考え方・方針
水が育む森林、川、海、大気や生き物がつくる生態系の循環システムである地球環境そのものがサントリーグループの大切な経営基盤です。水や農作物に依存する企業として、その価値の源泉である水源や原料産地などの生態系を守るため、水源涵養活動、愛鳥活動、持続可能な農法への移行を通じて、生物多様性の保全に努めます。
環境基本方針・環境ビジョン2050・環境目標2030の詳細は「環境マネジメント」をご覧ください
TNFD提言に基づく開示
サントリーグループでは、2023年5月に発表されたScience Based Targets Network(以下、SBTN)によるガイダンス(以下、企業向けガイダンス)のもと、自然関連の科学的根拠に基づいた目標(science-based targets for nature)の設定と、それに向けた活動を進めていくべく、企業向けガイダンスの試験運用を行う企業17社として日本企業で唯一参画しています。
この度、SBTNの試験運用での分析と進捗を踏まえ、Taskforce on Nature-related Financial Disclosures(TNFD)の試行開示を始めました。
詳細は以下からご覧ください。
推進体制
グローバルサステナビリティ委員会
水、気候変動、原料、容器・包装、健康、人権、生活文化のサステナビリティに関する7つのテーマに対して、取締役会の諮問委員会であるグローバルサステナビリティ委員会(GSC)で、サステナビリティ経営推進のための戦略立案や取り組みの推進、進捗確認を行っています。
取り組み
水に関する取り組み
サントリー天然水の森
「地下水」の安全・安心と、サステナビリティ(持続可能性)を守るために、サントリーグループでは、『国内工場で汲み上げる地下水量の2倍以上の水』を、工場の水源涵養(かんよう)エリアの森で育む、「サントリー天然水の森」活動を行っています。
良質な地下水を育む森は、生物多様性に富んだ森です。森林が本来持っている機能を回復すれば、そこに生育する動植物相にも変化があります。「天然水の森」では、鳥類を含む動植物の継続的な生態系モニタリングによる計画的な管理を行っています。
環境のバロメーターといわれる野鳥たちに注目することで、彼らを支える生態系全体の変化の状況を総合的に把握できると考え、専門家による野鳥調査を毎年行っています。
また、国内すべての「天然水の森」において、生態系の最上位に位置するワシ・タカ類の営巣・子育ての実現を目指した「ワシ・タカ子育て支援プロジェクト」を進めており、「天然水の森」を鳥類の目から見つめ、生物多様性豊かな森づくりを進めることを目指しています。
「生物多様性のための30by30アライアンス」に参画
サントリーグループは、持続可能な社会の実現に向けて、生物多様性の損失を食い止め回復させることを目指す「生物多様性のための30by30アライアンス」に2022年4月に参画しました。「生物多様性のための30by30アライアンス」は、2030年までに自国の陸域・海域の少なくとも30%を保全・保護するという「30by30(サーティー・バイ・サーティー)」の目標を掲げ、行政、企業、NPOなどの有志連合として設置されました。
「サントリー 天然水の森」6ヵ所が「30by30」目標達成に向け環境省が推進する「自然共生サイト」に認定されました。
生物多様性に関するレポート発刊
2022年9月、「サントリー天然水の森 生物多様性『再生』レポート」を発刊しました。日本の森が抱えるさまざまな課題をまとめた「FACT DATA」編と、「サントリー天然水の森」でそれらの課題解決のために取り組んできた先進的な活動事例を分かりやすく解説した「ACTIONS」編で構成した冊子です。
スコットランドでの泥炭地および水源保全活動
サントリーグループは、スコッチウイスキーから多くのことを学びながら、日本でのウイスキーづくりに取り組んできました。今では、スコットランドにボウモア蒸溜所やラフロイグ蒸溜所など複数の蒸溜所も保有しています。スコットランドでは湿原を流れる水がウイスキー造りに使われることも多く、また湿原に堆積した「ピート」と呼ばれる泥炭も、原料である麦芽に香りづけをする大切な役割を果たします。このピートを育む泥炭地および水源を保全する活動として、「ピートランド・ ウォーター・サンクチュアリ(Peatland Water Sanctuary)」を2022年11月から開始しました。まずは、アードモア蒸溜所周辺地域を対象に、土地を所有するスコットランド森林土地局と、研究・計画および再生工事の遂行を支援するジェームズ・ハットン研究所と連携した泥炭地復元活動を開始しました。その後、アイラ島、スコットランド北部で、過去にスコッチ用にピートを採掘していた場所でも復元活動を開始、また、スコットランド王立鳥類保護協会と協働で、エアーズモス自然保護区、オア自然保護区での復元活動も実施しています。今後も活動を展開し、2040年までにサントリーグループで使用する泥炭の2倍の量を生み出すことができる面積の泥炭地復元を目指します。本活動は、水品質、保水機能向上、生物多様性の保全に貢献し、さらに泥炭地は炭素を蓄える機能があるためCO2排出抑制にも寄与します。
~サステナビリティストーリーズ~ ウイスキーの重要原料である「ピート」と地球の未来のために──「ピートランド・ウォーター・サンクチュアリ」プロジェクト
原料に関する取り組み
サントリーグループでは、自然の恵みをいただく企業として、原料農作物における生物多様性保全の取り組みを進めています。サントリー食品イギリスは、2004年よりカシス農家に対してサステナブル農業の支援を行っており、各農場とその周辺にある個々の生息地にあわせた生物多様性計画を立て、河川や湿地の生態系保全活動を進めています。2022年には、カシス農園における生物多様性保全の取り組み、ならびにその成果をまとめたレポート「Farm Stewardship Programme」を発刊しました。また、サントリーグループでは土壌の生物多様性に貢献する再生農業にも着手しており、麦芽用大麦の調達に向けた取り組みや、ワイナリーでの「草生栽培」などにも取り組んでいます。
「Farm Stewardship Programmeレポート」(英語)のダウンロード
容器包装に関する取り組み
サントリーグループでは、水や農作物に加え、限りある天然由来資源を有効活用するため、原材料などの3R(reduce, reuse, recycle)の推進、再生可能資源の利用、効率的な循環システムの構築を多様なステークホルダーと協働し、商品ライフサイクル全体での環境負荷の低減に努めています。
ペットボトル容器に関しては、サントリーグループ独自の「2R+B」戦略※に基づき取り組んでいます。開発において、樹脂使用量の削減と再生素材の使用により徹底した資源の有効利用を図りつつ、可能な範囲で石油由来原料を再生可能原料で代替していく考え方です。
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※Reduce, Recycle+Bioの略
愛鳥活動
野鳥は自然環境のバロメーターといわれています。野鳥を保護することが人間や自然環境を守ることにつながるとの考えから、サントリーグループは、1973年から野鳥保護の重要性を社会と共有する愛鳥活動に取り組んでいます。1989年には、国内外の鳥類保護活動を資金面から助成する「サントリー世界愛鳥基金」を創設し、2024年までに延べ517件、7億超の贈呈を続けています。