活動詳細
熊本県 熊本市 2014年受賞
開懐世利六菓匠
和菓子職人たちが手をとりあい、職人の町、和菓子の町をアピール
代表:北川 和喜 氏
2014年9月更新
有明海に注ぐ雄大な緑川。その河口付近に位置する熊本県熊本市川尻は、古くから港町として栄えた。17世紀の細川藩政時代には町方奉行の管轄地のひとつとなり、商業の中心地として発展。桶や刃物といった工具職人のまちとしても有名となった。しかし、熊本市との合併やモータリゼーションの発達により、人が熊本市中心部へと流れ、川尻の商業は衰退。次第にまちの活気が失われていく。そんな川尻で“和菓子”を通して「職人の町」「和菓子の町」をアピールし、20年以上に渡り元気に活動を続けている集団がいる。6人の和菓子職人で結成された“開懐世利六菓匠”だ。
川尻の商工会や婦人会、青年部らが1987年に結集したまちおこしグループ「南部地区市民の会」。これに参加していた老舗和菓子店の店主ら6人が、自分たちなりの形で地域活性化活動をと、河川の清掃活動後に蒸したてのまんじゅうで地域の人をもてなしたのが始まりである。江戸時代から熊本藩士によって栽培されてきた肥後六花にちなみ、地域の人たちから「六菓匠」と呼ばれ、1990年に“開懐世利六菓匠”が結成された。“開懐世利”とは中国・明時代の地理書『日本図纂』に残る川尻の古名である。
38歳から64歳までと幅広い年齢で構成される彼らだが、和菓子と川尻を思う気持ちは同じ。チームワークが抜群で、いつも笑顔が耐えない。また良きライバルとしてお互いを認め合い、切磋琢磨し技術を磨きあっている。そんな開懐世利六菓匠の代表的な活動は、地元ボランティアの支えを受け毎年2月の第一土日に開催している「和菓子とのふれあい工房」。砂糖、干菓子、雲平生地などお菓子の材料を使い、お盆の上に情景を表現した盆景菓子や、まさに芸術作品である立体的な工芸菓子の展示、和菓子の実演販売を行っている。中でも毎年テーマを決め制作している共同工芸菓子はひと際来客の目を引く名物だ。2日間で1万人もの人を集め、訪れた人たちを大いに魅了する同イベントは、和菓子を身近な存在へと導くきっかけとなっている。
また、熊本県下の小中学校に招かれて行っている「お菓子教室」では、和菓子作りを通して食材本来の味や色、手作りの大切さを子どもたちに伝えている。和菓子と子どもたちとを結びつけるこうした地道な活動もあり、川尻では100円玉を握り締めた子どもたちが和菓子を買いに来るようになった。この光景こそ、和菓子が地域に根付いている証だろう。
「地元川尻を元気に」、「和菓子をもう一度身近なものに」という思いに導かれ、「川尻といえば、和菓子」というイメージを浸透させた彼らの活動は、全国でも類を見ないまちおこしとして注目を集めている。