サントリーグループは、今後も「環境負荷低減」と「自然環境の保全・再生」の両面から環境経営を強化していきます。その一環として、消費者の皆様にサントリープロダクツ(株)天然水南アルプス白州工場にお越しいただいた上で、サントリーグループの環境活動の紹介と質疑を行い、今後のさらなる改善に向けた貴重なご意見をいただきました。当日は「サントリー天然水」の製造工程をご見学いただいたほか、白州蒸溜所内に設けられた「バードサンクチュアリ(野鳥の聖域)」や自家消費用として飲料業界最大規模(2013年4月末現在)の発電能力約490kWの太陽光発電パネルなども見学いただきました。
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●開催日:2013年5月15日
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●場所:サントリープロダクツ(株)天然水南アルプス白州工場(山梨県北杜市白州町)
参加者
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●ファシリテーター
IHOE[人と組織と地球のための国際研究所] 代表者(CEO)
川北 秀人氏京都大学卒業後、(株)リクルートに入社。国際採用・広報・営業支援などを担当し、1991年に退職。その後国際青年交流NGO「オペレーション・ローリー・ジャパン」の代表や国会議員の政策担当秘書などを務め、1994年にIIHOE設立。NPOや社会責任・貢献志向の企業のマネジメント、環境・社会コミュニケーションの推進を支援。
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●一般消費者6名
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●サントリー
工場長、環境部門4名、CSR部門1名
環境負荷低減の取り組みについて
一般消費者の評価・意見 | サントリーの対応 |
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ペットボトルを分別回収して再利用するのが、本当にトータルで省エネにつながるのか疑問に感じています。再利用にかかるコストやエネルギーを考慮しても、省エネになっているのでしょうか。 | 商品の原料となる資源の採取から容器の加工、製品製造から物流、販売さらに飲用後のリサイクルまでのライフサイクル全体で環境負荷を評価し、トータルでのエネルギーや資源の低減に取り組んでいます。回収されたボトルをペットボトルとして再生する「ボトルtoボトル」※の確立に向けては、新たな資源を使わずリサイクル時のエネルギー使用の少ないメカニカルリサイクル法に積極的に取り組むなど、トータルな視点から省エネ・省資源を図っています。
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想像以上に省エネ・省資源の取り組みが進んでいると感じました。ただ、サントリー単独ではなく、飲料業界全体で環境負荷低減に取り組んだほうがより効果的なのではないでしょうか。独自の基準で行うのではなく、競合他社と共同で取り組もうという流れはないのでしょうか。 | ビール業界や清涼飲料水業界など、各業界団体で具体的なCO2削減目標を立てており、業界を挙げて環境負荷低減に取り組んでいます。さらに、サントリーグループは他社と協働してさまざまな環境負荷低減の取り組みを行っています。たとえば、キリングループとの共同配送や東芝ライテック(株)との鉄道コンテナの共同利用といった物流の推進です。他社においても協働の取り組みが徐々に増えてきており、今後も拡大していくのではないかと思います。 |
ペットボトルの回収率の高さに驚きました。2001年に44.1%だったのが、2008年までに78%まで上昇していますが、どのような理由があるのでしょうか。 また、今後、さらに回収率を高めるための施策はありますか。 | 1997年に「容器包装リサイクル法」が施行され、消費者の皆様のご理解が深まるとともに、市町村の分別回収が徹底されるようになってきたことなどにより、現状で約8割という高い回収率につながりました。サントリーも「ボトルtoボトル」の取り組みを積極的に推進し、再利用を進めていくことで、容器包装を利用する事業者としての責務を果たしていきたいと思います。 |
工場内のごみの分別が細かいことに驚きました。従業員の方も大変だと思いますが、なぜここまで分別するのでしょうか。資源の再利用のために役立つのであれば、環境のために自分の家でも少しずつ実践したいと思います。 | 分別すれば分別しただけ、資源化しやすくなります。細かく分別していない資源物をリサイクルしても、性能、品質において劣った再生品しかできません。 分別の質が上がれば、その分、リサイクルのコストも抑えられます。一般のご家庭では、お住まいの自治体が定める通りの分別ルートに従ってごみを排出していただくようお願いします。 |
自然環境の保全・再生の取り組みついて
一般消費者の評価・意見 | サントリーの対応 |
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森の保全、水の保全というものには長い時間がかかるのではないかと思いますが、どれくらい長期的に考えているのでしょうか? また、実際に地下水の水質や水量に効果が出るようになるには、どれくらいかかると考えているのでしょうか。 | 森林保全をしっかりやろうと考えると少なくとも30年は必要と考えています。したがって「天然水の森」活動は原則として契約期間を最低30年、長いもので100年としています。実際に効果が出るためにかかる時間について、こちらも同様に30年かかるかというとそうとも限りません。森を育むことによって水の地下への浸透量が増えると、その水の圧力によって地下水が押し出されるかたちになるだろうと推定しています。実際に地下水位がどれくらい上がるのか、また上がるのにどれくらい時間がかかるのかについては、現在スーパーコンピューターを使ってシミュレーションを行っているところです。なお、水質は地質によって決まりますので、私たちの活動による影響は限定的です。もともと素晴らしい水質の土地を選んで工場を建てていますので、その素晴らしさを子どもたち、孫たちの世代まできちんと守っていくという活動が重要だと考えています。 |
水の大切さを啓発するためにも、「森と水の学校」などの水育(みずいく)を子どもだけでなく、大人向けのイベントやセミナーとして開催されてみてはいかがでしょう。 | 「森と水の学校」には子どもたちだけでなく保護者の皆様にも同伴していただいているのですが、保護者の方から、たくさんの気づきをもらったとおっしゃっていただくことが非常に多く、大人向けの啓発活動も課題の1つであるとは認識しています。今までの情報発信だけでは、少し弱いのではないかという問題意識のもと2012年からはビール工場などで水源涵養(かんよう)活動についての情報発信を強化しました。今後もより社会の皆様に深くご理解いただけるよう努めていきたいと思います。 |
採水を始めた当時と現在を比較して、水質に変化はありますか。 特に化学物質や放射性物質が気になるのですが。 | 井戸ごと、あるいは季節ごとに微妙な変化はあるものの、採水することによるpHなどの水質はほとんど変化していません。化学物質に関しては200項目の検査を実施し、厳重な品質管理を行っています。また、放射性物質は月に一度、厳密な放射性物質の分析を行っています。現在のところ、放射性物質は検出されておりません。 |
「天然水の森」が東北や北海道にないのはなぜなのでしょうか。 できれば全国で展開してほしいと思いました。 | 工場の水源涵養エリアの森を「天然水の森」として制定しているため、サントリーの工場がない北海道や東北エリアには、「天然水の森」がありません。ただ、「天然水の森」の森林整備に携わる人材を育成することにより、私たちの森林保全活動が、結果的に「天然水の森」以外の森林整備の推進につながっていけばいいとは考えています。また、森の整備に関する実験データやノウハウの蓄積を、できるだけオープンにして、日本の健全な森の育成に貢献したいと考えています。 |
お客様とのコミュニケーションについて
一般消費者の評価・意見 | サントリーの対応 |
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商品のラベルなどに、製造の過程や森林整備活動などの取り組みに関する情報を盛り込むようにすれば、一般の消費者ももっとイメージしやすくなるのではないでしょうか。 | 「サントリー天然水」においては、「自然環境の保全・再生」を表現すべく、天然水を育んだ森に暮らす生き物たちをあしらったラベルに一新しました(期間限定)。また、一部商品で、リサイクルしたペットボトルを原料としたラベルやリペットボトルを使用していますが、現在はその旨を表記していません。今後は、業界統一マークの制定など、業界内での働きかけを強め、リサイクル推進に取り組んでいきたいと考えています。 |
スーパーなどの売り場で、よくCM映像を流しながら販売している光景を目にします。そこで、CMだけではなく、製造工程のこだわりや「天然水の森」活動に関する映像を流してみてはいかがでしょう。 | これまで、試行錯誤を繰り返しながら森林の保全整備活動を行ってきましたが、ようやく森の保全整備活動や研究が実を結び始めたので、情報発信に向けて企画を練っている段階です。森林保全整備活動は100年規模の息の長い取り組みですので、一気に大きな成果が出るわけではありませんが、お客様に対して一歩一歩着実に情報をお伝えすることができればと考えています。 |
よくサントリーホールを利用します。もっとそういった文化施設・文化事業をうまく利用して、情報発信してはいかがでしょうか。たとえばサントリーの取り組みに関連した内容のコンサートなどを企画してもいいのではないかと思います。 | サントリーホールとサントリー美術館はグリーン電力で運営しています。そういったこともプレートで掲示しているものの、まだまだ訴求が弱いと思っています。ご指摘のように、多くのお客様にご利用いただいているのですから、そこでの訴求にもっと力を入れていきたいと思います。 |
意見交換をおえて
今回、お客様の貴重な声を直接お伺いすることができました。
環境負荷低減は、バリューチェーン全体を視野に入れた取り組みを行うことが重要なので、今後もそうした考えで環境活動に取り組んでまいります。自社で進められる活動は引き続き徹底した取り組みを行っていくのはもとより、業界としての取り組みが必要な領域についても同業他社との接点を拡大し、連携しながら活動を推進してまいります。
お客様への環境活動に関する情報提供は、まだまだ十分でないと認識していますので、今後は商品そのものや販促活動を通じた情報発信にも取り組んでまいりたいと考えています。
私たちは、ステークホルダー・エンゲージメントという視点でも、ステークホルダーの皆様との対話が重要だと認識し、今後もこのような機会を大切にしてまいります。