活動詳細
徳島県 三好市 2013年受賞
四国の秘境 山城・大歩危妖怪村
山里に伝わる妖怪伝説を核にした地域づくり
代表:宮本 敬 氏
2013年9月更新
徳島県三好市の大歩危渓谷に位置する山城町は、阿波、土佐、伊予の国境に位置する要所であり、古くから国境警備にあたる山岳武士が住み着いていた。険しい山々がそそり立つ日本有数の秘境でもあり、町には平地がほとんど無く、地すべりが多発する。自然の厳しさと隣り合わせ、かつ国境を越えて様々な人々が行き来していたこともあり、生活の知恵として地域には数多くの妖怪伝説が語りつがれてきた。
その山城町も過疎化が進み、昭和30年代に15000人いた人口が、現在では4000人を切るようになった。このような状況を何とかしようと、1998年、地元のボランティア団体「藤川谷の会」が中心となり、地域の魅力を再発見するため、環境美化や歴史の調査などの活動を始めた。その活動の中で、山城町が水木しげるの漫画でも有名な「児啼爺(こなきじじい)」の伝説発祥の地であり、ほかにも「一ツ目入道」「エンコ(河童)」など150以上の妖怪伝説が残っていることが分かった。
2001年、地元有志が呼びかけ、全国から支援を受けて「児啼爺」の石像が建てられた。これを機に、毎年11月に「妖怪まつり」が行なわれるようになり、1000人近くの人々が町を訪れる。2008年には、藤川谷の会や農業団体をはじめ、地域の団体が中心となって「四国の秘境 山城・大歩危妖怪村」を結成した。そして、山城町が世界妖怪協会から「怪遺産」に認定されると、町ぐるみで妖怪をアピールする地域づくりに取り組むようになった。
2010年に住民たちが行政に働きかけ、手作りで「妖怪屋敷」としてリニューアルした道の駅では、妖怪にまつわる伝説を分かりやすく展示している。また、妖怪ゆかりのスポットには住民自らが作った妖怪の木彫刻を設置し、山道を散策しながら妖怪めぐりができるように整備した。温泉旅館や地元の商店では妖怪にちなんだメニューや商品を作って売り出している。
かつて「妖怪」は各地にいたが、都市化や交通網の整備が進む中で次第に消えて行ってしまった。しかし、厳しい自然とともに生活してきた山城の人々によって語り継がれた妖怪たちは、この地で実体のある存在として生き続けている。それが秘境ならではの魅力となって、現代の人々をひきつけ、地域を活気付かせているのである。