サントリー文化財団

menu

サントリー文化財団トップ > サントリー地域文化賞 > 地域別受賞者一覧 > 丹後藤織り保存会

サントリー地域文化賞

活動詳細

近畿

京都府 宮津市 2013年受賞

丹後藤織り保存会
自然と寄り添う昔ながらの生活文化を保存・継承

代表:井之本 泰 氏

2013年9月更新

活動紹介動画(1:47)
動画を観る
写真

 古代より、万葉集にもうたわれ、仕事着、蒸し器の敷き布、畳の縁に使われ、全国各地の人々の生活と共にあった「藤織り」は、近代になると木綿などの普及、さらには戦後の過疎・高齢化の進展により、山間の限られた地域でのみ技術が残され、継承が危ぶまれるようになっていた。ただ、宮津市上世屋地域には、農作業のできない長い冬の生活を支えた、手間と根気のいる藤織りの技術が数名のおばあさんたちに引き継がれていた。1981年、京都府立丹後郷土資料館で特別展「藤織りの世界」が開催された。これを機会に、上世屋のおばあさんから技術を学ぼうと「藤織り講習会」が開かれ、1989年、講習会の修了生たちにより「丹後藤織り保存会」が設立された。1991年、藤織りは京都府無形民俗文化財に指定され、保存会はその保護団体になっている。
 保存会の活動は、毎年開催する講習会、作品の展示会、伝統的な織物産地の見学・交流活動が中心となっている。講習会は、春から雪降る前までの半年間(5〜12月)、全国から上世屋に集まり、現地で一泊二日の講習を7回受講して修了となる。講師は、今日では上世屋のおばあさんたちから技術を継承したこれまでの講座修了者たちがボランティアで運営に携っている。修了者はこれまでの29年で459名を数える。
 講習会は、自然の色濃く残る山に入り原料の藤蔓を採取することから始まる。皮を煮て、清流の水ですすぎ、糸にして、織機にかける。四季の移ろいを感じながらの、手間と根気のいる昔ながらの作業がつづく。やがて自然の荒々しさと素朴な風合いの、地元で親しみを込めて呼ばれる「ノノ」(フジヌノ)が完成し人々の顔もほころぶ。
 2010年には、廃校となっていた旧日置中学校世屋上分校を「藤織り伝承交流館」として再生、講習会場、作品展示のほか、上世屋の棚田などの見学者の交流の場となるなど、地域文化の発信、交流の拠点として活用されている。2014年、30年を迎える保存会の活動は、藤織りの伝えてきた技を経糸(たていと)に、地域の人々と全国から受講に来た人々を緯糸(よこいと)にして織りなされ、棚田の広がる山間の自然とともにある生活文化を次代に継承する活動となっている。

サントリー文化財団