- 生物多様性
50周年を迎えたサントリーの愛鳥活動のこれまでとこれから【前編】
生物多様性や環境保全は、今や企業にとって避けられないキーワード。実はサントリーには、長く取り組む環境活動があります。それが2023年で50周年を迎える「愛鳥活動」。その50年間の活動とこれからについて、前・後編にわたりサステナビリティ経営推進本部 天然水の森グループ 愛鳥活動担当 髙井奈緒美がご紹介します。

Today Birds, Tomorrow Humans
サントリーの愛鳥活動は1973年に始まりました。当時の日本は高度経済成長の真っ只中。世の中が活気に溢れ勢いづいている一方で、公害が問題になり始めた時代です。便利な生活のために大切な自然が失われつつあったのです。サントリーは、飲料をはじめ、ほとんどの商品が自然の恵みで成り立たせてもらっています。その大切な自然が損なわれることは会社の将来に大きな影響が及ぶことと危機感を持ち、自然保護のための普及啓発活動を愛鳥活動として始めたのです。
ただ声高に「環境を大切に」と言っても伝わらないだろうと模索するなか、出会ったのが、「Today Birds, Tomorrow Humans(今日、鳥たちに起こる不幸は、明日、人間の身に降りかかるかもしれない。)」というスローガンでした。
鳥は羽があるので、環境が悪くなると飛び去り、環境を良くすると戻ってくる「環境のバロメーター」であり、世界中にいて、毎日のように出会える身近な存在です。そんな「鳥」をシンボルに普及啓発活動をすれば、誰にでも自然に思いを馳せてもらえると考えたのです。

1973年に掲載された最初の愛鳥キャンペーン新聞広告。「10年以上続けた新聞の意見広告の反響は非常に大きく、現在、保護活動に携わる方のなかにも、子どものころにその広告を見たことがきっかけだと言う方にも出会います」(高井)。

この日、撮影に訪れた「東京港野鳥公園」でも、首都港湾部にありながら意外なほど多くの野鳥の姿を見ることができました。
私たちは、「Today Birds, Tomorrow Humans」を、「今日、鳥たちに起こる『幸福』は、明日の人間を幸せにするかもしれない。」という考えのもと活動を続けています。
健全な生態系を取り戻す「ワシ・タカ子育て支援プロジェクト」
具体的な活動として、「ワシ・タカ子育て支援プロジェクト」「フクロウ巣箱プロジェクト」があります。これは鳥類の猛禽類をシンボルに据えた愛鳥活動です。
森に暮らすさまざまな生き物は「生態系ピラミッド」を築いています。その頂点にいるワシやタカなどの猛禽類が子育てをするには、豊富な餌となる生き物やそれを育む広大な森が必要です。猛禽類が子育てをできる森は、ピラミッド自体が大きく、底辺の広い、豊かで元気な森の目印になります。


取材当日、なんとオオタカの姿を発見。注意していれば、都内でも猛禽類を目にする機会があることに気づかされます。
サントリーの工場の水源エリアで、水を育む森づくりに取り組む各地の「天然水の森」では、環境のバロメーターとなる鳥の生息状況などを確認する調査を実施し、そのデータを豊かな森づくりの一つの指針としています。「天然水の森」では毎年どこかで猛禽類の子育てがされ、これまで述べ8種103回の営巣確認をしています。

巨木が少なくなり、フクロウが子育てをする大きな樹洞が減少している日本の森林。「天然水の森」では、巣箱を設置してフクロウの”住宅難”を一時的に解消しています。(写真は営巣状況確認調査時に撮影)

「ワシ・タカ子育て支援プロジェクト」「フクロウ巣箱プロジェクト」について、詳しくは【サントリー天然水の森 生物多様性「再生」レポート】をご覧ください。
2019年に協定した「天然水の森 北アルプス」では野鳥調査を行い、かつて猛禽類が営巣していた時の環境に近づけるべく森林整備をし、人工巣台を設置しました。そうしたところ2022年、オオタカが営巣し子育てに成功。3羽のヒナが無事巣立ったことはとてもうれしいできごとでした。
1973年から始まった愛鳥活動も50周年を迎えます。当時、普及啓発のために新聞に掲載した意見広告の内容はSDGsの考え方そのもので、今見ても古びない内容です。サントリーには愛鳥活動を始めた当時からこの想いがDNAとして現在まで引き継がれているのだと思います。
(後編に続きます)
撮影協力/ 東京港野鳥公園
東京港野鳥公園には(公財)日本野鳥の会のレンジャーが常駐しています。
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