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サントリー地域文化賞

活動詳細

関東

千葉県 香取市 2008年受賞

佐原囃子保存会
22の連が団結し、祭り囃子を町の音として地域づくりに役立てる

代表:菅井 源太郎 氏

2008年9月更新

活動紹介動画(1分42秒)
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写真
佐原の大祭の
山車で演奏される佐原囃子

 東京から車で1時間強、利根川流域の千葉県北端・佐原の町は、夏と秋、「江戸優り佐原の大祭」で大変な賑わいとなる。下座連の笛や鼓、鉦によるお囃子の音に乗って、大きな人形を乗せた10数台の山車が街中を曳きまわされる300年の歴史ある祭りは、水郷の商業都市として繁栄した往時を髣髴とさせる豪華さだ。

 「佐原囃子保存会」は、この祭りに欠かせない日本三大囃子と評される「佐原囃子」を次代へ継承しようと、50年に亘り活動している。しかし、単に保存・継承にとどまることなく、「佐原の大祭」が年間80万人もが集まる関東を代表する祭りに成長することにも寄与している。また、祭りの時期だけではなく、川面に浮かぶ舟や、学校や辻々から流れる「佐原囃子」の音色は、一年を通じて街の人々に親しまれており、今や、佐原の日常の生活に欠かせない「街の音」となっている。

 そんなお囃子も、戦後、担い手が減少し、伝承の危機に直面していた。その中で、1948年に、佐原囃子の保存活動がスタートした。1955年には県無形民俗文化財に指定され、59年に保存会が発足。今日では、佐原囃子文化圏のエリア(千葉県香取市、成田市、茨城県潮来市、鹿島市)の山車で演奏する囃子連22団体・約450名が参加している。

 会の発足当時、楽曲保存のための楽譜制作に取り組んだものの、物資の乏しい時期でもあり、利根川の葦で紙をすいて印刷するなどの努力のすえ発行することもあった。その後、楽譜は復刻を重ね、邦楽では稀な楽譜の製作は、別の流派の囃子連にも受け継がれている。40年近く、後継者の育成の一環として、小中学校の授業やクラブ活動の指導を行っているが、生徒たちの自主練習にも復刻した楽譜が教本として活用されている。また、SPレコードに残されていた、大正から昭和の名手たちの演奏をデジタル化し、1998年にCDにするなど、「音そのものの保存」活動も始めている。

 こうした活動に加えて、会のメンバーによる呼びかけがきっかけとなり、より多くの人々に佐原の大祭を楽しんでもらうため土日を含んだ開催期間にしたことで、大祭は今日の隆盛を迎えている。保存会は祭りそのものを時代と共に変化させ、発展させていく活動にも取り組んでいる。

 水郷の街ならではの「あやめ祭り」では、船でお囃子を演奏し人々の耳を楽しませ、まちおこしに取り組む「佐原おかみさん会」、「小江戸会」の催しと連携するなど、保存会の活動は多彩に展開されている。国内外の来賓のために地元の文化の代表としてお囃子が披露されたり、2004年「佐原の山車行事(囃子を含む)」が国の重要無形民俗文化財に指定されるなど、佐原囃子はすでに内外で高い評価を得ている。今後とも、佐原囃子は「街の音」として多くの人々の生活とともにあり続け、地域の活性化の大きな原動力となっていくであろう。

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