活動の礎としての企業理念
サントリーは今年、創業125年を迎えました。「サントリーグループ企業理念」のもと、「人と自然と響きあい、豊かな生活文化を創造し、『人間の生命(いのち)の輝き』をめざす。」という企業パーパスの実現を目指し、すべての従業員が大切にすべき「価値観」として、「Growing for Good」「やってみなはれ」「利益三分主義」の3つを定めています。この理念のもとで、国籍も、話す言葉も、携わる事業もさまざまな世界中のサントリアン全4万人が、同じ目的と価値観を普遍のものとして共有し、グローバルにONE SUNTORYで力を発揮していく。これを私たちの強みとして、これからも100年、200年と成長し続ける企業グループを目指していきます。
世界の課題解決に向けたサントリーのさらなる挑戦
私は毎年世界経済フォーラムのダボス会議に参加しているのですが、2024年1月の会議で印象的だったのは、課題を解決するための具体的な科学技術について議論が交わされたことです。気候変動対策では、Scope3の温室効果ガス(GHG)削減が世界共通の課題とされ、その解決を図るための新技術が取り上げられました。前年までは、気候変動をはじめとするさまざまな社会課題に対する危機感を共有することに留まっていたところからの大きな変化です。Scope3のGHG削減は当社にとっても大きな課題であり、世界的に進む技術の潮流には一層アンテナを立てていなければならないとの思いを強くしました。
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昨年11月に開催された国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)でも、農業・食料システムの改革なくして気候変動問題の解決はないという共通認識のもと、農業や食料システムが主要アジェンダの一つとして議論された初めての会となり、以降、持続可能な生産や消費への移行についての議論が加速しています。実際にダボス会議でも、再生農業について盛んに議論されていました。再生農業はまさに、サントリーが農家の皆様と取り組んでいかなければならないものです。すでに大麦農家と協働するなどいくつかの取組みを開始していますが、サントリーは持続可能な農業・食料システムの実現に向け、お客様やサプライヤーの皆様、同業・異業種の皆様、そしてコミュニティと共に知恵を絞り、汗をかくキープレイヤーでありたいと考えています。
1.5℃を超える気温上昇はもはや避けられないと言われる現在ですが、「できることはまだある」という強い想いを持ちながら、サントリーグループはグローバルでの持続可能な社会の実現に向けた挑戦を続けていきます。
サントリーのユニークネスを活かし、グローバルで成長を加速
複雑化するビジネス環境下でも持続的な成長を遂げるために、サントリーではグローバルにグループ全体の人材とノウハウを結集させてイノベーションに挑戦してまいります。
サントリーグループの強み、それは「食品酒類総合企業」であることにほかなりません。酒造メーカーと清涼飲料メーカーを兼ね備える我々は、グローバルで見てもユニークな存在です。このユニークネスを活かし、さらなる成長に繋げるべく、RTD※カテゴリーの強化を進め、「RTDで世界一の企業になる」ことを目指しています。ビジネスとしての文化も違えば製造技術も異なる「酒類」と「清涼飲料」を融合することは簡単なことではありませんが、「GLOBAL ONE SUNTORY」を合言葉に挑戦していきます。すでにオセアニア市場では、海外における酒類事業と清涼飲料事業の総合的な協業体制を開始しました。2024年半ばには工場も稼働させ、RTDにおけるグループシナジーの最大化を図っていく予定です。酒類と清涼飲料、それぞれの分野で培ってきた技術とノウハウを組みあわせ、これまでなかったオンリーワンの価値を創造し、グローバルでのポートフォリオ強化に注力していきます。
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※RTD:「Ready to Drink」の略語で、そのまますぐ飲める缶チューハイや缶カクテル、ハイボール缶などのアルコール飲料のこと
価値創造企業であり続けるために
サントリーグループにとって最も重要な経営基盤は「人」です。サントリーは創業以来、新しい価値を生み出すことで成長を続けてきましたが、その原動力はいつの時代も「人」であり、“やってみなはれ”精神から生まれるサントリアンのアイデアや情熱がグループの成長の源泉でした。これからも「人」こそが経営の最も重要な基盤であり資本であるという「人本主義」の考えのもと、「人」を何よりも大切にする会社であり続けたいと考えています。全員がモチベーション高く、イキイキと働き続けられるよう一人ひとりに多様な成長機会を提供し、人材への投資を一層強化していきます。成長した強い個からほとばしる情熱が、大きなイノベーションを生み出すのだと私は強く信じています。
また、多種多様な価値観を学ぶことも人と組織の成長に欠かせないと考えています。サントリーは、あらゆる個性や多様性が尊重されるDEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を企業風土として定着させることを目指しています。世界中に4万人の従業員がいる現在、さまざまな視点や考えを共有し学びあうことから得た新たな視座を日々の業務に活かす。価値創造企業であり続けるためには、その姿勢こそが重要です。「『人間の生命(いのち)の輝き』をめざす。」というパーパスの実現に向けて、多くの人の声に耳を傾けながら多様な価値観を学ぶ機会をさらに増やしていきます。
持続可能な社会を次の世代に引き継ぐ
サントリーグループの事業は、水や農作物など自然の恵みに支えられています。この自然の恵み、すなわち豊かな地球環境を次世代に引き継いでいくことは、サントリーグループすべての事業活動の未来にとって必要不可欠です。なかでも水については、2050年には世界で約50億人が深刻な水不足に見舞われるとの予測※もあり、喫緊の課題と認識しています。サントリーではグループ全体で共有する「水理念」のもと、地域との貴重な共有資源である水の持続可能性のため水資源を守る取り組みを続けてきました。地域との共有資源である水が持続可能であることを目指し、水源涵養(かんよう)活動「天然水の森」を開始したのは20年以上も前のことです。これからも工場で使用した以上の水を育み水源に還元する、「ウォーター・ポジティブ」活動を推進していきます。この活動は昨今、世界の潮流になっている「ネイチャー・ポジティブ」とも軌を一にしています。持続可能な社会の実現には“負荷を減らす”だけでは充分ではなく、積極的に自然を再生していく必要があります。サントリーグループは、水と土地の利用に関する目標設定の方法論を検証する国際組織Science Based Targets Network(SBTN)の試験運用に日本企業で唯一参加し、科学に基づく世界の共通基準と整合したネイチャー・ポジティブの実現を目指しています。
一方、我々は創業者から、サントリーの大切なDNAとして“利益三分主義”の精神を受け継いでおり、さまざまな形で社会貢献活動を展開してきました。次世代を担う子どもに対しても、「水育」などの環境学習、芸術やスポーツを通じた支援など、豊かな個性・人格形成に向けた機会を提供しています。これからも、未来を担う子どもたちへの支援として、同じ課題意識を持つNPOへの支援なども通じた「次世代エンパワメント」活動を強化し、子どもたちが意欲・希望・夢を持ってチャレンジできる社会の実現に貢献していきたいと考えています。
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サステナブルな社会の実現とは、自然と共生できる安定した社会を子どもたちに引き継いでいくことにほかならず、サントリーは常にその一助となる企業でありたい。そのことを確実に実践するため、必要な投資を惜しまず行うことが経営トップとしての私の責務です。
私たちはこれからもサステナビリティを経営の中核に据え、お客様をはじめとするステークホルダーの皆様のお声に耳を傾けながら、持続可能な社会に貢献する最高品質の商品・サービスをお届けしていきます。また、グローバルに成長を続ける食品酒類総合企業として、さらなる革新と挑戦を続け「人間の生命(いのち)の輝き」に満ちた持続可能な社会を次世代に引き継ぐことを約束します。-
※世界気象機関(WMO)「The State of Climate Services 2021」
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2024年4月
サントリーホールディングス株式会社
代表取締役社長
新浪 剛史