サントリー文化財団

menu

サントリー文化財団トップ > サントリー地域文化賞 > 地域別受賞者一覧 > 紀州 ふるさとの歌づくり

サントリー地域文化賞

活動詳細

近畿

和歌山県 和歌山市 1990年受賞

紀州 ふるさとの歌づくり
紀州をテーマに、新しいふるさとの歌を作詞・作曲、普及活動を続ける

代表:梅田 惠以子氏、杉原 治氏、森川 隆之 氏

1999年11月更新

写真
由良の白崎を取材中の
森川・梅田・杉原氏(左から)

 「ありがとうございました。4年2ヵ月の長い連載、今日終ります。本当にありがとうございました。百曲の紀州路を歌い上げました。美しいふるさとを歌い上げました。

 みんなでこのふるさと賛歌を囲み、楽しい話が、いつどこでも始まります。歌の話は、心を和ませる不思議な力があるのでしょう。
 紀州路で心ときめく風景にいくつも出会いました。山から川から海から、たくさんの知恵を学びました。それをみんな歌にしました。ひとしずくの水を、一曲の歌にたとえて、その歌が集まり流れ、百曲という大河になって海に流れ出る―。この感慨をかみしめております。」

 随筆家の梅田惠以子さんが紀州の名所や自然、歴史に取材して作詞し、作曲家の和歌山大学教授森川隆之氏が曲をつけ、杉原治氏が率いる和歌山市民合唱団のレパートリーとして歌い広めて行こうという活動が始まったのは、1982年。これが毎日新聞の和歌山県版に連載される事となり、梅田さんのエッセイと楽譜、写真によって一曲ごとに紹介されて県内各地で大きな反響を呼んだ。冒頭の文章はこの「ふるさと讃歌 紀州路百曲」の連載を了えた梅田さんのしみじみとした感想である。

 「ふるさと讃歌」は、ふるさとの歌として全国的に知られるメロディーをほとんど持たない「紀州」に、新しいふるさとの歌をつくろう、日本中に音楽によって「紀州」を語りかけていこうと始められたものである。県下すべての町や村に材をとった百曲の歌は、今日では、県内約70の合唱団ほとんどのレパートリーとして愛唱されている。また、ダークダックスや著名なソリストによっても歌われ、CDも制作されるなど、和歌山県のポピュラーな合唱曲としてますます定着している。

 1989年7月には百曲の完成を記念して「ふるさと賛歌 和歌山市民コーラスフェスティバル」が開催され、32の合唱団が参加。フィナーレには聴衆2千人と共に大合唱となり、ふるさとの歌として多くの市民に愛されていることを示した。

 自分たちの村を歌った曲を村歌に制定したり、新たに作詞・作曲を依頼する自治体、時報のメロディに採用している役場もあり、さらに、県内の観光事業者や特産物業者によってパンフレットや商品にこの歌詩が印刷され、PRに使われたりしている。「ふるさと賛歌」は、今では紀州のアイデンティティの源としても大いに役立っている。

サントリー文化財団