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循環型農業の取り組みを進める「登美の丘ワイナリー」をレポート【後編】

サントリーグループの様々なサステナビリティの取り組みを、従業員の生の声でお届けします。初回は、100年以上の歴史を持ちながら、先進的な循環型農業への挑戦でも知られる「登美の丘ワイナリー」へ。前編に引き続き、栽培技師長の大山弘平さんにお話を伺います。

循環型農業の取り組みを進める「登美の丘ワイナリー」をレポート【後編】

気候変動に対応するための新技術「副梢栽培」への挑戦

前編でご紹介した循環型農業への取り組みの一方で、地球温暖化の影響による山梨県産ぶどうの品質低下に対する挑戦も始まっています。それが、山梨大学との共同研究により2021年から始まった、ぶどうの収穫期を遅らせる「副梢栽培」です。
「ワインはぶどうそのものの品質が味わいに直結するお酒。高い品質のぶどうには、夏の最低気温がいかに下がるかが大事だと考えておりますが、この10年で少しずつ夏の気温が上がってきています」(大山さん)

「副梢栽培」は最初に伸びた枝を摘み、脇から生えた副梢に付く実を利用することで、収穫を40日間遅らせる手法。気温が低い時期に成熟するので糖度が上がり果皮が濃くなるため、品質の良いぶどうに。

「副梢栽培」は最初に伸びた枝を摘み、脇から生えた副梢に付く実を利用することで、収穫を40日間遅らせる手法。気温が低い時期に成熟するので糖度が上がり果皮が濃くなるため、品質の良いぶどうに。

メルロで挑戦したところ、フラッグシップワインの「登美」にも使えるほどの品質に。今年は面積を8倍に増やし、シャルドネやカベルネ・ソーヴィニヨンでも始めています。

メルロで挑戦したところ、フラッグシップワインの「登美」にも使えるほどの品質に。今年は面積を8倍に増やし、シャルドネやカベルネ・ソーヴィニヨンでも始めています。

温暖化による対策について、サントリーとしては温暖な気候に適応する品種の試験栽培や同品種の産地北上など様々な取組を進めておりますが、ここ山梨には私たち以外に多くのぶどう生産者やワイナリーがおります。時間を必要とする植替えや代々守ってきた畑を変えることは大きな負担となる中、副梢栽培は少しの手間をかけることで品質を上げることが出来る可能性があり、このチャレンジは、そんなワインづくりの文化を守るためでもあるのです。温暖化によるぶどう品質の低下は山梨県のみならず全国でも起こり得る課題ですので、この技術を広く広めていくことも重要だと考えています。

副梢栽培で剪定されたぶどう。果実への日当たりのために、中間部の葉を人の手で取るなど、手間をかけることが質の良いぶどうを育みます。

副梢栽培で剪定されたぶどう。果実への日当たりのために、中間部の葉を人の手で取るなど、手間をかけることが質の良いぶどうを育みます。

どんな風土で育てられたのかが思い浮かぶワインを求めて

日本の気候・風土は、気候条件だけを切り取ると、ワインづくりには決して恵まれてはいないかもしれません。その中で品質の高いワインがつくられている背景には、創意工夫を凝らしてきた人々の情熱があります。
「ワインの品質にとって重要だと言われるテロワールは、気象や土壌などの条件が語られることが多い中、造り手である“人”が何を考えて実行したかが必ず味わいに反映されると考えています。環境の諸条件がワインづくりには厳しいという意味では、逆に日本のワインの魅力は“人”の要素が多く入っていることでは。一口飲んだときに、その創意工夫で引き出された風土の特徴が思い浮かぶのが良いワインだと思います。世界のワインの地図に日本が載るためには、その魅力を突き詰めていくことしかない。登美の丘らしさ、その品種甲州らしさ、サントリーらしさといった“ティピシテ”(個性)を追究していきます」(大山さん)
ワインも個性の時代。サントリーでも、生産地や造り手のティピシテを大切にした小ロット生産の「ワインのみらい」シリーズをつくり、日本ワインならではの繊細さを届け始めています。
持続可能性を探ることは、環境だけでなく人の文化を守ることにもつながることを感じたワイナリー探訪となりました。

  • ぶどう畑の土壌、地形、畑ごとの微妙な気候の差など、ワインづくりに影響をあたえる自然の要素
どんな風土で育てられたのかが思い浮かぶワインを求めて

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