取り組むスコットランドでの湿原再生活動。ウイスキーに特有の香り=スモーキーフレーバーを添えるために不可欠なピート(泥炭)の持続可能性を確保するとともに、ウイスキーの仕込み水の水源としても重要なピートランドの保全・再生活動を進めています。
ピート採掘後の復元にあたっては、採掘のために掘った排水溝を堰き止めて水位を上げ、急斜面をなだらかにし、採掘時に剥いだ表層の植物を表面に戻すといった処置を行い、湿原植物の再生と泥炭の堆積を促します。
そこでサントリーグローバルスピリッツ社とサントリーホールディングスは2021年10月、スコットランドの泥炭地および水源保全活動「ピートランド・ウォーター・サンクチュアリ(PWS)」プロジェクトを開始しました。このPWSプロジェクトは健康な森づくりを行う「天然水の森」活動と同じく、科学的な調査も実施しながら、何十年にもおよぶ長期間にわたる取り組みを行います。
サントリーの「モノづくり」精神を体現するPWSプロジェクト
PWSプロジェクトの目標は、2030年までに最低1,300ha(東京ドーム約260個分)の泥炭地を復元し保全すること。これは、サントリーグループがウイスキー製造で使用する泥炭と同じ量の泥炭を生み出すことができる面積を復元、保全していく計画です。さらに、2040年までにはその倍の量を生み出すことができる面積を保全していくことを目指します。2024年末までに350ha以上の復元を完了する見込みで、さらに2025年末までに約250haの復元計画も進行しています。
泥炭地再生には、天然水の森と同様に土地所有者の理解・協力が必要です。スコットランド政府による公的な泥炭地保全活動を手がける公的機関ネイチャー・スコットからは、「土地所有者にPWSプロジェクトに参加するよう説得したい」と期待を寄せられており、非常に励まされています。私たちの取り組みが、泥炭地に持続可能性をもたらしているのを目の当たりにすることに、大きなやりがいを感じています。
伝統的な製法によって最高品質のスコッチウイスキーづくりを行うこと、そしてウイスキーづくりと同時にその原料となる泥炭地を保全すること──これはまさにサントリーの「モノづくり」精神そのもの。PWSプロジェクトは、「水と生きるサントリー」の理念を体現する活動なのです。
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