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豊かな水を育む森を守るために~サントリー「天然水の森」活動

2003年から始まったサントリー「天然水の森」活動。工場の水源エリアで水資源を守り、森の生物多様性の保全に取り組むこの活動は、サントリーの生命線である良質な地下水を維持するために欠かせないものなのです。サントリーホールディングス(株)サステナビリティ経営推進本部 課長 市田智之がご紹介します。

豊かな水を育む森を守るために~サントリー「天然水の森」活動

大切なのは「ふかふかの土」と「生物多様性」

サントリーが創業以来、良質な水にこだわり続けているのは、まさに水こそが私たちのものづくりを支えているから。良い水がなければビールもウイスキーもつくれません。我々がボランティアではなく事業活動の一環として、サントリー「天然水の森」活動を行っているのもそのためです。

日本の森の生き物たちを植物連鎖の関係性から描いた概念図。ピラミッドの上位に立つ「高次消費者」よりも、中層から下層に位置する動植物がたくさんあることで生態系は成り立っています。

日本の森の生き物たちを植物連鎖の関係性から描いた概念図。ピラミッドの上位に立つ「高次消費者」よりも、中層から下層に位置する動植物がたくさんあることで生態系は成り立っています。

豊かで健全な森には、土壌にたくさんの水を蓄えて育む「水源涵養(かんよう)」という機能があります。そんな森に欠かせないのが、たくさんの雨をスポンジのように吸収できる「ふかふかの土」とその土を生み出す「多様性に富んだ生態系」です。木が生い茂った荒れた森では、地面に日光が届かないため、地面を覆うように生える下草や低木が生えません。すると、ミミズやトビムシなど土を耕してくれる土壌生物がよりつかないため、土が固くなってしまい、水を蓄えることができなくなってしまう。でも、そんな荒れた森も、適度に木を切って光が入るようにすると、下草が生えて土壌生物も戻ってきます。豊かな水を育む健全な森では、そんな土壌生物が基盤となり、ワシやタカなどの猛禽類を頂点に掲げた大きな生態系ピラミッドを支えているのです。

自然を回復させる世界の潮流となったネイチャー・ポジティブ

間伐などの整備が大切なのはもちろんですが、その森によって抱えている問題はそれぞれ異なります。以前、営業を担当していた時代には、私もよく「PDCA( Plan計画、Do実行、Check測定・評価、Action対策・改善) を回せ」と言われたものですが、水源涵養活動の場合にはプランの手前の調査(リサーチ)が大事。サントリー「天然水の森」活動では徹底的に森の調査を行い、それぞれの森に適した保全を行います。

常緑樹を伐採し光環境を改善することで、落葉樹林に特有な下層植生の育成を図る。サントリーでは国内グループ会社従業員約7,000名を対象に森林整備研修も行っています。

常緑樹を伐採し光環境を改善することで、落葉樹林に特有な下層植生の育成を図る。サントリーでは国内グループ会社従業員約7,000名を対象に森林整備研修も行っています。

阿蘇から始まったサントリー「天然水の森」活動は、現在15都府県22ヵ所、総面積約12,000haまで拡大。2019年には「国内工場で汲み上げる地下水の2倍以上の水を涵養」という目標も達成。いただく以上にお返しをする、「ウォーター・ポジティブ」を積極的に推進しています。そして今、世界では、生物多様性の損失を止め、回復させる「ネイチャー・ポジティブ」という考え方が広まってきました。2030年までに、陸と海の30%以上を健全な生態系として保全しようという「30by30」という目標に向かって進み始めています。多様な生物が暮らす森を育むサントリー「天然水の森」活動も、その流れにかなった活動なのではないでしょうか。

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