考え方と方針
サントリーグループでは、酒類を製造・販売する企業の責任として、アルコール関連問題に積極的に取り組んでいます。
サントリーグループの目指す姿
アルコールの有害な使用によって引き起こされる問題を「アルコール関連問題」と呼び、その影響は身体やこころ、家族、職場、地域など多岐に及びます。アルコール関連問題は個人の健康への影響だけでなく、ハラスメントや暴力、飲酒運転などの犯罪までさまざまな社会的問題も含んでいるのです。有害な飲酒の問題は「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」が2010年にWHOで採択されるなど世界的に関心が高まっており、日本でも「アルコール健康障害対策基本計画」が2016年に策定され、国の重点課題としてアルコール関連問題の予防やアルコール依存症などの健康障害の減少に向けた取り組みが進められています。
「お酒に関する正しい知識を持ち、お酒と上手につきあうことで健康的で豊かな生活を送ること」。
これが私たちサントリーグループの目指す姿です。
アルコールの有害な使用を減らすことは社会にとって重要な課題であり、サントリーグループでは責任あるマーケティングの実践と適正飲酒の啓発活動を大きな柱として積極的に活動を推進しています。
適正飲酒のためにーーサントリーの基本理念・行動指針(2002年制定)
サントリーグループは、アルコール飲料の特性を認識し、アルコール関連問題の予防に努めるとともに、適正飲酒の考え方を普及させることによって、人々の健康で文化的な生活のために貢献します。
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1.アルコール飲料の持つ致酔性、依存性が、身体的、精神的、社会的な問題を引き起こすことを認識し、アルコール関連問題の予防をめざします。
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2.体質の違いや身体の状況、飲酒に対する考え方の違いが尊重されるより良い飲酒環境の形成をめざします。
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3.節度をわきまえた適度な飲酒(適正飲酒)は、心身の健康に役立ち、人間関係に潤いを与えるとの認識に立って、その正しいつきあい方についての知識の普及に努めます。
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1.飲酒に関する正しい知識の啓発に努めます。
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2.社会活動に積極的に協力します。
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・20歳未満飲酒防止
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・飲酒運転防止
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・イッキ飲み防止
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・アルコール・ハラスメント防止など
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3.法令、当社ならびに業界自主基準を厳守します。
推進体制
サントリーグループは、1976年に「サントリー宣伝コード」を制定し、飲酒に関する宣伝・広告表現の自主規制を業界に先駆けて開始しました。その後、1991年にアルコール関連の専門組織「ARS※1委員会」と、事務局であるARS室(現・グローバルARS部)を設置。1.責任あるマーケティングの実践、2.社内外への適正飲酒の啓発などを行っています。2021年には、サントリーグループ国内従業員に向けて「新DRINK SMART宣言※2」を発出。毎年11月を「ARS活動強化月間」と位置づけ、取り組みを強化しています。
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※1Alcohol Responsibility and Sustainabilityの略。酒類を製造・販売する企業の責任として、アルコール関連問題に積極的に取り組んでいます。
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※22018年に「DRINK SMART宣言」を発出。以降のアルコールを取り巻く環境変化を鑑み、新たに発出したもの。「わたしたち一人ひとりがお酒に関する正しい知識を持ち、飲酒マナーを守ります」「わたしたちは世界を代表する酒類企業グループの一員であることを自覚し、自分以外は全員お客様と考えて適正飲酒を働きかけることを実践します」の2つの柱からなります。
目標
サントリーグループは、これまで業界に先駆けて、アルコール関連問題に積極的に取り組んできました。今後も社内外への適正飲酒啓発活動を積極的に展開していきます。
2025年~2030年 活動目標
目標 | 目標値 | |
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【日本】 お酒の価値・適正飲酒啓発 |
適正飲酒の大切さとお酒の魅力を伝える活動「ドリンクスマイル」のメッセージをセミナーを通じて直接届ける | 20万人 |
【グローバル】 適正飲酒啓発 コミュニケーション |
適正飲酒に関するメッセージを届ける ・国内外で適正飲酒啓発広告を中心としたメッセージ発信(SNS・ウェブサイトなど各種メディアにて展開) |
延べ10億人へ発信 |
【グローバル】 従業員教育 |
従業員への教育を定期的に実施する | 従業員約4万人(毎年実施) |
2022年~2024年活動目標 達成状況
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①国内のお客様(延べ1億人)に向けて適正飲酒に関するメッセージを届ける:2024年4月達成
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②缶商品の容器に純アルコール量を表示する(ビール類、RTD、ワイン):2023年3月達成
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③適正飲酒啓発プログラムへの参加(国内グループ会社全従業員約2万人):eラーニング実施率99%超
取り組み
責任あるマーケティングの実践
グローバルARS部は、酒類製品に関するすべてのマーケティング活動に対して、適法性・妥当性の社内事前審査を行い、不適切なマーケティング活動を未然に防止しています。
2006年には、商品表示などについても事前審査をシステム化し、2007年には酒類の広告・販促活動に関する社内自主基準を改定し、活動をより強化しました。2007年以降も、業界団体と連携して自主基準の改定を行い、関連部署において定期的に研修を行いながら、責任あるマーケティング活動を推進しています。
社会情勢に対応した自主基準の改定(業界・社内)
社会情勢に対応して、「飲酒に関する連絡協議会」が制定した酒類業界の自主基準、および社内自主基準を改定しています。2010年からはCMに妊産婦飲酒の注意表示を実施。また、テレビCMの土・日・祝日の自粛時間を5時00分~12時00分までから、5時00分~18時00分までに延長し、年間を通して5時00分~18時00分まで酒類のテレビ広告を自粛することとしました。
さらに、2014年に施行された「アルコール健康障害対策基本法」に基づき、不適切な飲酒の誘引防止のための自主的な取り組みとして、テレビ広告で使用するタレントの年齢を25歳以上に引き上げることや、テレビ広告の飲酒表現で、喉元を通る「ゴクゴク」の効果音を使わないことなどを実施しています。
事例1)ノンアルコール飲料推進の取り組み
サントリーグループでは、適正飲酒の啓発のほか、アルコールの影響を気にせず幅広いお客様に楽しんでいただくため、ノンアルコール飲料の推進も行っています。同時に、ノンアルコール飲料については味わいが酒類に類似していることから、満20歳以上の飲用を想定した社内基準を設け、これに対応しています。
新型コロナウイルス感染拡大の影響でお客様の飲み方が多様化し、ノンアルコール飲料や低アルコール飲料の市場が拡大しています。既存商品のさらなる品質向上や新たな商品ラインアップの拡充により、今後も成長が見込まれるこの市場を牽引していきます。
事例2)商品パッケージへの注意表示
酒類業界の自主基準に則り、すべての酒類商品に、20歳未満飲酒防止と妊産婦飲酒防止の注意表示を行っています。またビールやRTDといったアルコール度数の低い商品には「お酒」マークを表示し、ジュースとの誤飲防止に努めています。

事例3)ホームページでの年齢認証
2015年より、20歳未満飲酒防止のため、酒類ホームページのブランドサイトの入り口で20歳以上であることを確認するための年齢認証ゲートを設けています。

事例4)営業・マーケティング担当者向け勉強会の実施
年間を通じて、グローバルARS部が主体となり、営業部門や新任マーケティング担当者向けに、業界自主基準、社内自主基準等の理解を深めるための勉強会を実施しています。商品開発から販売促進活動までにどのような視点が必要かを、具体的な事例も用いながら説明しています。
適正飲酒啓発活動
従業員に対する適正飲酒啓発
酒類を製造・販売している企業の一員として、従業員の適正飲酒に関する意識を高めることも重要です。飲酒運転を行った従業員は、公私を問わず諭旨免職以上の処分とすることを就業規則に定めているほか、さまざまな活動を行っています。

国内グループ全従業員の適正飲酒啓発プログラム
酔いのメカニズムや遺伝・体質による違いなど、酒類を製造・販売する企業グループの従業員として必要な知識の習得を推進する適正飲酒啓発プログラム(e-ラーニング)を実施

国内グループ従業員へのアルコール体質遺伝子検査
従業員が自分自身のアルコールの代謝に関する体質を知ることにより、他者への配慮や適正飲酒の考え方を理解することを目的に希望者全員に実施

グローバルARS部によるイントラネットサイト
各種自主基準やマーケティング・営業活動事例集、適正飲酒セミナー資料などをまとめ、従業員誰もがいつでも参照できる環境を構築
このほか、経営層や営業担当者向けアルコール関連問題勉強会、モデレーション(適正飲酒)広告の社内掲示などを通して適正飲酒を啓発しています。
社外に向けての適正飲酒啓発
サントリーグループでは、お酒の特性や適切な飲み方を皆さまに正しくご理解いただくための取り組みを行っています。
サントリー「ドリンクスマイル」活動
サントリーグループは、「お酒は、なによりも適量です。」というメッセージを盛り込んだモデレーション広告※を1986年から展開するなど、“ほどほど”にお酒を楽しむ適正飲酒の大切さを訴え続けてきました。また2011年から企業や自治体等向けに実施している適正飲酒啓発セミナーでは、2023年までの13年間で延べ3万6,000人に、お酒の正しい知識と付き合い方をお伝えしてきました。
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※当社の適正飲酒啓発広告の呼称。モデレーションとは「ほどほど」「中庸」を意味する。
今回、適正飲酒の大切さとお酒の魅力を伝える新たな活動として「ドリンク スマイル」を2024年11月から開始しました。「ドリンク スマイル」では、適正飲酒啓発による「お酒との共生社会実現」に、「お酒文化の継承」を加えることで、正しく多様なお酒の楽しみ方をお伝えしていきます。
酒類製品に含まれる純アルコール量の開示
酒類製品に含まれるアルコール量をお客様に分かりやすくお伝えするため、国内で販売する主要な酒類製品に含まれる純アルコール量を、サントリーホームページで開示しています。また2022年2月以降順次、缶商品に1缶あたりの純アルコール量(g)を表示しています(対象商品は、国内製造の缶商品(ビール類、RTD、ワイン))。
『適正飲酒啓発活動』に数々の受賞
サントリーの啓発活動は各方面から高い評価をいただいています。
2002年 |
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2018年 |
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2023年 |
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サントリー独自の取り組み
●適正飲酒全般

1986年に始まった、適正飲酒の大切さを伝えるモデレーション広告。新聞に加え、SNSを活用した発信も強化

サントリー適正飲酒啓発ホームページ「お酒との正しい付き合い方を考えよう」

酔いのメカニズムやアルコール体質の違いについて理解を深める「お酒ほどほどマスター講座」を法人向けに実施。
また、適正飲酒啓発動画「クイズ!ほどほど・ザ・ワールド」を制作・公開

お酒ほどほどアンバサダー制度
従業員が直接お得意先でお酒ほどほどマスター講座を実施
●適量の推奨

飲み会の多様な断り方を楽しいイラストで表現する「休肝日の断り技」ポスター
●不適切な飲酒防止

20歳未満向け飲酒防止啓発動画を制作

若者向け適正飲酒啓発教材を制作し、大学を中心とした教育機関に無償配布。教材を使用した大学への出張授業も実施

イッキ飲み防止連絡協議会の趣旨に賛同し「イッキ飲み防止キャンペーン」でポスター・チラシなどのデザインやノベルティプランニングに協力
業界と連携した取り組み
ビール酒造組合や日本洋酒酒造組合などの業界団体の一員として、その活動に積極的に参画しています。

交通広告を中心に「STOP!20歳未満飲酒」を呼びかける広告を年2回実施

JR西日本管内の主要駅および車内に、お酒を飲みすぎたお客様によるホームからの転落注意の啓発ポスターを掲出

女性の社会進出やライフスタイルの変化を背景に増加傾向にある"リスクある女性の飲酒"を防止するため、正しい知識を普及
また、妊産婦の飲酒の影響や授乳中のリスクを商品容器やPOP等酒類販促物、TV広告などの動画媒体で注意表示する取り組みも行っています。
アルコール関連問題低減に向けグローバルに活動
2010年にWHO(世界保健機関)で「Harmful Use of Alcohol(アルコールの有害な使用)の低減に向けた世界戦略」が採択されました。この「アルコールの有害な使用の低減」は2013年の「NCDs(非感染性疾患・生活習慣病)予防のためのアクションプラン」や2015年に策定された国連のSDGs(持続可能な開発目標)の健康分野でも目標の1つとして含まれるなど、各国政府や公衆衛生機関の専門家が関係者と協議しながら取り組むべきグローバルな課題とされています。酒類業界はその取り組みにおける重要なステークホルダーと位置づけられています。
サントリーグループは、この課題に対応するため、国際的な適正飲酒推進の取り組みを進める組織「IARD」に参画し、世界の主要酒類メーカーによる「アルコールの有害な使用の低減のための業界コミットメント」の推進に2013年から取り組んでいます。またIARDでは2018年からデジタル媒体に関する基本原則をWFA(世界広告主連盟)と共同で策定し、法定飲酒に満たない者に対する酒類に関するメッセージの到達防止に努めています。
サントリーグループは、グローバルレベルでの責任あるマーケティングの実践や、適正飲酒の啓発活動の展開を行うため、専任部署を設置し、定期的にグローバルARS委員会等を開催し、中期的なビジョンのもと、グローバルなマーケティング規定の整備や、啓発プログラムの推進に取り組んでいます。
サントリーグループのグローバルなプログラムとして「DRINK SMART®」を展開し、法定飲酒に満たない者の飲酒や飲酒運転の防止、適正飲酒の啓発、飲酒をしない人への配慮といった基本原則を踏まえ、関係団体と協力しながら各市場固有のニーズ・文化に合わせたプログラムを推進しています。
IARDについて
IARD -International Alliance for Responsible Drinking(責任ある飲酒のための国際連盟)は世界の大手酒類メーカー13社が参画するワシントンDCに本部を置く非営利団体。
サントリーグループはサントリーグローバルスピリッツとして設立当初から参画し、WHOの「アルコールの有害な使用の低減に向けた世界戦略」(2010年採択)に対する酒類業界としての取り組みである「アルコールの有害な使用の低減のための業界コミットメント」の策定にも深く関わってきました。
「業界コミットメント」は2013年から5年間にわたり、5つの分野での取り組みに推進しています。
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①法定飲酒に満たない者の飲酒の低減
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②業界自主基準の展開と強化
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③責任ある商品開発と消費者への情報開示
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④飲酒運転の低減
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⑤小売分野との連携強化
コミットメントの進捗報告やその評価は第3者によって行われプログレスレポートとして毎年報告されています。日本やアメリカを含むサントリーグループの主要市場での取り組みも報告・評価されており、日本での20歳未満飲酒防止の親子向け教材の配布やアメリカにおける交通裁判所との飲酒運転再犯者に対する教育プログラムなどの独自の取り組みや、各国の酒類業組合との協同取り組みも高い評価を得ています。
2018年からはデジタル媒体に関する基本原則を策定・遵守することにより、法定飲酒に満たない者へのお酒に関するメッセージの到達防止に努めています。また法定飲酒に満たない者の飲酒や飲酒運転など不適切な飲酒に関するトレンドレポート等も発行しています。
IARD会員社のCEOによる会議も毎年開催され、酒類業界として中長期的かつグローバルに取り組むべき事項について真剣な討議が行われています。
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IARD CEO会議の様子(2019年)
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プログレスレポート
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デジタル媒体に関する共同宣言(2018年)と
不適切な飲酒に関するトレンドレポート(2019年)
海外での適正飲酒啓発活動
事例1)飲酒運転防止の取り組み
DWI裁判所への支援
飲酒運転を繰り返す可能性が高い常習違反者に対し、実証に基づいたプログラムで治療を行うために創設されたDWI裁判所の全米国民センターへの支援を行っています。
事例2)大学生に向けた取り組み
Building Resilience In Campus Community (BRICC) Coalition
ケンタッキー州のルイヴィル大学とケンタッキー大学が行っている、個人、グループ、団体、コミュニティの各階層での高リスク飲酒低減を目指す活動を支援しています。