2011年に日本初のペットボトルのボトル to ボトル(B to B)のメカニカルリサイクルシステム※1を協栄産業(株)と開発しました。この度、ペットボトルリサイクルの取組みについてさらにその技術を進化させ、飲料用PETプリフォーム※2製造において画期的な技術の開発に成功しました。それが、リサイクルPETフレークを原料として100%使用し、従来必要だった樹脂乾燥など4つの工程の削減を可能とするダイレクト成型技術「F to P※3ダイレクトリサイクル技術」です。
この技術はサントリーホールディングス(株)と協栄産業(株)、イタリアの大手プリフォーム成型機メーカー・SIPA社、オーストリアのプラスチックリサイクルの世界トップメーカー・EREMA社の4社が共同で開発したものです。サントリー食品インターナショナル(株)では、2018年夏以降「サントリー烏龍茶(525ml)」をはじめとするペットボトル商品の一部に、このシステムで製造した容器を順次採用していく予定です。
従来の製法では、回収ペットボトルを粉砕・洗浄してできたフレークを約300℃という高温で溶かして、それを結晶化したもの(樹脂ペレット)をプリフォーム製造工程で乾燥、さらに、再び高温で溶かしてプリフォームを成型するという工程が必要でした。樹脂の乾燥や溶融工程は従来の技術では必要不可欠なものですが、そのためには多くの電力を消費します。新技術ではこれまで2つの工場に分かれていた製造プロセスを4工程削除することに成功し、溶融工程を1回に短縮することが出来ました。この結果、CO2排出量を25%削減※4することができる見込みです。
日本は世界有数のペットボトルリサイクルの先進国であり、約90%の回収率を誇ります。しかし、これまでは実際に国内で循環しているリサイクルPETはその半分にすぎず、大半が海外、特に中国に輸出されていました。きちんと分別・洗浄され、染料を含まず透明な日本のペットボトルは高品質な資材として需要が高く、海外でポリエステル繊維などに再生されているのが現状です。
しかし、リサイクルPETをポリエステルにしてしまうと、ペットボトルに戻すことはできずリサイクルの輪はそこで止まってしまいます。そのため、リサイクルPETの海外流出を防ぐことは国内飲料業界の大きな課題でもありました。
その点、B to Bでリサイクルすれば、リサイクルPETは理論上同じ品質を保ったまま半永久的に資源として利用が可能なため、リサイクルの輪を止めることなく、再生し続けることができます。環境的にもコスト的にも、従来の製法よりも優れた「F to Pダイレクトリサイクル技術」のような新技術を発信し広めていくことで、国内でのリサイクルPETの循環量を増やし、業界全体での環境負荷低減につなげられるのではないかと期待しています。
そもそも日本のリサイクルPETがここまで高品質なのは、消費者の方々や各自治体の努力により再循環しやすい状態で回収できているからです。だからこそ、飲料メーカーとしても、ペットボトルの開発担当者としても、その努力を無駄にすることなく、リサイクルPETを貴重な資源として有効に使えるようにする責任があると考えています。
サントリーグループではペットボトル開発戦略2R+B※5の一環として、すでに植物由来原料30%使用のペットボトルを導入しています。将来的にはこの技術もさらに進化させ、植物由来原料100%でペットボトルが製造できるよう、実証プラントを米国テキサス州に建設してさらなる開発にも取り組んでいます。今後もペットボトルにおける環境負荷低減の取り組みの2本柱として、新たな石油由来原料を必要としないリサイクルPETの普及や植物由来原料100%のペットボトルの開発を推進していきます。
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※1メカニカルリサイクルとは、ペットボトルリサイクルの手法のひとつ。使用済みペットボトルを粉砕・洗浄した後、さらに高温、減圧下で一定時間の処理を行い、再生材中の不純物を除去する方法。当社は2011年に導入。
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※2ペット樹脂から作られる、試験管のような形をしたペットボトルの原型のこと。加熱し、高圧空気を吹き込むことでペットボトルに加工される。
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※3F to P=「フレークtoプリフォーム」の略。レジンにする工程を省き、フレークから直接プリフォームを作ること
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※4ペットボトル用プリフォーム1kgの製造にあたり
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※5「2R+B」(Reduce・Recycle+Bio)=ペットボトル開発において、樹脂使用量の削減と再生素材の使用により徹底した資源の有効利用を図りつつ、可能な範囲で石油由来原料を再生可能原料で代替していくサントリー独自の考え方