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生産者とともに守っていくイギリス産カシス――サステナブル農業支援プログラム

サントリー食品イギリスでは、イギリスで生産されているカシスの90%を果汁飲料『Ribena(ライビーナ)』の製造に使用しており、カシスが育つ環境の持続可能性を最優先事項と考え、2004年からカシス農家に対するサステナブル農業の支援を実施しています。サントリー食品イギリスでアグロノミスト(農学士)として活動をするロブ・サンダースが、その取り組みについてご紹介します。

生産者とともに守っていくイギリス産カシス――サステナブル農業支援プログラム

イギリス産カシスを持続可能に。農家支援プログラム「6ポイント・プラン」

サントリー食品イギリスでは、カシスの伝統に情熱を注いでいます。私たちは農家の皆さんをサントリーファミリーの延長と考え、定期的に新たな課題について話しあってきました。その話し合いのなかで2004年に、農地での野生生物の生息環境保全について支援を開始することになりました。カシスは多年生作物なので、なかなか一年生作物ではできない方法で、長期的に農地での野生生物の生息環境を改善することができます。

間近で見るブラックカラント

間近で見るブラックカラント

このカシス農家支援プログラムですが、2018年にはさらに大きな一歩を踏み出しました。環境慈善団体であるFarming & Wildlife Advisory Group(FWAG)と提携し、イギリス全土に34ヵ所ある全農場にアグロノミストを派遣したのです。
この取り組みでは、私たちが生物多様性保全のために策定した「6ポイント・プラン」が完全に実施されているかどうかの検証を行いました。「6ポイント・プラン」とは、農園全体に生物多様性保全のための環境対策を行うことにより、カシス生産の持続可能性を推進・実証しようという計画です。

生物多様性を高める「6ポイント・プラン」

  1. 1)
    在来種の生垣:花や果実が豊富な豊かなネットワークをつくるために管理する。
  2. 2)
    ラフグラス・バッファー:生垣との隣接地を緩衝地帯として手付かずの草地とし、昆虫、鳥類、小型哺乳類に生息地を提供する。
  3. 3)
    グリーン・ヘッドランズ:畑の周囲に設けた耕さない緑地帯。土壌を保護し、昆虫に花粉と蜜を供給する。
  4. 4)
    農地に生息する鳥類:カシスの栽培面積1haあたり最低1つの巣箱を設置し、毎年最低10%をモニタリングする。
  5. 5)
    花粉と蜜:農園の5%に相当する面積で昆虫に花粉と蜜源を提供する。
  6. 6)
    成木:樹木の根が、果実の生産により損傷されることのないよう保護する。
この計画に基づき農家では、農場全体に2,000個以上の巣箱をかけるとともに、ラグビーのピッチ116個分に相当する面積に受粉昆虫を奨励するため、花粉と花蜜が豊富な植物を植えています。

この計画に基づき農家では、農場全体に2,000個以上の巣箱をかけるとともに、ラグビーのピッチ116個分に相当する面積に受粉昆虫を奨励するため、花粉と花蜜が豊富な植物を植えています。

サントリーファミリーの一員であるカシス農家のベストプラクティスを皆に

アグロノミストは各農場に個別に、この6ポイント・プランの詳細な報告書、そして地域に生息する野生生物の環境を改善するための具体的なアドバイスを直接行いました。どんなことでもそうですが、新しいやり方を日々の作業方法として定着させるには時間がかかります。それでも、農家の皆さんが日頃から持続可能性に情熱を注いでくれていたことにより、この支援プログラムはスムーズに浸透しました。生物多様性への配慮が、将来にわたってカシスを生産し続けるためのサステナブルな農法なのだということが、彼らに伝わった結果でもあると思います。
持続可能性に情熱を燃やす素晴らしい農家の皆さんと一緒に仕事ができて、私たちは本当に幸運です。6ポイント・プランによる最先端のサステナブル農業を実践する農家の皆さんからは、私たちも多くのことを学ぶことができます。そのベストプラクティスを果実として、より大勢の農家の方々と共有することで、さらに広く利益をもたらすことができると考えています。

カシスを収穫するための機械

カシスを収穫するための機械

6ポイント・プランをサステナブル農業の“青写真”に

FWAGとの提携によってこの5年間に達成された進歩には大きな誇りを抱いていますが、私たちの活動はこれまでの積み重ねであり、ここで終わりではありません。これからも、カシス農家への支援プログラムと6ポイント・プランが目的を達成し続けられるよう、最新の科学に基づいて今後も進化させていきます。

収穫期のノースノーフォークのカシス農園

収穫期のノースノーフォークのカシス農園

また、開発された行動計画や今回の実践から得られたものは、カシスだけでなく多くの作物についても、サステナブル農業へ一歩を踏み出すための一助となるはずです。たくさんの農家の方が、将来に向けて旅をする“持続可能性への青写真”になればと願っています。すでに、同じように持続可能性に課題を抱える農家の皆さんに集まっていただき、野生生物の生息環境の回復や危機に瀕した種の再定着、あるいは特定流域の水質についてなど、より範広い課題を対象とした地域支援プロジェクトをいくつか開発しています。このプロジェクトにおいても、関連するNGO、研究者、科学者といった方々の協力を得て、私たちの取り組みが良い変化をもたらしているか、進捗状況を追跡・監視する計画になっています。
私たちは、イギリスのカシス農園で野生生物の生息環境を高めるサステナブル農業によって、カシスの生産や農園を取り巻く自然環境を改善できるだけでなく、地域の農業コミュニティの繁栄も促進できると信じています。そして、これからもずっとおいしい飲み物をつくり続けていきます。

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