人権の尊重

サントリーグループは、人権の尊重をグローバル企業としての責務であり、事業活動を行う上で不可欠なものとして考えています。「サントリー人権方針」の下、ビジネスに関わる全ての人の人権を尊重するために、従業員やサプライヤー、地域社会やNGOといったさまざまなステークホルダーと対話し、働きかけながら、従来の取り組みを一層強化していきます。

考え方・方針

人権方針の策定

サントリーグループは、社外の人権に関する有識者との対話を通じて特定した事業特有の重要課題を踏まえ、2019年に「サントリーグループ人権方針」を策定しました。その後、人権における重要課題の対応にあたっては、社外の有識者との対話を通じて随時そのフィードバックを反映しながら活動推進を行っており、2024年、さらなる人権尊重に関する取り組みを進めるべく「サントリーグループ人権方針」を改定しました。本方針では、グループで取り組むべき課題を人権尊重における重点テーマとして位置づけています。
本方針は取締役会の承認を経て策定・改定されており、事業を展開する9ヵ国語に翻訳されすべての役員および従業員に研修やe-ラーニング、社内イントラを通じて周知されています。

なお、社内においては「企業倫理綱領」、サプライヤーやその他のお取引先様に対しては同人権方針に関する理解を促すとともに、人権尊重に関する要請・期待事項も含まれる「サントリーグループ・サプライヤー(パートナー)ガイドライン」を配布し、同意の署名を求めています。
また、お取引先様との契約に人権尊重の取り組みに協力することを求めることを含む条項を導入し、バリューチェーン全体における人権尊重の取り組みを行っています。

脆弱な立場の人々の人権

サントリーグループは、事業活動を行う上で、自社およびサプライチェーンにおいて脆弱な立場の人々(女性、子ども、移民労働者等)の人権を特に意識することが重要と考えており、国連グローバルコンパクト署名企業として「女性のエンパワーメント原則」「子どもの権利とビジネス原則」「すべての移住労働者とその家族の権利の保護に関する国際条約」などのグローバルな枠組みを意識した人権デュー・ディリジェンスを推進しています。さらに、サントリーグループのサプライヤーについても同様に脆弱な立場の人々の人権の尊重について取り組むことを期待しています。
また、土地の所有権、水アクセスの権利および原住民の権利を守ることも重要と考えており、VGGT(国家の食料安全保障の文脈における土地、漁業、森林の保有に関する責任あるガバナンスのための任意ガイドライン)、 IFCパフォーマンススタンダード、ILO先住民及び種族民条約(第169号)などのグローバルな枠組みを意識して人権デュー・ディリジェンスを推進します。さらに、 ILOの労働基準の尊重も含めて、サントリーグループのサプライヤーについても同じように尊重を期待しています。
人権擁護者が果たす重要な役割を理解し、人権擁護者を対象にしたあらゆる差別や暴力を一切認めず、サントリーグループのサプライヤーにも同じ姿勢を要請します。また、人権デュー・ディリジェンスを推進する上で人権擁護者は協働できるステークホルダーとして位置づけています。

移民労働者雇用ガイドライン

強制労働の被害を受けやすい移民労働者に関して、当社は2023年2月に「サントリーグループ移民労働者雇用ガイドライン」を策定しました。本ガイドラインは、自社の関連部署、サプライヤー、ビジネスパートナーに対して、リスクの顕在化を防ぐ方法や、顕在化した場合にIHRBの「Employer Pays Principle」に基づいて是正取り組みを提供する方法について、方針を示した社内ガイドラインです。同ガイドラインでは、移民労働者が直面する可能性がある主な問題と対策を明記しています。

<移民労働者ガイドラインの主なポイント>
  • (1)
    移民労働者が直面する主な課題として、採用手数料および関連費用の負担、身分証明書等の文書保存、適切な住宅供給などの点で不利益を受けやすいことを明記し、どのような手段を取るべきかを説明
  • (2)
    いかなる労働者も仕事を得るための経費を払うべきでないこと、つまり、募集・斡旋手数料および関連費用(国際労働機関の定めによる)は労働者でなく雇用者が負担すべきであるという原則を明記

サントリーグループでは、同ガイドラインを社内の主要部⾨のほか、関連するサプライヤーおよびビジネスパートナーとも共有し、移民労働者をめぐる潜在リスクへの認識を⾼めるとともに、リスクの顕在化を防ぎ、顕在した場合には影響を抑えるための措置を速やかに行うことができるようにしています。また、本ガイドラインの⽅針に基づき、サプライチェーン労働者に採⽤⼿数料を負担させることを防ぐため、SedexおよびSMETAの管理プロセス(移⺠労働者への労働慣⾏に関する複数のチェックポイントを含む)を活⽤して、モニタリングを行っています。

推進体制

人権デュー・ディリジェンスの推進にあたっては、人事・法務部門やサステナビリティ部門、調達部門、事業経営部門をはじめとする複数の部門により構成される「人権ワーキングチーム」が活動推進主体として定期的に戦略策定や活動進捗確認を行っています。同ワーキングチームがグローバルサステナビリティ委員会に活動の進捗状況を報告し、必要に応じて取締役会に報告を行っています。グローバルサステナビリティ委員会では、2024年2月・4月の計2回、グループ全体における人権デュー・ディリジェンスの活動内容報告や人権方針改定のテーマなどを取り上げ議論しました。また、外部有識者や人権NPOとも協議を行い、彼らの意見を考慮した形で社内における議論を行いました。
日々のオペレーションに関しては、サステナビリティ経営推進本部の人権担当グループ(部長、課長、メンバーで構成)が事務局として上記「人権ワーキングチーム」を毎月開催し、活動しています。ほか、海外グループ会社の人権担当者(人事、法務、コンプライアンス、調達部門から構成)と半年に一回程度、「グローバル人権ワーキングチーム」を開催し、人権に関する課題推進活動も行っています。人権尊重の活動においては、サステナビリティ担当役員が責任を負い、サステナビリティ担当役員の報酬評価には児童労働および強制労働をはじめとする人権テーマにおける活動も含まれており、取り組み推進のインセンティブとしています。

企業のリスクマネジメントへの統合

グローバルサステナビリティ委員会は、グループ全体のリスクマネジメントを推進するグローバルリスクマネジメント委員会と連携し、人権リスクについては企業経営における優先順位の高い最重要課題として評価し、定期的な情報共有や議論を行っています。また、必要に応じて人権専門の弁護士など外部有識者との連携・コミュニケーションを図っています。
グローバルサステナビリティ委員会やグローバルリスクマネジメント委員会で議論された内容は、取締役会にて適宜報告を行っています。なお、従来の国内人権課題への対応については引き続き中央委員会と各事業所の人権推進委員で構成する「人権教育推進委員会」の中で実施しています。

推進体制

推進体制

人権デュー・ディリジェンスの取り組み

サントリーグループでは、人権方針にて掲げている児童労働および強制労働をはじめとする6つを人権の重要テーマとして特定し、人権デュー・ディリジェンスをグローバルに推進しています。

人権デュー・ディリジェンスの実施プロセス

サントリーグループは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGPs)を実行の枠組みととらえ、事業活動を行うそれぞれの国または地域における法と規制を遵守し、社内およびサプライチェーンでの人権デュー・ディリジェンスを以下のプロセスの通り行ないます。

推進プロセス

ステークホルダーの特定

人権デュー・ディリジェンスを進める上で関連ステークホルダーの特定やエンゲージメントが重要と考えています。こちらで示すステークホルダーとは、負の影響を受け得る人権を有する人(ライツホルダー)およびその他関連ステークホルダー(NGO・NPO、有識者など)も含みます。その特定にあたって、外部の人権有識者と連携し、当社の事業構造を考慮した形での主要なステークホルダーを特定しました。

  1. 自社の従業員、製造委託先の従業員、工場周辺の地域社会
  2. 取引先の従業員(サプライヤー、農園)、取引先の工場・農業周辺の地域社会
  3. 投資家、格付け団体
  4. NGO、有識者
  5. お客様

アセスメント

人権に関するリスクの課題特定

「サントリーグループ人権方針」の策定プロセスにおいては、自社工場、製品の原料となる農産物を中心としたサプライチェーンの特徴を理解し、さらに外部のさまざまな人権関連報告書からの情報を活用するとともに、有識者との対話を実施し、グローバルな事業活動において重要な課題を、グループで取り組むべき人権尊重における重点テーマとして位置づけました(上記人権方針に記載)。活動推進にあたっては、人権尊重における重点テーマを中心に社内およびサプライチェーンを対象としたリスクアセスメントを進めています。

また、当社を含むサントリーグループとして対応すべきグローバルな人権リスクを常にアップデートするために、NGOや国連の人権専門家とのダイアログを定期的に実施し、人権デュー・ディリジェンス戦略に反映しています。

さらに、リスク特定を強化するため、グローバルリスクコンサルティング会社のVerisk Maplecroft社のリスクデータも活用しています。

人権リスクの評価

サプライチェーン上の⼈権リスクの管理にあたっては、SedexのSAQおよび評価ツール、 SMETA情報、そして第三者インタビューなどを通じて既存及び新規サプライヤーのリスクの評価を⾏っています。その評価の中には、地理的・経済的・社会的観点を考慮し、特定の⼈権リスクが起きやすい地域やライツホルダーの観点が含まれています。それを元に、リスクの⾼い分野から移⺠労働者へのインタビューなどを通じた詳細な評価やサプライヤーの取り組みに関する重要指摘事項への是正対応を推進しています。

【リスクアセスメント】
● 社内

人権デュー・ディリジェンスにおける「リスクアセスメント」を推進するために、グローバルリスクコンサルティング会社のVerisk Maplecroft社と連携し、一般的な国・業界データを用いて自社のグローバルでの90工場が立地する国における潜在リスク評価を実施した結果、、児童労働・強制労働の観点でHighリスク地域に立地している工場の国は、インド、ベトナム、メキシコ、タイ、マレーシアでした。 今後はHighリスク地域に立地する工場からスタートし、実態把握を確認するためのインパクトアセスメントを実施していきます。

潜在リスク評価の結果(総合
Lowリスク 61工場 68%
Midリスク 21工場 23%
Highリスク 8工場 9%
Very highリスク 0工場 0%
  • 対象人権リスク:児童労働、強制労働、労働時間、適切な賃金と福利厚生、差別・虐待・ハラスメント、結社の自由・団体交渉、救済へのアクセス、健康・安全性
● サプライチェーン

人権デュー・ディリジェンスにおける「リスクアセスメント」を推進するために、グローバルリスクコンサルティング会社のVerisk Maplecroft社と連携し、一般的な国・業界データを用いて自社が購買する主要原料における潜在リスク評価を実施しました(主要原料×産地の組みあわせで計124パターン)。

潜在リスク評価の結果(総合
Lowリスク 21品目 17%
Midリスク 58品目 47%
Highリスク 37品目 30%
Very highリスク 8品目 6%
  • 対象人権リスク:児童労働、強制労働、労働時間、適切な賃金と福利厚生、差別・虐待・ハラスメント、結社の自由・団体交渉、救済へのアクセス、健康・安全性

潜在リスク評価の結果、児童労働・強制労働の観点でVery highリスクかつVery highインパクト(購買高の多い)品目は下記の通りでした。
【児童労働】コーヒー、砂糖
【強制労働】コーヒー、ウーロン茶、エタノール、砂糖
今後は児童労働、強制労働においてVery highリスクかつVery highインパクト品目からスタートし、実態把握のためのインパクトアセスメントを実施していきます。

詳細は「サステナブル調達」をご覧ください

【インパクトアセスメント】
● 社内
自社工場におけるインパクトアセスメント

自社工場における人権リスクの可視化およびマネジメント強化を行うべく、Sedexを導入し、①労務管理、②安全衛生、③ビジネス倫理、④環境、の4つのカテゴリーの潜在リスクに対する管理能力を確認しています。22年上半期に日本の20工場(ビール事業、スピリッツ事業、飲料事業)および海外の潜在リスクの高い地域に立地しているスピリッツ、飲料の6工場(インド、メキシコ、マレーシア、タイ)を先行して実施、22年下半期より他工場にも展開して評価を実施しています。

(工場数)
  潜在リスク 管理能力
日本 0 2 18 20 0 0
インド 0 1 0 1 0 0
メキシコ 0 1 0 1 0 0
マレーシア 0 1 0 0 1 0
ベトナム 0 6 0 1 5 0
タイ 0 2 3 5 0 0
フィリピン 0 0 1 1 0 0
台湾 0 1 0 1 0 0
ニュージーランド 0 0 1 1 0 0
フランス 0 3 2 4 1 0
スペイン 0 2 1 1 2 0
イギリス 0 5 2 1 6 0
アイルランド 0 1 1 0 2 0
カナダ 0 1 0 0 1 0
アメリカ 0 5 0 0 5 0

上の表の通り、60工場中、潜在リスクに対して37工場が「高」管理能力、23工場が「中」管理能力、そして「低」管理能力の工場はなしという結果となりました。

当社が重要人権リスクと位置づけている強制労働と児童労働に関しては、特に意識して確認を行いました。

  • 児童労働
    15歳未満の労働者はいませんでしたが、2工場で18歳未満の労働者がいたため、労働状況を確認しています。
  • 強制労働
    複数の移民労働者が海外の21工場にいることを確認しました。 移民労働者雇用ガイドラインに従って実態把握を行っています。

「高」管理能力以外の工場については、今後の顕在化リスクを踏まえ、重要人権リスクを意識し、さらなるマネジメント強化を推進していきます。来年以降もSedexを活用して継続的なマネジメントにつなげていきます。

● サプライチェーン

サントリーグループは「サステナブル調達基本方針」を制定し、ビジネスパートナーと連携しながら、サプライチェーン全体での人権尊重への取り組みを進めています。

Sedexによるインパクトアセスメント

2019年6月、世界最大のサプライヤーエシカル情報の共有プラットフォームである「Sedex」に加入しました。サプライヤーに対してSedexへの加盟、SAQ質問への回答など情報共有の要請を進めています。SAQでは、児童労働や強制労働などを含む人権に関する質問をはじめ、労働環境や安全衛生に配慮しているかを中心にサプライチェーンに潜在する社会リスクの評価を行っています。2023年11月時点で、1150以上の製造拠点を含む主要サプライヤー約750社のSedex加入を確認しており、今後もすべての主要サプライヤーに対し、Sedexへの加盟案内を進めます。また、SAQによるリスク評価の結果を踏まえ、地域別で取り組みの優先順位を決定した上、行動計画の策定と取り組みの推進を進めます。

  • SAQ:Self-Assessment Questionnaire
インパクトアセスメント状況

Sedexが提供するツールを活用し、潜在リスクと顕在リスクの特定を行っています。具体的には、SAQでサプライヤーの潜在リスクと潜在リスクの管理能力を評価しています。また、Sedex上で確認できる第三者監査情報をもとに顕在リスクを把握しています。

サプライヤーの潜在リスク(2023年11月時点)

Sedexを通じた評価を進め、潜在リスク評価を実施することができた製造場は1084件となっています(2022年11月と比べて12件増)。

(製造場数・割合)
  2023年11月 変化 2022年11月
Low 301 28% 19 282 27%
Medium 623 57% 8 615 59%
High 78 7% -8 86 8%
回答中 82 8% -7 89 9%
合計 1084   12 1072  
サプライヤーの顕在リスク(2023年11月時点)

顕在リスクとして特定できた重要指摘事項は累計407件となっています。

サプライヤーの顕在リスク(2023年11月時点)
アンケートによる確認

上記Sedex未加入のサプライヤーに対しては、サステナビリティ調達アンケートを実施しています。既存のサプライヤーに限定せず、新規に取引を開始するサプライヤーにも同様に確認しています。
また、サントリーグループでは、海外グループに対して「サントリーグループ・サプライヤーガイドライン」を共有するとともに、海外グループ会社が参加する「グローバル調達会議」で各社のサステナビリティに対する取り組みを確認しています。

移民労働者に関する人権デュー・ディリジェンス実施

2019年に経済人コー円卓会議日本委員会(以下、CRTという)が主催した個社別での海外有識者とのダイアログにおいて助言をいただき、日本における重要な人権問題の一つである外国人技能実習生を含む移民労働者の労働環境について、定期的に状況把握を行っています。グループ会社のうち、外国人技能実習生受け入れを行っている井筒まい泉(株)の都筑工場、高津工場で第三者の立場としてCRTに依頼し、人権インパクトアセスメントとして2021年に引き続き2024年、外国人技能実習生を対象に対面でヒアリングを実施しました。インタビュー相手が外国人かつ女性ということを考慮し、発生し得る特に重要な人権リスクを特定した上でそれに基づいた直接インタビューを実施し、発言の匿名性を担保しライツホルダーが自由に意見を言いやすい形で対話を行いました。
その結果、CRTの石田事務局長より、両工場ともに『外国人労働者と日本人スタッフとの関係性は良好であり、工場側には重要な戦力として外国人労働者を位置づけ、大切にする意識がみられる』とのコメントをいただきました。また、強制的な長時間労働、賃金未払い、危険な状況下での作業などについても、実習生に対して『顕著な人権への負の影響は見受けられなかった』と評価いただきました。避難訓練の周知や契約書の内容などご指摘いただいた点については、改善に向けて対策を検討していくことを社内で確認しました。
さらなる外国人労働者における職場環境整備を目指して円滑なコミュニケーションを実施し、今後も良好な体制を継続していきます。

【報告書】サントリーホールディングス株式会社 外国人労働者へのインタビュー実施結果(PDFファイル:1.01MB)

是正に向けた取り組み

是正に向けた取り組み推進の一環として、サントリーグループの事業活動が、人権に対する負の影響を直接に引き起こしたことが明らかとなった場合、または取引関係等を通じた間接的な影響が明らかとなった場合、あるいは明らかではなくとも負の影響が疑われる場合には、国際基準に基づいた対話と適切な手続きを通じてその是正に取り組みます。さらに、サントリーグループのサプライヤーにも是正に取り組むことを期待します。また、是正を実施するために、外部人権有識者(NPO)、Sedexなどの外部組織と連携し、発見した課題についてサプライヤーと対話を行い、是正に取り組みます。

是正のプロセス

人権方針に記載しているように、当社にとっての人権における重要テーマの中には児童労働・強制労働、差別・ハラスメント、結社の自由、働きやすい職場環境(安全衛生)が含まれています。SedexのSAQの中で各重要テーマと関連する数多くの設問を特定し、自社工場とサプライチェーンにおける評価と継続的なモニタリングに活用しています。現在は購買高の70%以上を占めるサプライヤーのSedexを通じた継続的なモニタリングを実施しており、顕在リスクを特定できたサプライヤーに対してより強いエンゲージメントを行っています。そのモニタリングプロセスの中には、サプライチェーンに関するSMETA監査情報も含まれており、現地労働者へのインタビューも含まれています。このような形でライツホルダーの声を極力活かす取り組みを行っています。

SedexおよびSMETA情報を活用したサントリーグループの是正のプロセスは以下の通りです。

  • SMETAは労働・健康・安全に特に注力した世界有数の監査スキームです。とりわけ、労働安全衛生、過労、差別、低賃金、強制労働等から労働者を守ることを目的としています。また、特に強制労働リスクを監視するため、SMETAはSedexリスク評価プラットフォームに組み込まれた「強制労働指標(FLI)」を活用しています。
潜在リスクの場合
  1. 1.
    目標: 潜在リスクの回避対応が取れている
  2. 2.
    指標: Sedexのリスクスコアと管理能力スコア
  3. 3.
    納期: 定期的(半年に1回程度)に、リスクスコアと管理能力スコアをチェックし、取引先様の改善活動状況を確認する
顕在リスクの場合
  1. 1.
    目標: 顕在化リスクをゼロ化する
  2. 2.
    指標: 第三者監査での重要指摘事項
  3. 3.
    納期: 6ヵ月月以内に、指摘事項が解消されていることを確認する

また、顕在リスクの指摘事項が解消されていることが確認できなかった場合は、SMETA監査の受査を促してより強く改善を働きかけます。

サプライヤーの潜在リスク(2023年11月時点)

上記で示したSedexで確認できる潜在リスクについては、潜在リスクに対する製造場の管理能力も併せて評価し、「高リスク+低管理能力」の製造場を中心に直接的なエンゲージメントを行い、管理能力を上げるための働きかけをしています。その結果として、サプライヤーへの働きかけを開始した2021年から多くの製造場の管理能力が向上しています。これからも引き続きサプライヤーとのエンゲージメントを継続しながら管理能力を上げるための改善活動を推進していきます。
また、当社は、潜在的に人権リスクが高いとされる移民労働者が働く工場および人数を把握の上、移民労働者特有の課題が顕在化していないかを確認しています。

管理能力スコアの推移
管理能力スコアの推移
サプライヤーの顕在リスク(2023年11月時点)

上記で示したSedex上で確認できる第三者監査結果としての重要指摘事項については、サプライヤーと直接コミュニケーションを取り、課題が指摘されてから6ヵ月以内に是正されていることの確認を進めています。2023年11月末時点で特定した累計407件のうち、365件がすでに是正されたことを確認しました。残件に関しては引き続きサプライヤーとのエンゲージメントを継続しながら改善活動を推進していきます。

サプライヤーの顕在リスク(2023年11月時点)

以下の人権重要テーマについて、SedexのSAQ回答内容をすべて確認し、潜在リスクのある回答内容の確認を行いました。同時に、SMETA監査での指摘事項の確認を行い、潜在リスクが顕在化していないか、顕在化している場合はサプライヤーにエンゲージメントを行い、是正処置の状況を確認しています。

● 児童労働防止の取り組み

児童労働はサプライチェーンにおける重要人権リスクの一つと位置づけており、SedexおよびSMETA監査の情報を通じてサプライヤーとのマネジメントを強化しています。例えば、Sedexでの設問を活用し、直接労働者と間接労働者において児童労働に該当する恐れのある労働者がいるか確認を行っています(15歳未満労働者)。また、SMETAを通じて実際に行われた現場監査をもとに労働者の年齢確認がしっかり行われているかを確認し、課題が顕在化かつ未是正の場合は是正に向けたエンゲージメントをしています。
約1050工場のSAQ回答内容を確認した結果、15歳以下の児童労働はありませんでした。16-17歳の労働者がいる工場は5%ありました。SMETA監査の指摘事項でも17歳の労働者の指摘が1件ありましたが、現地法上問題ないことを確認しました。
その他、労働者の年齢記録や証明書類の不備の指摘が10件ありましたが、サプライヤーにエンゲージメントを行い、記録方法が是正されていることを確認しています。

● 強制労働防止の取り組み

強制労働はサプライチェーンにおける重要人権リスクの一つと位置づけており、SedexおよびSMETA監査の情報を通じてサプライヤーとのマネジメントを強化しています。
1) 採用手数料
約1050工場のSAQ回答内容を確認した結果、労働者の採用手数料負担について方針がないとの回答が4%、取り組みがないとの回答が1%ありました。また、労働者が何らかの費用負担をしている、との回答が1%ありました。SMETA監査の指摘事項でも、労働者の採用手数料負担に関する指摘が5件ありましたが、規定改定や返金などにより対応済みであることを確認しました。同様に、賃金減額に関する指摘が4件ありましたが、現地法上問題となる控除はないことを確認しました。

2) 賃金
約1050工場のSAQ回答内容を確認した結果、賃金支払は95%が銀行振込などのデジタル支払いで、現金支払いのみは2%程度でした。間接雇用者の残業代管理に課題がある回答が16%ありました。
男女の最低賃金差が50%以上あるサイトは約0.1%で、男女間の賃金格差の課題はありませんでした。
また間接雇用者の最低賃金の把握に課題があることも判明しました。SMETA監査の指摘事項でも賃金に関する指摘が38件ありました。
サプライヤーにエンゲージメントを行い、未是正の賃金問題に関する確定事例はないことを確認しています。

3) 行動の自由
SAQ回答からもSMETA監査からも、行動の自由に関するリスク情報は見つかりませんでした。

4) 労働時間
約1050工場のSAQ回答内容を確認した結果、労働時間の管理システムがあるのが約85%、マニュアル管理が約15%となっており、SMETA監査の指摘事項でも労働時間の記録・管理に関する指摘が66件ありました。
サプライヤーにエンゲージメントを行い、労働時間の管理方法の向上に努めます。

● 結社の自由と団体交渉侵害防止の取り組み

結社の自由と団体交渉はサプライチェーンにおける重要人権リスクの一つと位置づけており、その侵害防止のためにSedexおよびSMETA情報を通じてサプライヤーとのマネジメントを強化しています。例えば、Sedexでの設問を活用し、サプライヤーでの意思決定に反映できる労働者が参画可能なプロセスや組織の有無、労働組合の有無を確認しています。また、SMETAを通じて結社の自由と団体交渉が遵守されているかを確認し、課題が顕在化かつ未是正の場合は是正に向けたエンゲージメントをしています。
SAQデータの結果、労働者が使用可能な、会社の意思決定に反映できるプロセス、組織、取り決めの有無という重要ポイントについて、整備されていない製造場数は14%でした。また、SMETA監査のデータとして結社の自由と団体交渉に関する指摘事項が5件ありましたが、是正がすでに行われていることを確認しています。

● 安全衛生の取り組み

安全衛生はサプライチェーンにおける重要人権リスクの一つと位置づけており、その安全衛生推進のためにSedexおよびSMETA情報を通じてサプライヤーとのマネジメントを強化しています。例えば、Sedexでの設問を活用し、安全衛生に関する方針の有無、重大労災の有無、火災安全訓練の参加者人数、 安全衛生強化に向けたサプライヤーの既存取り組みなどを確認しています。 また、SMETAを通じて同様の確認を行い、課題が顕在化かつ未是正の場合は是正に向けたエンゲージメントをしています。
SAQデータの結果、過去12ヵ月月間における記録された事故数が100件を超えた製造場は2%でした。また、重大事故が20件以上発生した製造場は1%でした。このようなハイリスク製造場に対して労働安全強化に向けたエンゲージメントを行っていきます。また、SMETA監査のデータとして、安全衛生に関する指摘事項が累計で190件ありましたが、その中で167件がすでに是正が行われていることを確認しています。未是正の23件に関しては引き続きサプライヤーへのエンゲージメントを行います。SedexのSAQ回答とSMETAの指摘事項から分かった安全衛生に関するリスクについての是正対応を他のサプライヤーにも情報共有し、安全衛生の管理強化を図りました(2023年度)。

● 土地の権利への取り組み

土地の権利に関する人権リスクを把握するためにSedex情報を通じてサプライヤーとのマネジメントを強化しています。具体的には、Sedexでの設問を活用し、サプライヤーの製造場を建設する前にその土地が住宅として利用されていたかを確認しています。
SAQの結果、工業用サイトに転換する前は住宅用建物として利用されていた土地が1%ありました。その転換が土地の権利侵害につながった可能性があるかについてサプライヤーをエンゲージして確認を行っていきます。

● 水アクセス・衛生への取り組み

現地の地域社会の水アクセス・衛生の権利に関するリスクを把握するためにSedex情報を通じてサプライヤーとのマネジメントを強化しています。例えば、Sedexでの設問を活用し、サプライヤーのオペレーションによるさまざまな汚染リスク(土壌、河川など)、水の使用量、排水管理の有無、現地地域への水質影響に対するマネジメントなどを確認しています。SAQの結果、排水品質を管理していない製造場は5%ありました。その他の工場では、排水品質の管理や社内教育が実施されてました。SMETA監査のデータとしては、水処理に関して3件の指摘事項が確認されており、3件とも是正対応が取られている事を、サプライヤーに確認しています。

● 女性の権利の取り組み

女性の権利に関するリスクを把握するためにSedex情報を通じてサプライヤーとのマネジメントを強化しています。例えば、Sedexでの設問を活用し、労働者の男女比率、女性管理職比率、差別防止に関する方針の有無、女性労働者の欠勤率・離職率などを確認しています。SAQの結果、洗身設備は男女別になっていない製造場は5%、過去1年間の離職率が50%以上だった製造場は女性労働者が2%、男性労働者が3%、過去1年間の欠勤率が30%以上だった製造場は女性労働者が1%、男性労働者が3%でした。SMETA監査のデータとしては顕在化した指摘事項は確認されませんでした。

● 救済

例えば、Sedexでの設問を活用し、従業員の苦情通報の仕組や苦情処理マネジメントなどを確認しています。SAQの結果、労働組合などを通じた通報の仕組みがあるのが約70%、経営層に直訴できる仕組みがあるのが約75%、通報ホットラインがあるのが約55%でした。こうした仕組みは工場内労働者に対するもので、Off-site労働者に対する仕組みがある工場はほぼありませんでした。サプライチェーンでの適用含めて、今後の課題と捉えています。SMETA監査のデータとしては苦情処理に関する指摘事項はありませんでした。

● トレーニング

例えば、Sedexでの設問を活用し、従業員に対するトレーニングの状況を確認しています。SAQの結果、約50%の工場が、労働者や人事・採用方針に関するトレーニングがあり、平均約200名を超える従業員が訓練を受けてます。約65%の工場が環境についてのトレーニングがあり、マネージャーを中心に平均約30名が訓練を受けてます。約70%のサイトが贈賄についてのトレーニングがあり、平均約180名が訓練を受けてます。約50%のサイトが責任ある調達に関するトレーニングを受けており、平均約25名(調達部門)が訓練を受けています。社外のサプライヤーに対しても、約20%のサイトが同様のトレーニングを行っています。
SMETA監査のデータでは、従業員が必要な案安全衛生に関する訓練を受けていないとの指摘が3件、ビジネス倫理・収賄に関する訓練を受けていないとの指摘が13件ありました。指摘を受けたサイトに対してはサプライヤーにエンゲージし是正対応が取られていることを確認していますが、従業員やサプライヤーに対する訓練には課題があると認識できたため、今後Sedexのe-ラーニングなどの活用をサプライヤーにも推薦していきます。

実行したアクションの効果測定(モニタリング)

自社工場およびサプライチェーンにおけるSedexを通じた評価・是正取り組みの中で、発見したリスクに対する是正取り組み後に、実行前と実行後の改善度合いをSedexの評価ツールを通じて複数項目(安全衛生、労働者年齢、差別、自由選択に基づいた労働など)で確認し、効果測定を行っています。Sedex上の評価の場合、項目によって潜在リスクを下げることが難しい場合がありますが、潜在リスクが高くともその管理能力が十分に高ければ結果的に潜在リスクが顕在化するリスクが低いという認識のもと、自社工場およびサプライヤーを対象にした是正取り組みを行う上では特に管理能力の向上を意識して取り組んでいます。
さらに、上記一連の流れのなかで、効果測定の結果についてステークホルダーにフィードバックし、改善活動につながる直接的なエンゲージメントを行っています。

今後のアクションプラン

上記プロセスで見えてきたリスクなどを考慮し、今後のアクションプランとして以下の重点取り組みを実施していきます。

● 自社工場

国内外の主要事業の工場で、24年~25年にかけて、Sedexの新しい評価SAQを活用した評価活動を行っていきます。
また、製造委託先や自社工場の協力会社についても同様にSedexによる評価活動を進めていく予定です。

● サプライチェーン

一次サプライヤーに関しては、Sedexを通じて現在可視化している顕在リスク「重要指摘事項」のゼロ化推進を継続するとともに、潜在リスクについてはサプライヤーの管理能力を上げるための働きかけを継続していきます。さらに、主要原料のサプライチェーン上流サプライヤーへのインパクトアセスメントを推進します。

● 移民労働者

自社工場以外で移民労働者(特に技能実習生)がいる現場を特定し、重要なリスクである「強制労働」の度合いに応じて必要な取り組みを検討します。

救済へのアクセス

社内苦情処理について

● ホットライン

サントリーグループでは「企業倫理綱領」に反する行為があることを従業員が知った場合、まず上司に報告・相談することを基本としています。しかしそうした報告・相談が適さない場合に問題を早期に発見し解決するために以下の仕組みを設けています。
国内については、グループ全体の共通窓口としてコンプライアンス室および社外法律事務所に「コンプライアンス・ホットライン」を設置しています。それぞれは、日本語を母国語としない外国籍の従業員もストレスなく利用できるように、多言語で受付可能にしています。
グローバルについては、グローバルリスクマネジメント体制の一環として、海外グループ会社も包括した全世界共有の通報受付窓口「グローバル・ホットライン」も設置しています。このホットラインは、英語、中国語、スペイン語等の多言語に対応しており、さまざまな国の方から報告・相談を受けられるようにしています。また、技術的や経済的な課題が理由で利用できないことを避けるために、スマートフォン含むWeb、固定電話、郵便等の経由を用いて、あらゆる従業員にとってアクセス可能な受付体制を整えています。
ホットライン窓口の社内における周知状況については、毎年「従業員意識調査」の機会等を通じて測定をしており、常に9割を超える認知率を確保しているとともに、グループの経営層に向けて前年比較も含めたその結果をフィードバックし対話する機会を持つことで、窓口の認知率およびユーザビリティの維持と向上に努めています。
2022年の国内グループ各社窓口と海外グループ窓口の通報合計件数は215件でした(内サントリー食品インターナショナルグループへの通報は99件)。件数のうち約6割は労務・人事ならびにマネジメントに関するもので、人権に関する内容も含まれています。
通報の内容について、コンプライアンス違反が疑わしい事案の場合は、サントリーグループ内部通報制度規定に従って当該案件関係者すべてのプライバシー保護に配慮した上で対応を進めています。その際には、通報者が置かれる事情を尊重し、速やかにコンプライアンス担当者が社内で極秘調査を行うとともに、当該関係者の担当経営幹部を巻き込みながら是正を速やかに求め、対処が成されたことを見届けています。また、調査結果については、通報者ならびに経営層へそれぞれフィードバックを行い、問題の改善や再発防止策につなげています。さらには、対処後一定の期間を置いた段階で、フォローアップとして変化の様子を経営層幹部から報告をもらうことで当該事案のクロージングとするフローで運用しています。
一方で、重点課題である「ハラスメント」への対策については、多くの場合が同僚や関係者との価値観の違いが根底にあることから、その違いを双方が認めあえる風土を目指して「アンコンシャスバイアス」について学ぶ機会を設けることで、寛容的な組織づくりのセミナーを随時展開を開始しています。

● 通報者の保護

サントリーグループでは「コンプライアンス・ホットライン」の設置と同時に、就業規則で通報者が報復行為や噂の拡散等による不利益を被るような取り扱いを禁止しています。それらを防止するための方策として、コンプライアンス室が調査を行う際には、その開始時に関係者・対象者を特定した上で都度「内部通報制度規定」の確認を行うことで、通報者としての権利を阻害しないように配慮しています。
加えて、調査事案のクロージングの際に通報者へのフォローアップをする際に不利益を被っていないかを確認しています。
さらには「内部通報制度規定」を日常から積極的に社内周知することで、当該関係者のみならず職場全体として通報者等の保護が成される風土づくりに努めています。

サントリーグループコンプライアンス

社外苦情処理について

サントリーグループは、創業以来、お客様満足を第一に考え、お客様との双方向コミュニケーションを大切にしています。また、すべての人々をお客様と捉えるという考えのもと、サプライヤーは大事なお客様と捉えており、人権デュー・ディリジェンスを進める上で自社従業員だけでなく、サントリーが直接取引をしているサプライヤー、そしてさらにその先のサプライヤーや関係者の方(コミュニティー)に対しても人権課題も含めた通報窓口を設定することが重要だと思っています。さらに、サプライヤーガイドラインでも記載している通り、サプライヤーに対しても報復防止対策を取った上での同様の救済メカニズムの設置を期待しており、それによってサプライチェーン上流での救済の確保に努めています。
現在は、サプライヤーやその関係者の方(コミュニティー)が利用できる通報窓口として、「お客様センター」の仕組みを設けています。お客様センターでは、すべてのお客様からのお問い合わせを受け付けています。
サプライヤーからの人権課題やその他問い合わせの場合は下記フォームよりご連絡ください (日・英対応可能)

お客様センターお問い合わせフォーム

移民労働者の苦情処理メカニズム

人権デュー・ディリジェンスの取り組みを強化するため、サントリーグループは2023年に、「責任ある外国人労働者受け入れプラットフォーム(JP-MIRAI)」に加盟しました。さまざまなステークホルダーが関わるJP-MIRAIの取り組みに参加することで、当社は苦情処理メカニズムの構築を目指しています。こうした苦情処理メカニズムにより、特に移民労働者のように脆弱な立場にあるサプライチェーン労働者やその代表者がいかなる形の報復や検閲を受けることなく、彼らの声を聞くことができるだけでなく、外国での生活に役立つ情報や語学支援を得る方法など、労働者のQOL向上や権利保護に役立つ情報を彼らに直接提供することができます。
JP-MIRAIポータルでは、利用者が電話やチャット、電子メールにより匿名で支援を求めることができます。支援を求めた場合、まず、移民労働者の支援を専門とするNPOにつながります。NPOは労働者からの相談内容に応じてサントリーへ報告します。その後、サントリーはリスク発生の可能性を速やかに分析し、該当する部署・企業に対して、労働者への支援を行うとともに一刻も早い是正取り組みを実施することをサプライヤーに対して要請します。
JP-MIRAIポータルは9言語(やさしい日本語、英語、スペイン語、ポルトガル語、インドネシア語、ベトナム語、タガログ語、中国語、ミャンマー語)に対応しています。

詳しくはJP-MIRAIの Webサイトをご覧ください。

JP-MIRAI

ステークホルダーエンゲージメント

負の影響を受けるステークホルダー(ライツホルダー)をエンゲージするための重要なプロセスとして「Sedexを通じた情報収集」および「第三者インタビュー」を活用しています。
「Sedexを通じた情報収集」の事例として、自社工場でのSedex展開を進めるにあたり各工場の事務長と直接コミュニケーションを行い、人権リスクの観点での意見交換を行っています。また、「第三者インタビュー」の事例として、2024年2月には当社グループ会社である井筒まい泉(株)の移民労働者(外国人技能実習生)に対するNGOによる第三者インタビューを実施しています。そのなかで、移民労働者の人権と関わる問題(コミュニケーション、異文化理解、より快適な職場の実現)に対する視点に耳を傾け、当社の今後の人権デュー・ディリジェンスに活かす重要な情報として位置づけています。

ビジネスパートナーとのコミュニケーション

ステークホルダーエンゲージメントでは、人権リスク・インパクトにおけるステークホルダーとのコミュニケーションが重要と考えています。 例えばライツホルダーを意識した形での直接的なコミュニケーション(前述した井筒まい泉(株)の移民労働者インタビュー) やサプライヤーに対する説明会でのコミュニケーション(サプライヤーガイドライン遵守)を実施しています。
一方で、サプライチェーン上流のライツホルダーを特定し、アプローチすることは非常に重要なステークホルダーとのコミュニケーションではあるものの、課題となるべきチャレンジングな活動領域でもあります。当社で特定した「潜在リスク高・高インパクト原料」の原料を対象に今後ステークホルダーを特定し、コミュニケーションを図っていく予定です。

サプライヤー向け人権研修

2022年、サントリーグループは主要サプライヤー向けにサステナビリティに関する年間研修プログラムを開始しました。強制労働や児童労働などの人権問題に取り組むもので、研修では原料サプライヤーにこれらのリスクについて認識していただくとともに、リスクの防止と緩和に向けてどのように行動するかについて理解いただきました。第1回の研修にはサプライヤー50社から120人を上回る参加がありました。この研修の効果はSedexの評価ツールにおける人権関連スコアにより評価を行っています。
また2023年11月には、国内の包材サプライヤーとの労働安全衛生に関する意見交換会を実施しました。これはSedexの評価結果を受けて、横断的な課題である重大事故発生回避について意見交換を実施したもので、フォークリフトなど危険業務事故の回避のために取り得る方策について包材サプライヤー様によるグループディスカッションを通じて議論を行いました。さらに、その方策について各々の社内啓発体制についての発表も行い、Sedexによる人権活動評価の結果としてこのような労働安全衛生に向けた積極的な啓発の場を実現することができました。

従業員とのコミュニケーション

意識向上に向けた取り組み

サントリーグループでは毎年、約2万人の従業員を対象に人権を含む世界のESG動向や自社の取り組みについて学ぶサステナビリティe-ラーニングを実施しています。また、サントリーグループの全役員・従業員に対して「企業倫理綱領」の理解を促進し、日々の行動の中で実践していけるよう、サントリーグループの理念体系をまとめた小冊子に「企業倫理綱領」を掲載し、配布しています。また、グローバルでの理解を促すために、この冊子は11ヵ国語に翻訳されており、毎年1度内容を読み、署名する形で周知しています。海外グループ会社も各地で同様の理解促進の取り組みを行っています。
また、マネージャー層に関しては毎年、新任マネージャー研修のなかでマネージャーに対して人権も含めたサステナビリティに関する説明を設けています。さらに、人権取り組みと密接に関わっている調達部門に関しては、メンバー・マネージャー層とも人権も含めたサステナビリティに関する説明を設けています。

結社の自由と団体交渉侵害防止の取り組み

サントリーグループでは、定期的に労働組合の代表と経営層が労使協議会を開催し、労働課題から経営・事業課題まで労働組合と密接に話し合い、経営層も組合の指摘事項には、真摯に対応しています。 (管理職を除く全従業員が加入対象)

過度な労働時間削減への取り組み

サントリーグループでは労働時間を含む各国の労働関連法の順守徹底に加え、労使協働で長時間労働の抑制やサービス残業の禁止、年次有給休暇の促進に取り組んでいます。また、パソコンの使用時間など各種勤怠情報を日次で確認できるシステムを導入し、セルフマネジメントをサポートするとともに、必要に応じて改善指導などの対策を講じています。

有識者ダイアログ

サントリーグループは、サプライチェーンにおける強制労働リスクなど、人権関連の戦略および取り組みを強化するため、有識者と定期的に意⾒交換を実施しています。2023年には人権NGOであるヒューマンライツ・ウォッチや国際的NGOの人権専門家とそれぞれダイアログを実施しました。

ヒューマンライツ・ウォッチとのダイアログでは、事業進出時の検討の際に必要となる人権リスクの把握や人権課題が顕在化した場合の対応について対話を行った他、グローバルなNGOの人権専門家からは、欧州のデュー・ディリジェンス指令案を見据え、人権に関する施策で新たに検討すべき点について助言を受けました。
経済人コー円卓会議日本委員会(CRT Japan)の協力のもと実施した世界有識者ダイアログでは、原材料サプライチェーン上流における人権問題への支援規模と範囲の考え方やバリューチェーンの優先順位付け、市民社会との対話などについて活発な意見交換を行い、対応についての考え方やポイントについて助言を受けました。

サントリーグループでは今後もこのような対話を実施し、⼈権の施策に反映していきます。

<近年実施した人権に関する有識者ダイアログ>

実施年 内容
2019年
  • 自社生産拠点におけるエシカルな生産活動と移民労働者問題について
2020年
  • 自社工場および移民労働者に関するリスクアセスメントの取り組みを開始を受けて、取り組み内容の進捗共有
  • 原材料と移民労働者に関するリスクアセスメントに関するコロナ禍における効率的かつ効果的な進め方について
2022年
  • 上流サプライチェーンにおける強制労働のリスクや移民労働者に関する取り組みの進捗共有
2023年
  • 人権リスクの把握方法や人権課題が顕在化した場合の対応について
  • 欧州のデュー・ディリジェンス指令案を見据えて新たに検討すべき人権に関する施策について
  • 原材料サプライチェーン上流における人権問題への支援規模と範囲の考え方
  • バリューチェーンの優先順位付け
  • 市民社会との対話

人権デュー・ディリジェンスの法制化に伴う各国グループ会社の対応(Statement)